JR東日本は3日、来年春のダイヤ改正で終電時刻の繰上げなどを行うと発表した。新型コロナウイルス感染症の流行を契機とした利用者の行動様式の変化に対応し、安全かつ利便性の高い鉄道サービスをサスティナブルに提供していくため、夜間の作業時間を確保することなどを目的としている。

  • 山手線上野~御徒町間の利用状況と、おもな路線終日の利用状況。2019年8月(8月10~18日を除く)と2020年8月(8月10~16日を除く)の平日の利用状況を比較(JR東日本提供)

新型コロナウイルス感染症の流行を契機とした働き方と行動様式の変化を受け、鉄道の利用状況は大きく変化し、とくに深夜時間帯の利用は大きく減少している状況にある。収束後もテレワークやEコマースなどがさらに広く社会に浸透していくと想定されており、利用者の働き方や行動様式も元に戻ることはないと考えられている。

加えて、人口減少にともない過去10年で建設業就業者数は約1割、JR東日本管内の線路保守作業員は約2割減少。今後10年も1~2割の作業員の減少が続くと見込んでおり、人材確保に向けた働き方改革が急務と考えている。

  • ホームドア整備(JR東日本提供)

  • ホームドアの基礎工事の杭打ち作業(JR東日本提供)

一方で、設備の老朽化と新規設備の増加により、工事量は過去10年で約1割増加。ホームドアやバリアフリー設備をはじめ、安全とサービス向上を目的とした工事も増加傾向が続く見込みだという。

ホームドアや駅改良など、鉄道設備の改良・保守に関わる工事については、多くの作業を終電から初電までの間に行っているが、短い時間での工事となるため、ひとつの作業を複数日にわたり分割して実施するなど作業効率が悪く、工事に時間を要している。そのため、これまで以上に効率的な作業体制の確保が課題となる。

この課題に対応するため、生産性向上に継続的に取り組んでいるが、今後、さらなる作業の近代化・機械化を推進するためにも、機械搬出入などの準備時間(約60分)を考慮すると240分以上の列車間合いが望ましいという。

  • 列車時刻見直しイメージ(JR東日本提供)

そこで、おもに東京100km圏の各路線において、終電時刻の繰上げなどを実施する。具体的には、直近の利用状況を踏まえつつ、終電から初電までの間隔(列車間合い)を240分程度確保することを念頭に、各方面への終電時刻の繰上げ(現行より30分程度繰り上げ、終着駅の到着時刻をおおむね1時頃とする)が行われる。一部線区では初電時刻の繰下げも行う。ダイヤ見直しの実施時期は2021年春を予定しており、実施線区や内容については10月に改めて発表される。