新型「5シリーズ」は路線変更? BMWがラグジュアリー分野で攻勢!

BMWが新型「5シリーズ」を日本で発売した。1972年に誕生した5シリーズは新型で8世代目。約7年ぶりのフルモデルチェンジとなった今回は、新たに電気自動車(EV)バージョンの「i5」が登場した。このクルマ、BMWがラグジュアリー路線に移行していくうえで重要なモデルになるという。

BMWの新型「5シリーズ」に追加となったEVバージョン「i5」

BMWはワンランク上のブランドに?

発表会に登壇したビー・エム・ダブリュー代表取締役社長の長谷川正敏さんによると、5シリーズの世界的な立ち位置は「エグゼクティブ・セダンの代名詞」であり、日本でも約50年にわたって販売してきたモデルであるという。今回のフルモデルチェンジで5シリーズは「完全に別次元」と言えるほどの進化を遂げたとのこと。ラグジュアリーなクルマとしての価値観として、従来からの「走る・曲がる・止まる」という基本的な価値に加え「空間要素」を磨き上げたそうだ。

新型「5シリーズ」には48Vマイルドハイブリッド車(MHEV)とEV(i5)の2タイプがあり、MHEVには2.0L直列4気筒ガソリンエンジン搭載モデル(最高出力190PS、最大トルク310Nm、798万円～868万円)と同ディーゼルエンジン搭載モデル(197PS、400Nm、918万円)がある。ボディサイズは全モデル共通で全長5,060mm、全幅1,900mm、全高1,515mm

新型「i5」には1モーター/後輪駆動(340PS、430Nm)と2モーター/4輪駆動(601PS、820Nm)の2タイプがある。グレードは1モーターの「eDrive40 Excellence」「eDrive40 M Sport」(どちらも998万円)と2モーターの「M60 xDrive」(1,548万円)の計3種類。バッテリー容量は全モデル共通の81.2kWh、フル充電での航続距離は1モーターが477～582km、2モーターが455～516km。本稿の数値は全てヨーロッパ仕様値だ

新型「5シリーズ」では「運転中、安らぎを感じられるような空間」づくりを目指したと長谷川社長。レザーに見えるが素材は植物由来のヴィーガン仕様だ

後席でもタッチパネルでエアコンが操作できる(写真左)。サンシェード(写真右)が前巻きなのは珍しいそうで、例えば前席だけシェードを出してドライバーがまぶしくないようにする、といったような使い方ができるという

長谷川社長によると、BMWの日本での販売台数は2023年1～6月で約1.67万台。新型モデルを中心に積極的なプロダクトの導入を図った効果もあり、前年同期比で19％の増加とビジネスは好調に推移している。中でも、フルモデルチェンジを実施してラグジュアリーセグメントに投入した新型「7シリーズ」については「なかなかの快進撃」(長谷川社長)を見せており、前期比で約2倍の売れ行きを示しているそうだ。

そんな状況の中、BMWは「いわゆるプレミアムセグメントから、少しずつラグジュアリーの方へ移行」しようとしていると長谷川社長。新型5シリーズはBMWをワンランク上のブランドに導いていくうえで非常に重要なモデルになるそうだ。

新型「5シリーズ」にはBMWの象徴「キドニーグリル」を光で強調する「BMWアイコニック・グロー」という機能が付いている

そのあたりについて、もう少し詳しく長谷川社長に聞いてみると、BMWは「世界ではプレミアムセグメントのトップを走っているが、さらにもう一段上のラグジュアリーセグメントに入っていこうと」しているそうだ。「新型7シリーズも、ロールス・ロイスのプラットフォームを使うなど先代とば全くの別物になっています。カスタマーセントリック、顧客中心に物事を進めていくうえでは、ラグジュアリーのお客様が対象とならざるを得ません」とのことだ。

7シリーズを筆頭に、全てのモデルでワンランク上を目指しているのが今のBMWということらしい。フルモデルチェンジした5シリーズについては、「前世代の6～7シリーズに乗っているようなお客様にご購入いただけるのでは」というのが長谷川社長の見立て。とはいえ、新型5シリーズの価格については「(原材料の高騰や円安はあるものの)相当、がんばった」(長谷川社長)そうだ。

ただ、ラグジュアリー路線への移行が加速していってしまうとBMWのハードルが高くなるというか、間口が狭まってしまいそうで心配なのだが、そのあたりについては「1シリーズ、2シリーズもこれまで通りラインアップしているので(間口の広さは)担保できる」というのが長谷川さんの回答だった。「できれば、ラグジュアリーの要素を下のモデル(1～2シリーズ)にも持っていきたい」とのことなので、今後は比較的安いBMWにどんな高級感が加味されていくのかにも注目しておきたい。