新大阪~久宝寺間を結ぶおおさか東線が3月16日に全線開業。南吹田駅・JR淡路駅・城北公園通駅・JR野江駅の新駅4駅が開業した。既存の放出~久宝寺間各駅も、新幹線の拠点駅である新大阪駅へ乗換えなしで行けるようになり、利便性が向上した。

  • 放出駅ではおおさか東線・学研都市線の同一ホーム乗換えが可能(写真:マイナビニュース)

    放出駅ではおおさか東線・学研都市線の同一ホーム乗換えが可能

大阪都心部から放射状に延びる路線と接続する駅も多くあり、おおさか東線の全線開業によって大阪東部地域の交通事情が変化するのではないかと予想される。今回は一利用者の視点から、おおさか東線の乗換えの利便性について確認したい。

■全14駅中9駅がJR線・他社線と接続

おおさか東線は新大阪~久宝寺間を結ぶ営業キロ20.2kmの路線で、2008年に放出~久宝寺間が部分開業。今年3月に全線開業となった。開業後のダイヤは新大阪~久宝寺間の普通列車(201系6両編成)を基本としつつ、新大阪駅から奈良駅までの直通快速(321系・207系7両編成)も1日4往復運行される。

京阪神地区は京都市・大阪市・神戸市を中心に東西に結ぶ鉄道路線が多い一方、都心部の外側を南北に結ぶ環状線の役割を持つ路線は少ない。おおさか東線は京阪神地区における鉄道ネットワークの充実に大きく貢献する可能性のある路線といえる。

環状線の役割を担う路線だけに、接続するJR線・他社線の多さも特徴といえる。乗換駅を整理すると、起点・終点も含む全14駅のうち、半数以上の9駅が該当した。なお、新加美駅は大和路線(関西本線)の加美駅に近接する駅だが、乗換駅には指定されていないとのこと。通常、おおさか東線と大和路線の接続は久宝寺駅で行われる。

  • 新大阪駅 : 東海道・山陽新幹線、JR京都線、Osaka Metro御堂筋線
  • JR淡路駅 : 阪急京都本線・千里線(淡路駅)
  • JR野江駅 : 京阪本線(野江駅)、Osaka Metro谷町線(野江内代駅)
  • 鴫野駅 : 学研都市線、Osaka Metro今里筋線
  • 放出駅 : 学研都市線
  • 高井田中央駅 : Osaka Metro中央線(高井田駅)
  • JR河内永和駅 : 近鉄奈良線(河内永和駅)
  • JR俊徳道駅 : 近鉄大阪線(俊徳道駅)
  • 久宝寺駅 : 大和路線

新大阪駅では東海道・山陽新幹線だけでなく、新快速や北陸方面の特急「サンダーバード」、北近畿方面の特急「こうのとり」、関西空港方面の特急「はるか」、和歌山・南紀方面の特急「くろしお」、山陰方面の特急「スーパーはくと」などにも乗換え可能。地下鉄(Osaka Metro)御堂筋線で大阪都心部や千里中央方面にも行ける。

■学研都市線との接続は放出駅が便利

おおさか東線は鴫野駅と放出駅で学研都市線(片町線)と接続する。乗換えは放出駅のほうが圧倒的に便利だ。学研都市線はおもに快速・区間快速・普通が運行され、このうち快速・区間快速は鴫野駅に停車しない。放出駅は学研都市線・おおさか東線の全種別が停車するだけでなく、学研都市線住道方面とおおさか東線久宝寺方面、学研都市線京橋方面とおおさか東線新大阪方面がそれぞれ同一ホームで乗り換えられる。

  • 学研都市線(片町線)寝屋川公園駅。ダイヤ改正前まで「東寝屋川駅」だったが改称された

学研都市線では、3月16日のダイヤ改正に合わせて東寝屋川駅が改称され、寝屋川公園駅となった。その寝屋川公園駅から京橋方面の列車に乗車し、おおさか東線と接続する放出駅へ向かうことにした。

