仮面ライダーシリーズ最新作『仮面ライダーガッチャード』のオンエアを記念して、ファンが待ちに待ったスペシャルイシューが今年も発売! 10月16日に発売された『週刊プレイボーイ』44号では「歴代仮面ライダーヒロインが大集合!!」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちがこぞって登場。水着グラビアの最新撮り下ろしやインタビューなど、それぞれの仮面ライダー愛がほとばしる内容となった。

その特集より歴代ヒロイン5名のインタビューを、週プレNEWSにて再掲載。今回は『仮面ライダーキバ』(2008~2009年)でヒロイン・麻生ゆりを演じた高橋ユウさんが登場。ゆりは母の仇を討つため、ファンガイア(怪人)に果敢に立ち向かう20歳。物語中盤では自ら仮面ライダーイクサにも変身し戦う。主人公・紅渡(くれない・わたる)の父で、もうひとりの主人公・紅音やの恋人でもある。今回の取材では、作品から得たものや当時の心境などを語ってくれた。

――『仮面ライダーキバ』は高橋さんの女優デビュー作。出演するきっかけはオーディションですか?

高橋 はい。モデルをやっていたんですけど、お芝居を始めたいと思って、その第一歩として受けました。オーディション会場はものすごい人数で、見たことのある女優さんも見かけました。すごく緊張しましたけど、がむしゃらに臨んだのがよかったんだと思います。受かった時はただただ嬉しかったですね。

高橋ユウさんが演じた麻生ゆり ©️石森プロ・東映 高橋ユウさんが演じた麻生ゆり ©️石森プロ・東映

――高橋さんが演じた麻生ゆりは母の仇を討つため奔走する、勇敢なファンガイア(怪人)ハンター。自身と似ていましたか?

高橋 愚直なところや、負けん気が強いところは似ていましたね。女だからってナメられたくない、みたいな。あと母の仇を討つ設定は後で聞いたんですけど、私も家族が大好きで、家族のためなら何でもするという性格なので、共感して演じられました。

――第一話は、高橋さんの激しい戦闘シーンで幕を開けます。相当、気合いを入れたのでは。

高橋 台本を見た時、震えました。新人なのにいいのかなって。前日まで台本を読み込み、何度も練習したんですけど、本番ではNGばかり。10テイク以上はやったかな。精神的にボロボロになりましたけど、逆に裸になって、心から演じられました。あれがなければそれ以降、カッコだけのお芝居に終始していた気がします。最初にガツンとやっていただいて感謝していますね。

あ、そういえば第2話で噴水の戦闘シーンがあるんですけど、あれは当初、陸地の予定だったんです。田﨑(竜太)監督が「ゆりを追い込もう」と現場で変更したようみたいで。でも何しろ真冬の秩父ロケ、正直、あまりの寒さに泣きそうでした(笑)。

――ムチや剣を使うシーンも多いですよね。アクションの練習は?

高橋 めちゃくちゃしました。ムチは短い仕様のものを借り、ヒマさえあれば家で振り回していました。剣もかなり練習しましたね。素手のアクションは『チャーリーズ・エンジェル』を参考にしてやりました。セクシーでカッコいい女性を目指すぞって(笑)。

――お話を聞いているだけで、何事も一所懸命なゆりと高橋さんがオーバーラップします。『キバ』は1986年と2008年という「過去」と「現代」のそれぞれの物語が並行して描かれる異色作。ゆりは「過去」編のヒロインで、柳沢ななさん演じる「現代」編のヒロイン・麻生恵の母でもあります。

高橋 最初、そういう仕立てになっていると聞いた時は、面白いと思いましたね。時代を股にかけた群像劇なので、ご覧になる方々はいろんなキャラクターに感情移入できて楽しめるだろうし。自分が母親ということを意識しすぎると、一人の女性を演じるのが難しくなるので、なるべく考えないように努めました。1986年当時の髪型やファッションをしたんですけど、それは新鮮で楽しかったですね。

――一方で『キバ』は、人間とファンガイアによる禁断の恋愛が描かれるなど、数ある仮面ライダー作品の中でもとりわけ恋愛要素の多い作品。ゆりにも恋愛のシーンが多々ありましたが、そのあたりはスムースに演じられましたか?

