南海電気鉄道の空港特急「ラピート」が運行開始して27年。大胆な車両デザインは今日でも色あせることなく、人気を集める車両だ。普段は「ラピートブルー」と呼ばれる濃い青色の塗装だが、過去には特別塗装やラッピングを施した「ラピート」も運行された。

  • 人気キャラクターとコラボした「すみっコぐらしラッピングラピート」。12月末頃まで運行を予定している
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■未来感を漂わせる「ラピート」の魅力

難波~関西空港間を結ぶ空港特急「ラピート」の専用車両50000系は、関西国際空港が開業した1994(平成6)年にデビュー。鉄道車両とは思えない大胆なデザインは、建築家の若林広幸氏によるもの。デザインコンセプトは蒸気機関車と未来をモチーフにした「レトロフューチャー」であり、楕円形の窓は航空機をイメージしている。個性的な車体前面は1960年代のテレビアニメ『鉄人28号』を連想させ、こどもだけでなく中高年にも人気の高い車両となっている。

「ラピートブルー」と呼ばれる濃紺の塗装は、関西国際空港を取り巻く空と海を表現している。現在、南海電鉄で「ラピート」以外に「ラピートブルー」をまとった車両はなく、難波駅でも異彩を放っている。

  • 「ラピートブルー」をまとった「ラピート」車両50000系

50000系は現在も「ラピート」に使用されるが、近年は堺駅や岸和田駅といった中間駅にも停車する「ラピートβ」での運行が多く、空港輸送の他に中間駅からの速達輸送という役割も果たしている。過去には臨時列車として、和歌山港駅や高野線の橋本駅まで運行されたこともある。

■赤・白・黒、変幻自在な「ラピート」

普段は濃紺の「ラピートブルー」をまとって運行される「ラピート」だが、これまでにキャンペーンとタイアップした特別塗装やラッピングが何度か行われてきた。

初の特別塗装は2014年4月のこと。空港線(泉佐野~関西空港間)の開業20年、「ラピート」の運行開始20周年を記念し、映画『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) episode 7 「虹の彼方に」』とタイアップ。映画に登場するフル・フロンタル率いる組織「ネオ・ジオン」をイメージし、「ラピート」1編成が赤色の車体となり、多くの鉄道ファンや沿線利用者らを驚かせた。5号車「スーパーシート」には、登場人物3人(フル・フロンタル、ミネバ・ラオ・ザビ、アンジェロ・ザウパー)の専用席も用意された。この赤色塗装は2014年6月30日まで運行された。

  • 映画『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン) episode 7 「虹の彼方に」』とのタイアップで赤色の車体となった「ラピート」(2014年撮影)

  • Peach Aviationとコラボした「出逢えたらラッキー Peach × ラピート ハッピーライナー」(2015年撮影)

2014年9月には、LCC「Peach」を運営するPeach Aviationとコラボ。「Peach」機のデザインを模した「出逢えたらラッキー Peach × ラピート ハッピーライナー」を2015年8月まで運行した。「ラピート」と航空会社とのコラボは、関西国際空港の開港20周年の盛り上げにひと役買った。車内にハートマークのステッカーを貼るなど、「小さな幸せ」を見つける工夫も。「ハッピーライナー」初列車には「Peach」の客室乗務員が乗り込み、ノベルティの配布を行った。

2015年には、映画『スター・ウォーズ / フォースの覚醒』とタイアップした「ラピート」が登場。黒色を基調とした「スターフィールド」で覆った外装となり、シックな装いになった。作品に登場するキャラクターも各車両に配置し、6号車のサービスカウンターにR2-D2のフィギュアも置かれた。

このタイアップでは、作品に登場するキャラクターをデザインした特急券引換券も発売。テレビCMの放映も行われ、「ラピート」のコラボ企画の発展が感じられた。

  • 映画『スター・ウォーズ / フォースの覚醒』とタイアップした「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」号(2015年11月の報道公開にて撮影)

  • 「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」号の車内(2015年11月の報道公開にて撮影)

  • 車内にR2-D2のフィギュアも置かれた(2015年11月の報道公開にて撮影)

「ラピート」はラッピングを通じた広報活動にも力を入れている。2018年、南海電鉄は台湾・台北にある桃園メトロ(桃園捷運)など4社で、「ラピート」と台北の桃園国際空港のアクセス鉄道が利用できる鉄道企画切符を販売した。鉄道企画切符の販売を機に、「ラピート」に台湾の魅力をアピールするラッピングが施された。ちなみに、台湾の交通部台灣鐵路管理局(台鉄)は2019年、電気機関車1両を期間限定で「ラピートブルー」をまとった姿にしている。

2019年には、前年に市政施行70周年を迎えた泉佐野市のシティプロモーションのため、「泉佐野市70周年×キン肉マン40周年 友情タッグラピート」を運行した。これは泉佐野市の公式キャラクター誕生に携った漫画家・ゆでたまご(嶋田隆司氏・中井義則氏)とのコラボで、「ラピート」の車体に「イヌナキン」と「キン肉マン」のラッピングを行った。

■コロナ禍でも積極的な姿勢を見せる「ラピート」

ここまで見てきた通り、2014年以降の特別塗装やラッピングにより、「ラピート」の人気が保たれるとともに、増加していた訪日外国人観光客からも注目される列車となった。しかし2020年から始まったコロナ禍の影響で、「ラピート」の利用者が大幅に減少。現在も日中時間帯の運行を取りやめており、苦境は続いている。そんな中でも、キャンペーンを通じたラッピングが行われた。

  • 難波駅でお披露目された「すみっコぐらしラッピングラピート」(2021年8月のお披露目会にて、筆者撮影)

  • 車体側面に「すみっコぐらし」のキャラクターたちがデザインされている(2021年8月のお披露目会にて、筆者撮影)

南海電鉄は8月7日から、サンエックスの人気キャラクター「すみっコぐらし」とコラボした「すみっコぐらしラッピングラピート」の運行をスタート。車体側面に「大きなめでたいお魚をさがしに、海へいくすみっコたち」のストーリーを表現し、おもに女性やこどもたちの人気を集めている。「すみっコぐらしラッピングラピート」を模したコラボグッズも販売され、「ラピート」の人気はとどまることを知らない。

「ラピート」の27年間の歴史を振り返ると、デビューから20年間はオリジナルの姿で魅了してきた。いくら魅力的な車両でも、20年が経過すると飽きが来るものだが、「ラピート」は特別塗装やラッピングを通じ、新たな魅力を提供し続けている。車両デザインが素晴らしく、特別塗装やラッピングが「映える」という理由もあるのだろう。今後も新たなコラボ企画を楽しみにしたい。