寝屋川公園駅では区間快速と普通列車が停車する。京橋行の普通列車に乗り、住道駅で塚口行の快速に乗り換え、10時45分に放出駅に到着。放出駅のホームは2面4線の構造で、基本的に1・4番線を学研都市線、2・3番線をおおさか東線が使用する。3・4番線ホームは対面乗換えが可能で、新大阪行の普通列車へスムーズに乗り継げる。

学研都市線の快速が京橋方面へ発車した後、10時48分におおさか東線の新大阪行の普通列車が放出駅3番線ホームに到着。筆者が乗った学研都市線の快速からは、乗客の約2割がおおさか東線へ乗り換えたようだ。新大阪行の普通列車は放出駅で約3分間停車。その間、隣の4番線ホームに学研都市線の普通列車が入ってきた。学研都市線の普通列車が発車した後、おおさか東線の普通列車も発車して新大阪駅へ向かう。

京橋方面の学研都市線はどの列車も混雑していたが、おおさか東線の普通列車は立席の乗客が少なく感じられた。おおさか東線の利用者が増えるのはこれからだろう。ちなみに、放出駅から乗った乗客の大半が終点の新大阪駅まで乗車している様子だった。

■「乗換駅」と名乗るには微妙な駅も…

おおさか東線の新規開業した区間のうち、JR淡路駅は阪急京都本線・千里線、JR野江駅は京阪本線や地下鉄(Osaka Metro)谷町線と乗換え可能となっている。

  • JR野江駅。駅舎は「榎並猿楽」をコンセプトにデザインされている

  • 京阪本線の野江駅。普通のみ停車する

  • 地下鉄(Osaka Metro)谷町線の野江内代駅。「のえうちんだい」と読み、難読駅名の1つに数えられる

JR野江駅の場合、京阪本線の野江駅へは成育口(東口)から住宅地を道なりに歩いて3分ほど。ただし、野江駅には京阪本線の普通しか停まらない。おおさか東線から寝屋川・枚方市方面へ行くならここで乗り換えても良さそうだが、京橋駅へ行くなら同じJR線である学研都市線に乗り換えるところだろう。実際に歩いてみても、日中時間帯にJR野江駅から京阪本線の野江駅へ乗り換える人は少ないように感じられた。

一方、谷町線の野江内代駅もJR野江駅の乗換駅に指定されているが、徒歩で8分ほどかかり、道のりも一直線とはいかず、最低でも1回は横断歩道を渡らなければならない。「乗換駅」を名乗るには微妙なところで、JR野江駅から野江内代駅へ乗り換える人はほとんど見られなかった。

  • JR淡路駅。阪急電鉄の淡路駅へ徒歩5分程度で乗り換えられる

  • 阪急電鉄の淡路駅。高架化工事にともない仮駅舎での営業となっている

JR淡路駅は阪急電鉄の淡路駅へ乗り換えられる。阪急電鉄の淡路駅は京都本線と千里線が接続し、列車が頻繁に行き交う。通勤特急を除く京都本線の優等列車も淡路駅に停車する。千里線は地下鉄(Osaka Metro)堺筋線と相互直通運転を行っている。駅とその周辺では高架化工事が進められ、2027年度の事業完了をめざしているという。

両駅間は徒歩5分ほどの距離にあり、JR淡路駅の改札を出ると、阪急電鉄の駅への方向を指し示す左矢印のマークがいくつも見られる。実際、JR淡路駅で降りた利用者の7割程度が阪急電鉄の淡路駅へ向かっているように感じられた。途中、道しるべとなる派手なのぼりもあり、これらを頼りに歩けば、おそらく迷うことは少ないだろう。

  • おおさか東線の普通列車は201系6両編成で運行される

おおさか東線の場合、「乗換駅」といっても使い勝手の良さは駅によってまちまちであり、とくに他社線との乗換えは駅舎をいったん出ての移動となることがほとんど。おおさか東線の普通列車は現在、15分間隔の運転を基本としているため、他社線から乗り換える際に予想より時間がかかってしまい、列車を1本逃し、次の列車まで10分以上待たされることもありうる。他社線との乗換えでおおさか東線を利用するなら、いつも以上に時間に余裕を持って乗り換えられるようにしたほうが良いかもしれない。