子育て情報メディア「コズレマガジン」を運営するコズレは8月4日、「育児用品の値上がりに伴う、商品選択の際に起こりうるママの意識・購買行動の変化」に関する調査について結果をまとめ、その一部を公表した。

同調査は2022年5月19日〜6月2日、第一子妊娠中および0歳〜1歳の子どもをもつ女性を対象に、インターネット・リサーチにて実施。有効回答者数は929名(第一子妊娠中:428名、0歳:385名、1歳:116名)。調査主体は、コズレ子育てマーケティング研究所だった。

  • 約76%のママが、現在と1年前の同時期をくらべて「物価が上がった」と回答

「もし、育児用品までも値上がりをしたら……」。現在、原材料価格や物流費の高騰を受け、食料品や日用品など様々な物やサービスの価格が値上がりをしている。

自分のための物やサービスへの支出を節約しながら、子どもや家族のために、家計をやりくりしながら生活をしているママは多くいることだろう。

そこで同調査では、妊娠中・子育て中ママに、「もし育児用品が値上がりをしたら、値上がりを許容できるか否か」「値上がりが実行された場合、起こりうる商品選択の際にどのような変化があるか」などについて聞いた。

まず、「現在と1年前の同時期をくらべて、現在の物価(あなたが購入する物やサービスの価格)に対してどのように感じていますか」という質問を行った。「かなり上がった」と「少し上がった」と感じているママは、全体の76.32%だった(27.02%+49.30%=76.32%)。

「かなり上がった」と回答した割合は27.02%という結果にとどまったが、今後、多くの物やサービスの値上がりが予想されるため、「かなり上がった」と実感するママの割合も上昇することだろう。

今後、多くの物やサービスの値上がりが予想される中、子どものために必要な育児用品が値上がりした場合、ママはどこまで許容できるのだろうか。同レポートでは、継続購入商材である「紙おむつ」と、単発購入商材である「AB型兼用ベビーカー」とで比較をしている。

「もし、育児用品が値上げされるとして、どこまでなら許容できますか」という質問に、「40枚入りの紙おむつが1,000円の場合」という例を提示し、いくらまでなら許容できるかを聞いた。

  • 紙おむつの値上がりについて、約6割のママが「許容できる」と回答

その結果、「許容できない」と回答したのは41.04%、「1割増までなら許容できる」割合は58.96%、「2割増までなら許容できる」割合は29.87%だった。

許容できる値上げ金額に幅はあるものの、紙おむつの値上げに対して「許容できる」割合が、「許容できない」割合を17.92pt上回る結果となったのは非常に興味深い(58.96%-41.04%=17.92pt)。

現在、紙おむつの出荷価格改定を実施しているメーカーの出荷価格改定率をみてみると、「現行より+約10%」*1となっており、ママの許容範囲としては妥当なのかもしれない。

では、AB型兼用ベビーカーについてはどうだろうか。紙おむつについての質問同様、「もし、育児用品が値上げされるとして、どこまでなら許容できますか」という質問に、「1台50,000円のAB型兼用ベビーカーの場合」という例を提示し、いくらまでなら許容できるかを聞いた。

  • AB型兼用ベビーカーの値上げに対して、約50%のママが「許容できる」と回答

その結果、「許容できない」と回答したのは49.68%、1割増しの「55,000円まで許容できる」と回答したのは15.87%であった。

<値上げに対する許容範囲の比較>
●紙おむつ
・40枚入り1,000円の紙おむつに対しては、1割までの値上げに対して58.96%が、2割の値上げに対して29.87%が「許容できる」と回答
・値上げそのものを「許容しない」と回答したのは41.04%

●AB型兼用ベビーカー
・1台50,000円のAB型兼用ベビーカーに対しては、1割までの値上げに対して15.87%が「許容できる」と回答
・値上げそのものを「許容しない」と回答したのは49.68%

これらのことから、単価は低いが継続的に購入する紙おむつは、単価が高くても単発でしか購入しないAB型兼用ベビーカーにくらべ、値上げ率が高くても許容される可能性が高いということがわかった。ママは、一回に支払う金額が高い物やサービスへの値上がりに対しては、やや拒否感を抱くのかもしれない。

