バイエルンの福井太智を輩出!世界が注目するサガン鳥栖アカデミーの育成方法を紹介

公開:
バイエルンの福井太智を輩出!世界が注目するサガン鳥栖アカデミーの育成方法を紹介

6月24日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:25~)では、サガン鳥栖アカデミーの育成メソッドを特集した。

2017年に高円宮杯JFA U-15サッカー選手権と、日本クラブユースサッカー選手権で優勝を果たしたサガン鳥栖のU-15チーム。この2冠達成を皮切りに躍進を続け、昨年の2022年はU-18チームが高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグで優勝し、日本の頂点に立った。

さらに、2017年から2023年までの6年間で、実に15人もの選手がトップチームに昇格。サガン鳥栖のサイドバック・中野伸哉は中学生の頃からアカデミーで学び、クラブ史上最年少の16歳でJデビューを飾った。同じくアカデミー出身の福井太智は、今年の1月にドイツの名門として知られるFCバイエルン・ミュンヘンへ完全移籍。Bチームでレギュラーとして活躍している。

ユース世代の育成に大きな注目が集まるサガン鳥栖だが、地方クラブゆえの決して恵まれた環境とは言えない中、なぜ多くの才能が育っているのか。そこには、サガン鳥栖ならではの育成メソッドがあった。

その一つが、クラブ哲学の徹底。サガン鳥栖では小学生年代から、クラブの代名詞である「ハードワーク」を徹底的に叩き込んでいた。アカデミーの練習はトップチームさながらで、泥臭くぶつかり合うのも当たり前。その激しさに解説の北澤豪も「練習の強度すごくないですか?」と驚きながら、「インテンシティ(プレー強度)の高さは全世界で求められていますから」と納得していた。

ハードワークを土台にしたクラブ哲学の浸透のために、サガン鳥栖では指導の方向性やプレーの原則を“言語化”した「サガン鳥栖モデル」を導入。スタッフの主観や裁量で指導するのではなく、ボール奪った際の動きなどを事前に細かく決め、明確に言葉にして伝えることで、よりブレない指導を可能にした。

ただし、言語化することでプレーの幅を狭めてしまわないよう、指導者は細部にこだわりつつも、余白を持った声かけを意識。鳥栖の指導を視察に来た別のクラブの指導者は「やっている練習の内容はそんなに大きく変わらないと思うんですけど、スタッフの皆さんのそれぞれポイントの伝え方というか、コーチングがやっぱり的確ですよ」と評価。「選手たちはすごいやりやすいんじゃないかな」と感心していた。

一方で、サガン鳥栖アカデミーでは、サッカーだけに偏らない人間力の形成にも注力。小中学生の選手には、学校でのテストの結果と通知表を提出してもらっているという。通知表は、学校の成績はもとより生活欄もチェックするなど、1人の人間としての立ち振る舞いを磨いていた。

また、U-18のユース選手に対しては、地元の高校と連携することで、サッカーと人間力の両方を向上させている。サガン鳥栖が2018年から提携している佐賀龍谷学園高校には、すべてのユース選手が在学。遠征の際の補習授業や学校生活の報告など、クラブと学園の間には、密接な協力関係が築かれていた。

佐賀龍谷学園といえば、全国大会に出場するほどの強豪サッカー部を持つ高校だが、サガン鳥栖のユース選手とはお互いに切磋琢磨する関係だそうで、サッカー部員も「全国レベルのチームがいて刺激になっていますし、自分たちもそこに追いつけるように頑張っている」と語った。

バイエルンで活躍する福田は「あの日常は本当に楽しかった。他の部活の友達にも会えたので、学校はとてもリラックスできた場所だったかなって思います」と述懐。番組にリモートで出演したU-18の田中智宗監督も「高校の先生とコミュニケーションを取る中で、選手たちの学校での生活などが情報共有できて、本当に助かっています」と、提携することのメリットを明かした。

技術・戦術を磨くクラブユース的アプローチと、人間力を鍛える高校サッカー的アプローチで選手を育てているサガン鳥栖だが、そこには自治体のサポートもあった。佐賀県では昨年4月にアカデミーの選手も暮らす中高生のアスリート専用の寮をオープンし、佐賀市ではユース選手が練習するための天然芝と人工芝のグラウンドを提供。これら自治体の手厚い支援には、MCの勝村政信も「サガン鳥栖の強さがわかってきたような気がしますね。市や県がアンダー世代をケアするってすごくないですか?」と驚いていた。

佐賀県ではふるさと納税で寄付金を集め、U-15チーム専用のグラウンドを鳥栖市内に設立する計画も。佐賀県の担当者は「そこで育った選手たちが将来、W杯などで活躍したときに、やっぱり佐賀の選手がすごいよなって思ってくれることが次の世代にとっても大事だと思う」と話した。

実際に、こうした取り組みの結果、サガン鳥栖アカデミーは地元の子どもが憧れる存在となっていた。15歳以下の街クラブ・グラッソFCの子どもたちは「サガン鳥栖めっちゃ強い! 高校生年代(U-18)は、もう無双です」とニヤリ。リモートで出演したサガン鳥栖のアカデミーダイレクターを務める佐藤真一は「小さい県ですけど、ここにしっかりと根付くことができているというのは、すごく実感しています。第2、第3の福井太智をどんどん輩出していきたい」と目標を明かし、田中監督は「現状に満足せず、頑張っていきたいと思っています」と意気込んだ。

画像ギャラリー