泉北高速鉄道は30日、新型通勤車両9300系の報道内覧会を実施した。現在運用している3000系の老朽化に伴う代替用車両として導入され、南海電鉄の8300系をベースに、独自の外装・内装デザインを採用。8月上旬の営業運転開始を予定している。

  • 泉北高速鉄道の新型車両9300系が報道関係者らに公開された

新型車両9300系は、9300形(Mc1)・9600形(T1)・9650形(T2)・9400形(Mc2)の4両編成を2編成、計8両を導入。泉北高速線(中百舌鳥~和泉中央間)から南海高野線(難波~中百舌鳥間)に乗り入れての運行を予定している。他形式との併結などは行わない。報道公開は光明池車庫で行われ、2編成のうち1編成(「9301」~「9401」)を外観撮影用、もう1編成(「9302」~「9402」)を車内撮影用として使用。客室内の各設備に加え、運転台も公開された。

9300系の車体はステンレス製(先頭部は鋼製)。南海電鉄の8300系と同一の設計とすることで投資額を抑制しつつ、泉北高速鉄道のラインカラーとして定着しているブルーの帯を配し、先頭部を従来の通勤車両と同じアイボリーで塗装した。先頭車の車体側面にブルーの斜めストライプが入り、従来のカラーパターンからブルーを強調したものに変更。「SEMBOKU」のロゴもあしらった。

  • 光明池車庫で2編成並んだ9300系。外観はラインカラーのブルーを強調したデザインに

旅客定員は先頭車141人(座席40人・立席101人)・中間車153人(座席48人・立席105人)。4両合計の定員は588人となる。車内はオールロングシートで、濃い色調の木目柄を多用した内装とし、落ち着きとやすらぎの空間を演出。一般座席は赤系のモケットを使用し、濃淡2色を交互に配置することで、乗客の座る位置をわかりやすくした。

優先座席は各車両の車端部(和泉中央方)に配置され、一般座席と異なる黄色のモケットを採用。優先座席付近のドア横に車いす・ベビーカースペースも配置している。優先座席と車いす・ベビーカースペースの床面にピクトグラムを用いた表示が追加され、各設備をよりわかりやすく案内。ドア横のスペースを拡大した多目的スペースもあり、ベビーカー利用者やキャリーバッグ等を持つ乗客が利用しやすいように考慮されている。

  • 9300系の車内はオールロングシート

  • 優先座席は他の座席と異なるカラーに

  • 車いす・ベビーカースペース

  • 一部のドア横に多目的スペースも設置

  • ドア上に設置された車内案内表示器

  • 新型車両9300系の運転台

ドア上の車内案内表示器は液晶ディスプレイ式とし、4カ国語による情報案内を実施。客室内および出入口のドア窓は保温・遮熱性を高めるため、複層ガラスを採用。座席、吊り手、手すり、窓など車内全般に抗ウイルス・抗菌加工を行う。運転台は運転士用に列車モニタ表示装置を前方右側に設置し、車両の状態を把握できるようにしたとのこと。最高設計速度は120km/h、加速度は2.5km/h/s、減速度は常用3.7km/h/s・非常用4.0km/h/sとされている。

車内照明や前照灯を含め、すべての灯具をLED化したほか、制御装置の主回路素子にハイブリッドSiCを導入するなど、エネルギー効率の高い機器を導入。既存の通勤車両3000系と比べて消費電力を約50%低減した。走行用モーターに遮音性の高い全閉内扇型主電動機を採用し、車内外の騒音も低減。環境に優しく、安全で快適に使いやすい車両となっている。