正月の定番「雑煮」は現代人のパーフェクトフード? その歴史を紹介

お椀ひとつで一汁一菜 雑煮365日
『お椀ひとつで一汁一菜 雑煮365日』
栄文, 松本
NHK出版
1,650円(税込)
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 正月になると食べたくなる「雑煮」。とってもおいしいけれど、正月以外は食べる機会が少ないという方がほとんどではないでしょうか。でも実は、雑煮は一椀で餅、肉・魚、野菜が同時にとれる万能食。歴史的にみると正月限定ではなく、祝いの場や客をもてなす酒席で欠かせない存在だったようです。

 今回紹介する書籍『お椀ひとつで一汁一菜 雑煮365日』の著者・松本栄文さんは料理研究家で、料理本のアカデミー賞と言われる「グルマン世界料理本大賞」の受賞歴があり、テレビにも多数出演しています。さらに全国お雑煮文化研究家でもあり、本書では家にある食材で手軽に作れるアレンジ雑煮を紹介しています。

 本書によれば、もともと平安期の宮中で、祭祀で供えた餅を貴族が持ち帰り、汁に入れて食した「汁雑煮」が今の雑煮のルーツ。室町期に現代の私たちが食べているような、新年を寿ぐ際に雑煮を提供するスタイルが確立しました。

 昔も今も雑煮に欠かせないのが餅。昔はつきあがった餅を手で丸めていましたが、人口が多い江戸では手早く大量に作れるようにと、伸(の)して、冷めて固くなったところを一気に四角に切り分ける方法が考え出されたといいます。

 ちなみに角餅の古い記述として「徳川将軍家の作法指南を務めた高家吉良家の『吉良流礼法』では、雑煮のお餅について『餅は四寸四方(約一二センチ角)の角餅』」(本書より)と記録があるそうです。

 東日本では角餅、西日本では丸餅が主流のようですが、混在する地域もあり、雑煮に入れる前に焼く焼かない、味噌仕立て、すまし汁など、地域によって楽しみ方はさまざまです。京の都から日本全国に広まった雑煮は、各地域の特産物や郷土の野菜を柔軟に取り入れて、多彩なバリエーションが生まれました。

 松本さんが「お椀ひとつにお餅、汁、具がバランスよく入る雑煮は、じつは忙しい現代人にとって理想的なパーフェクトフードといえましょう。ぜひ日々の食卓で、味噌汁感覚で味わってみてください」(本書より)と提案するように、雑煮を日々の食卓に採用してみてはいかがでしょうか。本書で紹介されている春夏秋冬の食材で作られた雑煮レシピをぜひ参考にしてみてください。

[文・山口幸映]

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