JR九州は12日、D&S列車「36ぷらす3」の試乗(博多~長崎間)と西九州新幹線長崎駅の工事状況に関する報道公開を実施した。「36ぷらす3」が長崎駅に到着した後、鉄道・運輸機構の協力の下、西九州新幹線長崎駅の現在の工事状況等が公開された。

  • 「36ぷらす3」が長崎駅に到着。在来線ホームは2020年3月に高架化された

「36ぷらす3」は6月22日から7月14日まで梅雨期間のため計画的に運休しており、7月15日から夏・秋の運行を再開する予定。これに先立ち、7月12日に博多~長崎間で臨時運行を行い、報道関係者向けに試乗の機会が設けられた。月曜日ルートと同様の行程で運行され、途中の肥前浜駅でおもてなしも実施。15時38分、「36ぷらす3」は高架化された長崎駅の在来線ホーム(3番のりば)に到着した。その後、鉄道・運輸機構の案内で新幹線駅舎へ。2022年秋頃の開業をめざし、工事の進む駅舎とコンコース、ホームを見学した。

長崎駅では2020年3月に在来線ホームが高架化され、西側へ約150m移転。在来線ホームに隣接して2面4線の新幹線ホームが設置される。西九州新幹線の終着駅となり、列車が高速で通過しないことから、ホーム上家に新幹線駅では珍しい膜屋根を採用。Y字の柱と外壁側の柱だけでアーチ状の屋根を支える構造とし、横方向に円弧を描くとともに、縦方向も駅南側の港へ波打つような形状とする。新幹線ホームと在来線ホームの間の壁をなくすことで、ひとつの大屋根に包まれるような一体化した空間になるという。

  • 長崎駅の在来線ホームからも新幹線ホームが見える

  • 長崎駅の新幹線駅舎の前で概要説明が行われた

  • 鉄道・運輸機構の案内で階段を上り、ホーム階へ

報道公開では、鉄道・運輸機構諫早鉄道建築建設所の所長、上野圭一氏が新幹線駅舎・ホーム等について説明。駅舎のデザインに関して、長崎県と長崎市が「長崎駅舎・駅前広場等デザイン基本計画」を策定しており、「これにもとづいたデザイン案をいただき、それを我々(鉄道・運輸機構)が鉄道の建築として成り立つように再度検討し、設計を見直した上で、実施設計にかかったという経緯があります」と上野所長は言う。ホームの上家架構は「海への方向性」を感じさせるデザインとし、コンコース階(1階)はレンガ調タイルを使用した柱型で長崎らしさを感じさせるデザインに。新幹線乗換改札口も設置する。

ホームの長さは160m。長崎県・長崎市の要望を受け、ホーム南端部に歩行者通路を設置し、旭大橋を行き交う車や長崎港、女神大橋など眺められる空間を創出している。

膜屋根を採用することで、夜になるとホームの照明で駅全体が光ったような印象になり、長崎の夜景の魅力向上に寄与するのではないかとの説明もあった。「県・市の要望を受け、夜景に寄与する形でライティングも計画しています。ただし、我々の予算のスキームではできないため、県・市よりご負担金をいただきながらとなります」と上野所長。報道陣との質疑応答の中で、「建築の工事において、現在の進捗率は80%程度」「駅としての完成時期は来年3月くらいの見込み」「建築が担当する工事金額の当初発注額は45億3,600万円でした」といったコメントも聞かれた。

  • 膜屋根を採用した長崎駅の新幹線ホーム。南端部の歩行者通路から旭大橋や長崎港、女神大橋を眺められる

西九州新幹線は現在、武雄温泉~長崎間(線路延長約66km)にてフル規格で整備を進めており、武雄温泉駅、嬉野温泉駅、新大村駅、諫早駅、長崎駅の5駅を設置。JR東海が営業投入した車両を短編成化(6両編成)し、エクステリア・インテリアを変更したN700Sが新たに投入され、「かもめ」の列車名で運行される。武雄温泉駅では、博多駅からの在来線特急列車と同一ホームで乗換え可能な「対面乗換方式」が採用される。

なお、JR九州は今年3月に「長崎駅高架下店舗」の工事着工を発表。新幹線・在来線ホームの高架下を活用し、改札口正面に物販・飲食店を設け、新たなにぎわいと交流の拠点をつくる。開業予定は2022年春とのこと。さらに、移設した在来線ホームと新設の新幹線ホーム、既設の「アミュプラザ長崎」を一体化する「新長崎駅ビル」の計画もあり、商業・ホテル・オフィス・駐車場を有する複合施設に。工期の短縮等で開業時期が早められ、2023年秋に全面開業予定となっている。

  • 2022年秋頃の開業をめざし、工事が進む西九州新幹線長崎駅の現在の様子など