JR東海は20日、特急「しなの」で現在使用している振子式車両383系の取替えを見据え、新型特急車両「385系」量産先行車の新製を決定したと発表した。383系の速達性を維持しつつ、次世代振子制御技術を導入。両先頭車で前面展望も確保するという。

  • 特急「しなの」で活躍する振子式車両383系。JR東海は後継となる新型特急車両385系の量産先行車を新製すると発表した

383系は1994(平成6)年、381系の置換え用として登場し、翌年から営業運転を開始。現在、中央本線・篠ノ井線経由の特急「しなの」はすべて383系を使用し、名古屋~長野間で1日13往復運転されている。振子制御技術や自己操舵機構を採用し、カーブ通過時の乗り心地が向上し、スピードアップを実現。これにより、383系は国内最速(基本の速度+最大35km/h)でカーブを走行可能だという。先頭車は非貫通タイプ・貫通タイプの2種類あり、2~6両の編成を組み合わせて多彩な運用ができることも特徴とされる。

後継となる新型特急車両385系は、乗り心地のさらなる向上をめざし、次世代振子制御技術を開発・導入。383系に搭載している現行の振子制御技術は、雨天による滑走等が発生した場合にカーブ開始位置での振子傾斜ができず、乗り心地に影響していたが、次世代振子制御技術は車上のジャイロセンサによる正確な検知が可能で、滑走等が発生した場合でもカーブ開始位置で振子傾斜ができるようになる。振子式車両で用いられる乗り心地評価指標について、383系で走行試験を行い、測定した結果、次世代振子制御は現行振子制御と比べて乗り心地が約15%改善されたとしている。

385系(量産先行車)のエクステリアデザインイメージも公開され、383系の非貫通タイプ先頭車を受け継ぐ流線形のデザインが特徴に。「アルプスを翔ける爽風」をテーマに、アルプスの山並みを颯爽と駆け抜ける様を表現したデザインとなっており、四季を彩る自然の景観に恵まれた中央本線の旅を演出すべく、両先頭車で前面展望を確保するという。特急「ひだ」「南紀」はキハ85系からHC85系への置換えにともない、前面展望ができなくなったが、特急「しなの」は車両の置換え後も前面展望を楽しめることになる。

新型特急車両385系の量産先行車は1編成(8両編成)を新製し、2026年度に完成予定。その後、約1年間にわたって走行試験を実施し、次世代振子制御技術等の確認を行う。量産車は2029年度頃を目標に投入する方向で検討を進める。