コラム

イギリスも悩む人口の都心部一極集中

2018年09月21日(金)16時20分

悪天候でロンドンのウォータールー駅に足止めされた人々 Henry Nicolls-REUTERS

<ここ10年ほどでイギリス国内でもイングランド南東部に偏って人口が激増し、さまざまな問題を生んでいる。イギリスの誇る風光明媚な田園地帯まで、開発の波に襲われるかも>

以前にイギリス、特にイングランド南東部(僕が住む地域でもあり、ロンドンも含まれる)の人口増加について書いたことがある。今回はこのことについて詳しく説明してみたい。

僕が中等学校に通い始めたばかりの1981年、イギリスの人口について学んだことを覚えている。当時、イギリスの人口は5600万人で、うち4600万人がイングランドに住んでいるということだった。そしてこの数字は、僕が中等学校にいる間ずっと有効だった。イギリスの人口は僕が大学に入った1989年の時点で5700万人を少し超える程度だったからだ。そのうえ、僕が生まれてからずっと、イギリスの人口はいつでもかなり安定していた。1971年の時点でも5600万人だったのだ。

現在、イギリスの人口は推定6600万人で、イングランドの人口は5600万人弱になっている。言い換えれば、今のイングランドは一世代前のイギリス全体とほぼ同じ人口を抱えているということ。また別の見方をすれば、イギリスの人口は僕の子供時代に比べて1000万人増加し、そのほとんど全てがイングランドで起こっているということだ。

イギリスという国は、独特でアンバランスな構造になっている。イングランドは地理的にはイギリス最大の国だが、スコットランドもかなりの大きな面積を持っている。イングランドの面積はスコットランドに比べて3分の2ほど大きいが、人口は10倍以上だ。ウェールズはスコットランドよりかなり小さい(4分の1強程度)が、人口はスコットランドの半分以上。それでも、ウェールズの人口密度はイングランドのたった3分の1程度だ。

そんなわけで、イギリスの約85%の人々がイングランドに住んでいることになる。実際、ロンドンの人口(880万人)だけでもスコットランド(550万人)とウェールズ(310万人)の合計を超えている。北アイルランドの人口は180万人だ。にもかかわらず、スコットランド人とウェールズ人と北アイルランド人は、外国の人からイギリス=イングランド、のように言われると不機嫌になること間違いなしだ(それから、決してスコットランド人をイングランド人と呼んではいけない)。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グリーンピース、仏トタルエナジーズ本社近くのビルに

ワールド

モスクワ郊外の銃乱射、ウクライナが直接関与=ロシア

ビジネス

サムスン労組が異例の集会 公正な賃金要求 K-PO

ワールド

北朝鮮、軍事衛星打ち上げ準備の兆候 韓国が指摘
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき

  • 2

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレドニアで非常事態が宣言されたか

  • 3

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 4

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 5

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 6

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 7

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 8

    韓国は「移民国家」に向かうのか?

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    国公立大学の学費増を家庭に求めるのは筋違い

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 8

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story