“クックパッド芸人”を自称し、自らのキッチンに1000品以上のレシピを掲載している「藤井21」さん。1人(ソロ)で作って1人で食べるという「ソロ飯」を日々楽しんでいるそう。藤井21さん自作のおすすめレシピと、悲喜こもごものエピソードをご紹介します。第7回のテーマは「ナス」。藤井さんの家では毎夏ナスを大量にストックしているそう。その理由とは?
土曜の昼下がり、目の前に鎮座ましましている熱々の器を前にして、そういえばよくこの時期になるとこいつをよく食べていたなと思い出した。
とろとろにとろけるまで煮込まれたナスに加えてたっぷり野菜が入ったうどんは、一見何の変哲もないけれど、ひどく懐かしい郷愁の思いに駆られる。
この料理の主役はうどんではなく、気持ち程度に入った肉でもなく、「ナス」だ。
僕がナスで思い起こすのは、実家の畑で採れたナスだ。しかもレジ袋にめいっぱいに詰め込まれたもの。
僕の実家は埼玉のちょうど真ん中、東松山というところにあるのだが、一般的に言うところのいわゆる田舎だ。
これは田舎あるあるなのだが、どの家ももれなく畑を所有している。畑がない家でも庭が広いので家庭菜園の規模が結局畑レベルになる。
一面に緑が生い茂り、端から見たらなんの野菜が植えられているかすらわからない雑然とした畑だが、これがうちの実家の畑だ。
決して農家だから畑をやっているわけではない。現に僕の実家も農家ではなく小売酒屋だ。
そんな実家の畑で採れたナスは、少し小さかったり逆にとんでもなく大きかったり、形がいびつだったりしていて、スーパーには並ぶことのない無骨な形をしている。
それでも食卓に並んでしまえば、なんて事はない同じナスだ。
いや厳密に言えば有機農法で作られたナスだ。むしろ買おうとしたら普通のものより高いんじゃないだろうか。
そんなナスをこの時期になるといつも山ほど収穫して、スーパーのレジ袋をいっぱいにしていた。
初夏から初秋にかけて旬を迎えるナスは夏野菜の代表だ。連日のように30度を超える暑さを記録して、外にいるだけで汗をかくような時期になってくると、今住んでいる僕の家にもレジ袋いっぱいのナスと、畑で採れた大量の野菜たちが実家から送られてくる。
思い起こせば、子どもの頃の夏には、食卓にいつもたくさんの『ナス』があったような気がする。
とろとろになるまで煮込まれたナスと共に野菜がたっぷり入った「うどん」も、
お酢が効いてほんのり酸っぱくサッパリしていくらでも食べられる「揚げびたし」も、
そこにあるだけで嬉しい箸休めの「漬物」も、
食卓にはナスの料理が豊富にあったんだなと思い出す。
さて、こうしてナスに郷愁を感じている今現在も、まだ冷蔵庫には実家の畑から直送されたナスが大量にある。
まるで「野菜もたくさん食べなさい」と言っているかの様な親の心配がありがたいやら。
全くもって「ナスの花と親の意見は千に一つも仇はない」(※1)だ。
※1:ナスは花を付けると必ず実を付ける事から、親の意見も同じで何一つ無駄がないという諺。
料理と笑いで天下を目指す男性ピン芸人。
埼玉県東松山市出身。東松山のやきとりを愛し、東松山市親善大使「東松山市應援團」の一員。食品衛生責任者の資格を持ち、クックパッドには1000以上のレシピをアップしている。日本テレビ系列『ウチのガヤがすみません!』などに出演。
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