最新記事

アメリカ政治

保守王国での共和党敗退はトランプへの審判 民主党は中間選挙で逆転か

2017年12月15日(金)09時43分

12月13日、トランプ米大統領は、アラバマ州の上院補選でわいせつ疑惑が浮上した共和党のロイ・ムーア候補をあえて支援するという危険な賭けが完全に裏目に出て、大きな政治的損失を被った。同州モンゴメリーのムーア氏支持者集会で撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)

トランプ米大統領は、アラバマ州の上院補選でわいせつ疑惑が浮上した共和党のロイ・ムーア候補をあえて支援するという危険な賭けが完全に裏目に出て、大きな政治的損失を被った。

同補選で民主党のダグ・ジョーンズ候補が勝利したことは、トランプ氏にとって完全な敗北であり、共和党が来年の中間選挙で下院か上院、あるいはもしかするとその両方で多数派から転落する前兆と言えそうだ。

保守王国のアラバマ州でジョーンズ氏が当選した意味はそれほど大きかった。民主党は既に下院での過半数確保に自信を見せていたが、今回の結果を踏まえ、上院でも再び多数派になる確率が以前よりは少し高まりつつある。

民主党が両院を制した場合、トランプ氏の政策を厳しくチェックするだけでなく、大統領弾劾を始める事態もあり得る。

昨年の大統領選の民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の側近を務めたジェス・ファーガソン氏は「共和党が全米屈指の強い地盤で負けたことは、彼らの候補がいくら不適格な人物だったとしても、今後の政局に対する警鐘となっている」と指摘した。

民主党はアラバマ州では過去25年間ずっと上院選で勝てなかっただけに、今回も期待はしていなかった。ところがトランプ氏の不人気と、ムーア氏のわいせつ疑惑、そしてそのムーア氏をトランプ氏が熱心に支持したことで民主党にチャンスが到来した、というのが専門家の見方だ。

バージニア大学の政治分析専門家カイル・コンディック氏は「トランプ氏がジョーンズ氏を当選圏内まで押し上げる役割の一端を担い、(最終的に)ムーア氏がジョーンズ氏の勝利のお膳立てをした」と述べた。

コンディック氏によると、今年に入って複数の議会選挙で民主党は敗北したとはいえ得票数は常に増加しており、これはトランプ氏の存在が原因だという。

<トランプ氏への審判>

アラバマ州補選は、トランプ氏の支持効果と判断力の限界を物語っている。

共和党幹部がトランプ氏にムーア氏を見捨てるよう要請したにもかかわらず、トランプ氏は最後まで全力で応援を続けた。しかし結局、その影響力は十分に働かず、早い段階での出口調査で多くの共和党員が投票に行かなかったことが分かった。

さらにこの補選は終盤になって、トランプ氏自身を支持するかどうかを有権者が判断する側面が強まる一方となった。ムーア氏陣営も今週、選挙はトランプ氏と彼の大統領ぶりを巡る国民投票の様相になったとの見方を示した。

ムーア氏の選挙参謀はABCニュースで「アラバマではトランプ氏が裁かれている」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

OPEC、5月は増産 イラクとナイジェリアが主導

ビジネス

中国製EVの関税引き上げ、米自動車産業に重要=エネ

ワールド

米司法長官、刑事司法制度を「政治利用」との共和党の

ビジネス

米シスコ、10億ドルのAIファンド立ち上げ 新興企
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新たな毛柄

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しすぎる...オフィシャル写真初公開

  • 4

    昨年は計209匹を捕獲...18歳未満でも参加可、フロリ…

  • 5

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 6

    ロシアが「世界初」の地上型FPVドローンを開発、「竜…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    NATO諸国、ウクライナ支援の方針転換でプーチンの警…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    肥満や足が遅い人のための登山隊も出現、エベレスト…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しすぎる...オフィシャル写真初公開

  • 4

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 5

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 6

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 7

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 8

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中