JR北海道は18日、「当社単独では維持することが困難な線区」(13線区1,237.2km)に関する考えをまとめ、同社サイト上に公開した。「輸送密度が200人未満(片道100人未満)の線区」「輸送密度が200人以上2,000人未満の線区」などに分類した上で、それぞれ今後の交通体系のあり方について「地域の皆様と相談を開始したい」としている。

留萌本線は12月4日の運行を最後に留萌~増毛間が廃止。残る深川~留萌間も利用者が極端に少なく、2019年度に並行する高規格道路(深川・留萌自動車道)が全通予定。冬期間の除雪などの対応にも苦慮している線区だという

「輸送密度」は旅客営業キロ1kmあたりの1日平均旅客輸送人員をさす。「輸送密度が200人未満(片道100人未満)の線区」は1列車あたりの平均乗車人員が10人前後ときわめて利用者が少なく、線区の営業係数(100円の営業収益を得るために必要な営業費用の指数)も1,000を大きく上回った。さらに老朽土木構造物の維持更新費用も必要になる。

「輸送密度が200人未満(片道100人未満)の線区」とされた札沼線(学園都市線)北海道医療大学~新十津川間、根室本線富良野~新得間、留萌本線深川~留萌間に関して、「鉄道よりも他の交通手段が適しており、利便性・効率性の向上も期待できると考えられるほか、運営赤字とは別に老朽土木構造物の維持更新費用として今後20年間で58億円程度が必要」とJR北海道。持続可能な交通体系とするため、「バス等への転換について地域の皆様と相談を開始したい」との考えを示した。

「輸送密度が200人以上2,000人未満の線区」は宗谷本線名寄~稚内間、根室本線釧路~根室間・滝川~富良野間、室蘭本線沼ノ端~岩見沢間、釧網本線東釧路~網走間、日高本線苫小牧~鵡川間、石北本線新旭川~網走間、富良野線富良野~旭川間で、営業係数は300~1,000程度。特急列車が運行される線区や観光路線も含まれるが、老朽土木構造物の更新に加え、福知山線脱線事故を受けた安全対策である新型ATSの整備も必要となる。

これらの線区に関して、JR北海道単独では「安全な鉄道サービス」を持続的に維持するための費用を確保できないことから、「経費節減、運賃値上げ、利用促進策や上下分離方式など、鉄道を維持する仕組みについて地域の皆様と相談を開始したい」「そのうえで、輸送サービスを鉄道として維持すべきか、他の代替輸送サービスの方が効率的で利便性が向上するか検討を行ってまいります」とされた。

なお、鉄道事業廃止に向けて協議している石勝線新夕張~夕張間、線路災害の影響でバス代行輸送を実施中の日高本線鵡川~様似間は「既に『持続可能な交通体系のあり方』等について話し合いを始めている線区」に分類されている。

「単独で維持可能な線区」も設備が老朽化 - 必要に応じて運賃改定も

「北海道高速鉄道開発株式会社関連線区」である宗谷本線旭川~名寄間・根室本線帯広~釧路間はJR北海道が当面維持するものの、営業損失が50億円を超え、「安全な鉄道サービス」を持続的に維持するための費用も確保できないことから、「線区を持続的に維持するために北海道高速鉄道開発との関連で検討します」とのこと。北海道新幹線札幌開業(2030年度末までの開業を想定)にともなう経営分離区間は「経営分離されるまでの間、施設のスリム化などに取り組み、効率的な運営を行います」としている。

「当社単独で維持可能な線区」に分類されたのは函館本線小樽~旭川間、室蘭本線・千歳線長万部~白石間(室蘭~東室蘭間・南千歳~新千歳空港間も含む)、札沼線(学園都市線)桑園~北海道医療大学間、石勝線・根室本線南千歳~帯広間。札幌圏を中心とした輸送密度4,000人以上の線区であり、「大量・高速輸送の観点からも鉄道でなければ輸送を担えない」としながらも、他の線区と同様、老朽化した土木構造物が多数存在することから、維持更新には多額の費用がかかると想定されている。

これらの線区に関して、国や自治体などの補助スキームも活用しながら「施設のスリム化など経営の効率化に努めるほか、必要に応じて運賃改定を行うことにより、今後も当社単独で維持可能な線区であると考えております」とJR北海道は説明している。