高橋 監督からは「好きな人を思い浮かべてやれ」とよく言われましたけど、恋愛関連は恥ずかしくて仕方なかったですね。特に第13話(『未完成・ダディ・ファイト』)なんて、人間態の怪人男性と誰もいないプールで見つめ合うシーンがあるんですけど、それはもう大変で(照笑)! お互い水着姿のままですし、撮影中ずっとドキドキしていました。

――あそこは普通のドラマだったら、キスシーンに至りそうなほど甘い雰囲気がありましたよね。

高橋 そうなんです。「えっ!? このままキスしちゃうの?」なんて私も思いましたもん(笑)。「ゆりにはちょっと早すぎたかな」なんて監督の声が聞こえてきて「あ、見られてるんだ!」って、さらにまた恥ずかしくなったり。個人的にはそれまで恋愛経験は乏しかったんで、本当に難しかったですよ。それでも私なりに一所懸命にやりましたけどね。

――ゆりと主人公・音也(武田航平)は一時、恋人関係になりながらも、いつしか音也は謎の女性・真夜(まや)へ心変わりしていく、なんて切ないシーンもありました。

高橋 あの辺りは私自身も本当に辛かったです。実際、音也と私はカメラが回っていないところでも第一話からずっと一緒にいたんです。なのに途中から、真夜役の加賀美早紀さんと仲良く話しているのがやたら目について。「あれ? 音也と私は最初のリハから一緒にいたよね。ずっとラブラブだったよね。なのになぜ?」なんて。私は女優の経験がなかったので、自分とゆりを重ね合わせながら必死にやっていたんです。なので苦しくなってしまって(苦笑)。

――「おいおい! 音也、なにやってるんだよ!」って思いながら画面に食らいついていた視聴者も多かったと思いますよ。

高橋 あははは。優しい(笑)。『キバ』は仮面ライダーシリーズ作品ながら、人間ドラマでもあるから、自分は気持ちを乗せやすかったです。それにだからこそ、特撮ファンに限らずより多くの方が楽しめる作品になったんじゃないかと思いますね。

――特に印象に残っているエピソードは?

高橋 やはり第31話(『喝采・母に捧げる変身』)ですね。なんと変身シーンがあったんです! 柳沢ななちゃんと私は、レギュラーシリーズのヒロインでは最初の女性ライダー。台本をもらう前から「今回のふたり、ヤバいらしいよ」って周りに言われて、「えっ? もしかして!」と思ったら、本当に「変身」と書いてある。「きたー!」って心が躍りました。撮影ではもちろん普段以上に気合を入れて演じましたが、そればかりか他の共演者たちが「よかったね」って、祝福してくれているような温かい雰囲気があって。敵を倒した瞬間はあまりの感動で体が震えました。今思い出しても涙が出そうになりますよ。自分の中で宝物のようなエピソードですね。

――高橋さんにとって、『仮面ライダーキバ』は自分の中でどんな位置付けですか?

高橋 ありきたりな言葉だと「原点」ですけど、いやー、それ以上で「自分のすべて」かな。初心に戻りたいときは『キバ』のことを思い浮かべますし、逆に『キバ』の話が出ると、初心に戻ります。自分をさらけ出し、すべてをぶつけて臨む作品なんてそうそう出会わないですよね。自分の中の頂点としていつまでも輝く作品です。

――最近は歴代女性キャストが出演する『仮面ライダー』のスピンオフ作品が東映の特撮サイトで配信されていますけど、レギュラー作品・初代女性ライダーの麻生ゆりはまだ登場していないですね。

高橋 そうなんです。機会があれば是非とも出演したいです。『キバ』で、ゆりは恵の母親という設定でしたけど、いまは二人の子供を持つリアルな母親になりました。きっと以前とは違った新しいゆりを演じられると思います。

●高橋ユウ(たかはし・ゆう)
1991年1月19日生まれ 滋賀県出身 
○2006年『Cawaii!』の専属モデルとしてデビュー。舞台『曽根崎心中』で平成25年度文化庁芸術祭新人賞を大衆芸能部門で受賞。女優、モデルとして幅広く活動中