子どもの「カンチョー」「ズボンおろし」笑って見てる危険性 「今と昔はちがう」「子どもはOKと受け取る」大人の対応で将来に影響も

太田 真弓 太田 真弓

「子どもどうしのカンチョーやズボンおろしに気づいた大人が、『たとえ友達でも、遊びのつもりでも、してはいけないこと』ときちんと対応していくか、それとも、『子どものちょっとした悪ふざけ、昔からよくあること』と放置するか、で、この先が大きく変わると思う。本人たちも、周りの子どもたちも」

「プライベートゾーンのルールは教えたから大丈夫、もうやらない、とは限らない。してしまう子はしてしまう。でもその時、周りの大人が見過ごさないことで、全体が変わっていく。やめて!と言いやすくなったり、周囲の子が注意したり、大人に伝えたり。この繰り返しは、性暴力を減らすことに繋がるはず」

性教育講師・思春期保健相談士として講演会や講座を行っているにじいろさん(@beingiscare)がX(旧Twitter)に投稿。プライベートゾーン教育についても触れながら、子どもたちを取り巻く大人への苦言を呈しています。 

「だいじ、めっちゃ大事 アラフォーから上、このあたり雑に育てられてるからか、子どもたちに対しても雑に対応しがち あぶない」
「我が家は完全に前者。夫は後者っぽかったけど、割と真面目に話をして、我が家では前者のスタンスで子育てしていきましょうとなってる」
「職場の歓送迎会で、40代半ばで10代の息子が2人いる既婚男性上司に「カンチョー!」と繰り返された時、酔っぱらってないのに男の課長が、「酒の上の事」扱いして無罪放免したので、未熟な本人だけでなく未熟なまま権力を持ってる男社会そのものを変えること大事」
「スカートめくりもだよ!カンチョーはマジで傷害になったケースも聞いたことあるから、ダメ絶対!」
「これ、ホント大事。おとなが何も言わない=OKだと子どもたちは受け取っている。『言っても無駄』なんてことはなく、その種まきが意味を持つときが来るんだよね」
「プロ野球選手とかもホームランで帰ってくる選手を迎える時とか何か大人数でわちゃわちゃしてるドサクサに紛れてやってる事もあるよね」
と、共感の声や時代に即して大人が対応を変えていくことの必要性を訴えるコメントが寄せられています。

にじいろさんは公立高校や小学校の養護教諭を経て、2016年よりフリーランスで活動。児童生徒を対象にした性に関する講演・授業、保護者や教員向け研修などを行っています。

現場での経験談などお話を伺いました。 

カンチョーやズボンおろしはまだ多くの学校で聞きます

――なぜ今回の投稿を?

こういったケースでは、大人の対応・反応が大きく分かれることがあります。例えば、学校で先生が丁寧に指導しても、保護者から「こんなことくらいで」と返ってくる、という話は何回も聞きました。大人全体が変わっていかなければ、効果が出にくいと感じているからです。

――実際の学校生活の中で子ども同士のカンチョーやズボンおろしなどの頻度は?

小学校で勤務していた時、カンチョーなどはよくありました。高校でも、男子どうしでふざけて性器を触る、女子どうしでふざけて胸を触る、ということは時々見かけました。が、養護教諭の頃の自分は、「私が子どもの頃もあったなぁ」くらいで、今ほど問題視していなかったのも事実です。スカートめくりは最近は少なくなっている印象ですが、カンチョーやズボンおろしは今でも多くの学校で聞きます。

――もしそういった場面に遭遇した場合、加害している子にはどのように話を?

「その人のからだはその人のもので、特にプライベートゾーンは特別大事だから、友だちでもふざげて触ったりするのはルール違反だよ」などと声をかけています。した側の子だけを叱責するのではなく、「大切なことだから、みんなで勉強していこう、ルールとして守っていこう」というスタンスで関わっています。

――被害にあっていた子には?

「あなたは悪くない(された側は悪くない)」「嫌と言ってもいいんだよ(でも言えなくても悪くないよ)」「また困ったことがあったら教えてね」などと声をかけています。

プライベートゾーン以外の部位も大切

――日々、授業や講演を行ってらっしゃるかと思いますが、どういった内容を?

文部科学省の『生命の安全教育』では、プライベートゾーンについて「水着で隠れる部分は自分だけの大切なところ」とあります。「自分のプライベートゾーンは見せない、触らせない。他人のプライベートゾーンは見ない、触らない」というもので、とても大切なルールですが、私はプライベートゾーンの話をする際、この他にも3つのことを特に大事にしています。

――ぜひ教えていただきたいです。

1. プライベートゾーン以外の部分も、あなたのもので全部大切だということ
2. もし見られたり触られたりしていても、されたあなたは悪くないということ
3. 性そのものを肯定的に捉えるために、自分の身体は自分のものだからどこを見ても触ってもいいということ。そして、誰も見ていないところで触るのがマナーであること

です。そして相手が誰であれ、プライベートゾーンに限らず自分のどの部位でも「自分が嫌だと感じたらその気持ちを大切にしていい」ということを伝えていきたいです。また、実際に加害している子が同じ空間にいることも想定しながら、「私も知らなかったし、みんなも知らなかったと思うから、これから一緒に勉強していこうね」という雰囲気を作ることも大切にしています。

大人、社会全体で性暴力を防ぐために

――カンチョーやズボンおろしなどを「昔からよくあること」と流してしまう大人世代はまだ一定数いるかと。そういった大人に伝える方法は?

大人(特に子育て中の保護者や子どもと関わる仕事の人)が性教育を学ぶ意義は大きいと思います。その際、昔の感覚の人にはなかなか言いづらいこともあると思います。「間違っている」とか「そんなことも知らないの?」というスタンスではなく、「私も昔はそれくらい、って思ってたんだけど、性暴力を防ぐためにも大事なことなんだって」「今はいい絵本もいろいろあるらしいよ」といった感じで伝えることができればと思います。

今、メディアでも性暴力の問題が大きくとりあげられていますし、以前より話がしやすくなったと思います。「大人、社会全体で性暴力を防ごう、子どもたちを守ろう、そのために小さなことから見直してみよう」という感じになれば嬉しいです。

◇     ◇

相手が恋人や家族、顔見知りや友達だったとしても、望まない性的な行為はすべて性暴力となります。

性暴力による被害を少しでも減らすために、またそういった衝動をコントロールしたり、傍観者にならないためにも、まずは子どもたち一人ひとりに自分や相手の身体を大切にすること、身体への接触を伴うおふざけがダメであることを理解してもらうことが大切であるとあらためて実感しました。そして、何よりも我々大人が「昔はよくあったこと」などと見過ごさず、意識を変えていかねばなりません。

にじいろさんは、10代の子どもたちのリアルな性の悩みを多数紹介している『10代の妊娠:友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル』を執筆し発売中。10代の子どもたちに知ってほしい性の知識をやさしく伝えています。大人も読んでおきたい一冊です。

【にじいろさん関連情報】
■X(旧Twitter) https://twitter.com/beingiscare
■著書『10代の妊娠:友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル』(amazon

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