米Appleは6月27日 (現地時間)、最高デザイン責任者 (CDO)として同社のデザインを統括するJonathan (Jony) Ive氏が年末までに独立すると発表した。同氏は自らのデザイン会社を設立し、Appleを主要顧客として同社の幅広いプロジェクトに関わっていく。

Ive氏は、Appleの歴史における重要人物の1人に数えられる。

英国生まれのIve氏は1992年にApple入社、1996年にデザインチームのリーダーになり、Steve Jobs氏がAppleに復帰してから半透明のiMacやiBook、iPodなど、数々のヒット製品にデザイン面で貢献した。そのデザインはシンプルで美しいだけではない。操作ボタンとスクロール機構を融合させたiPodのクリックホイール、煙突のような構造でファンレス・静音動作を実現したG4 Cube、環境への影響を軽減するアルミニウムの採用など、機能性や優れたユーザー体験が宿るデザイン、深い意味が伝わってくるデザインで評価されている。2012年の組織改革後はインダストリアルデザインに加えて、ヒューマンインターフェイスも統括するようになり、OSやソフトウェアのインターフェイスデザインにも同氏の意見が及ぶようになった。2015年に新たに設けられた最高デザイン責任者に就任。2017年にオープンしたApple Parkは、AppleにおけるIve氏最大のデザインワークと言われている。

  • Jony Ive氏とTim Cook氏

    「Jonyはデザイン界で唯一の存在であり、アップルの復活における彼の役割はいくら強調しても足りません」とTim Cook氏

Appleは最高デザイン責任者の後任を置かず、Evans Hankey氏 (インダストリアルデザイン担当バイスプレジデント)とAlan Dye氏 (ヒューマンインターフェイスデザイン担当バイスプレジデント)がデザインチームを率い、最高執行責任者 (COO)のJeff Williams氏に報告する。Jobs氏の時代からデザインチームのトップが最高経営責任者 (CEO)の直属であり、製品開発コンセプトから大きな影響力を持っていたのがAppleの特徴だった。それが最高執行責任者 (COO)直属に変わって、デザインチームの影響力が弱まる可能性が指摘されている。一方で、近年Ive氏の存在感が増し、同氏に頼る体制のリスクも指摘されていた。Ive氏が去ってAppleが失うものは大きいが、ポストIve時代のAppleへの円滑なシフトの第一歩を踏み出せたという見方もできる。