東武鉄道は12日、JR北海道から借り受けた蒸気機関車C11形207号機の「火入れ式」を南栗橋車両管区(埼玉県久喜市)で執り行った。SL車両撮影会も実施され、C11形207号機の他にJR西日本・JR貨物から譲り受けた車掌車2両も公開された。

東武鉄道がJR北海道から借り受けた蒸気機関車C11形207号機

東武鉄道は2017年夏をめどに、日光・鬼怒川地区でSL復活運転をめざし、車両・施設の準備などを進めている。蒸気機関車C11形207号機は8月12日にJR北海道苗穂工場を出発し、苫小牧港からフェリーで大洗港へ運ばれた後、8月19日に南栗橋車両管区へ到着。その後、運搬時に分解された一部部品(煙突やヘッドランプなど)が組み上げられ、北海道で活躍した頃の姿が再現され、「火入れ式」の日を迎えた。

「火入れ式」はSLの今後の準備や運転に向け、安全を祈願するために執り行う神事。ボイラーの火室に点火する「点火之儀」、火室に石炭を投げ入れる「投炭之儀」の後、東武鉄道取締役社長の根津嘉澄氏が挨拶し、「無事に火が灯り、来年夏の運転開始へ新たなスタートをきれたことをうれしく思います。このSL復活運転プロジェクトは、鉄道会社にしかできない、鉄道会社ならではの事業として、日光・鬼怒川エリアの地域活性化に貢献したいとの思いからスタートしました。これをきっかけとして、東武グループと沿線地域がさらに密接に連携し、地域に元気を与えるような施策を展開したい」と述べた。

その後のSL車両撮影会では、南栗橋車両管区に新設された検修庫(SLの各種検査を行う施設)をバックにC11形207号機の撮影が行われ、検修庫内も公開。C11形207号機に連結する車掌車(ヨ8000形)2両の撮影も実施された。JR貨物から譲り受けた車掌車ヨ8634は1978(昭和53)年日本車輌製、JR西日本から譲り受けた車掌車ヨ8709は1978年川崎重工製。2両とも今年6月に受入れ作業が行われたという。

C11形207号機は運搬時に分解されていた煙突やヘッドランプなどの部品も組み上げられ、北海道で活躍した頃の姿が蘇った

「火入れ式」は南栗橋車両管区に新設された検修庫内で執り行われた

JR貨物・JR西日本から譲り受けた車掌車ヨ8634・ヨ8709も公開された

東武鉄道によれば、今月中にJR四国から客車6両(スハフ14-1、スハフ14-5、オハフ15-1、オハ14-1、オロ12-5、オロ12-10)を受け入れ、12月頃にJR東日本からディーゼル機関車DE10形1099号機も受け入れる予定とのこと。JR西日本が所有していた転車台(長門市駅転車台・三次駅転車台)も譲渡され、下今市駅・鬼怒川温泉駅への設置に向け、整備を行っている。あわせてJR北海道・秩父鉄道・大井川鐵道・真岡鐵道の協力の下、検修および乗務要員の教育・習熟訓練も進めている。

SL復活運転は東武鬼怒川線下今市~鬼怒川温泉間にて、土休日を中心に年間最大140日程度(1日3往復程度)運転される。SL(C11形207号機)を先頭に、車掌車1両・客車3両・DL(DE10形1099号機)の編成となり、客車の座席定員数は約200席(予定)。来年夏の営業運転開始に向け、4月頃から東武鬼怒川線で試運転も開始される予定となっている。