では、育児用品の値上げに「許容できない」と回答したママは、どのような商品選択を行うのだろうか。前項と同じく、紙おむつとAB型兼用ベビーカーとで比較した。

前問で「40枚入りの紙おむつが1,000円の場合、どこまでなら許容できますか」という質問に対して、「許容できない」と答えたママ(316名)に対して、「紙おむつの値上げについて許容できない場合、どのような商品選択をしますか」という質問を行った。

  • 紙おむつの値上げを「許容できない」ママのうち、59.81%が「別のブランド/メーカーの商品に切り替える」と回答

その結果、

・「別のブランド/メーカーの商品に切り替える」:59.81%
・「少しでも低価格で購入できる店頭、ネットショップを探す」:46.84%
・「同じブランド/メーカーの商品の特売日をチェックする」:45.89%

となった。

紙おむつ代を節約したいと思うママや、子どもが使用する紙おむつのブランド/メーカーにあまりこだわりがないママなどは、値上げされていないブランド/メーカーの商品を選択する可能性が高いと言える。いずれにせよ、約6割のママが別ブランド/メーカー商品へ乗り換えると回答したことは、記憶に留めておきたい。

一方、子どもが使用する紙おむつのブランド/メーカーにこだわりはあるものの、紙おむつ代を節約したいと思うママは、少しでも低価格で購入できる店頭、ネットショップを探したり、特定の商品の特売日をチェックしたりするようだ。

次に、前問で「1台50,000円のAB型兼用ベビーカーの場合、どこまでなら許容できますか」という質問に対して、「許容できない」と答えたママ(313名)に対して、「AB型兼用ベビーカーの値上げについて許容できない場合、どのような商品選択をしますか」という質問を行った。

  • AB型兼用ベビーカーの値上げを「許容できない」ママのうち、37.06%が「少しでも低価格で購入できる店頭、ネットショップを探す」と回答

その結果、

・「少しでも低価格で購入できる店頭、ネットショップを探す」:37.06%
・「AB型兼用ベビーカー自体の購入を見合わせる」:36.42%
・「低価格のベビーカーブランド/メーカーの中から候補を決める」:28.75%

となった。

注目したい点は、「AB型兼用ベビーカー自体の購入を見合わせる」と回答した割合が2番目に高いこと。AB型兼用ベビーカーは、新生児期から3歳頃までと、長期間使えるのが特徴だ。妊娠・子育てメディアや育児雑誌等で、出産準備品の中でも必須な育児用品として取り上げられることが多いが、その購入自体を見合わせるという結果が出たことは非常に興味深い。

考えられる理由としては、AB型兼用のベビーカー自体に「高価格なイメージがあるから」というのが挙げられるだろう。値上げを許容できないママは、高価格なイメージのあるベビーカーが、さらに値上がりするのであれば、購入しないで済む方法を考えようと思うのかもしれない。

例えば、子どもを連れての移動は、新生児期から使用できる抱っこ紐のみで過ごす、長距離の移動には公共交通機関を使用しない、などといったことである。

<値上げを許容できない場合に想定される商品選択の比較>

● 紙おむつ
・「別のブランド/メーカーの商品に切り替える」が約6割

● AB型兼用ベビーカー
・「少しでも低価格で購入できる店頭、ネットショップを探す」、「AB型兼用ベビーカー自体の購入を見合わせる」がともに約4割

最後に、「もし、育児用品が値上がりしたとしたら、ブランド/メーカーに見返りとしてどのような機能/品質、サービスを求めますか」という質問に自由回答形式で答えてもらっている。

・「安全性を落として値上げしないくらいなら、値上げしてでも安全性重視!子どもの使うものなのでそれ以外ない」
・「品質を落とさず、今後もより良い商品の開発に取り組んで欲しいです」
・「値上げの堂々とした告知。お菓子のように内容量を減らして価格を維持するなど、こそこそした値上げはやめてほしい。不信感につながる」

今回の結果について、(子育てマーケティング研究所 山内氏は、「ママたちが、値上げの見返りとして企業に求めることは、値上げしても変わらない『安全性』『品質の維持・向上』『信頼性』である。なぜなら、育児用品はママ自身が使用するのではなく、大切な我が子に使用するからに他ならない。仮に、育児用品が値上げされたとしても、ママ達の気持ちに対して誠実に向き合った商品開発、継続的で丁寧なコミュニケーションを行っていくことで、許容される可能性は高まっていくのかもしれない」と分析している。

*1:花王 ベビー用紙おむつ「メリーズ」 一部製品の出荷価格改定のお知らせ