これらの新製品や同社の戦略などについて、CEOのブラッド・フライターグ氏、本社バイスプレジデントのシュリニ・グラプ氏、クラリス・ジャパンの日比野暢氏と荒地暁氏に話を聞いた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、インタビューはオンラインで実施した。

既報の通り、2020年5月21日にクラリスから「Claris FileMaker 19」がリリースされた。同時に、米国などではすでに公開されていた「Claris FileMaker Cloud」が日本でも開始となり、ワークフローを自動化する「Claris Connect」には日本企業のコネクタが新たに追加された。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、インタビューはオンラインで実施した(インタビューイー各氏の詳しい肩書きは写真とともに記載。以下、記事中は敬称略)。

急速に変化する今こそ、クラリス製品は最も役に立つ

-- 新型コロナウイルス感染拡大で、クラリスのビジネスに影響は出ていますか?

フライターグ 今のところは順調で、マイルストーンもすべて達成しています。社内ではみんなが在宅勤務になるという大きな変化がありましたが、生産性は下がっていません。ビジネス上の影響はまだ明らかになっていませんが、ヘルスケアや教育などの分野は大きな成長が見込まれます。一方、中小企業については懸念しています。

  • Claris International CEO、クラリス・ジャパン社長
    ブラッド・フライターグ氏

-- 新型コロナウイルスの影響に対して、クラリスは何ができると考えていますか?

フライターグ コミュニティはすでに新型コロナウイルス対策に動いています。医療機関などを対象とした無償トライアルのライセンスを延長できるようにしたほか、開発コミュニティも3,000時間を費やして対策にあたっています。

-- 医療関連などに限らず、変革する社会全般に対してはいかがですか?

フライターグ パンデミックはデジタルトランスフォーメーションを加速させました。数年かかりそうだったことがまるで一晩で変化するようなこの状況において、クラリス製品は今こそ最も役に立つと思います。学習リソースの提供やパートナーコミュニティへのサポートの強化など、お客様やパートナーのモダナイズ(最新テクノロジーを活用した変革)のお手伝いができると考えています。

3月にリリースされたClaris Connectの動向は?

-- 今年3月にワークフローを自動化するClaris Connectがリリースされました。現在のユーザー数は非公開ですか?

フライターグ そうですね、発表していません。しかしリリース後のマイルストーンは達成しています。好調ですよ(ここで両手の親指を上に向ける「サムズアップ」のジェスチャー)。

-- どのような用途で使われているでしょうか。

グラプ 直近の事例をいくつかご紹介します。まず、新型コロナウイルスの影響を受けて、出荷や物流を自動化したお客様の例があります。また、テック企業ではセールス分野でリード(見込み顧客)の生成から顧客獲得まで、CRMやコラボレーションに使われていますね。さらに保険会社では、事故を起こしてしまったドライバーが自分で写真を撮って送信し、処理を実行するようなセルフサービスの自動化にも使われています。

  • Claris International プロダクトマネジメントおよびデザイン担当バイスプレジデント
    シュリニ・グラプ氏

フライターグ この分野は大きなマーケットと考えており、投資を続けていきます。

新しいFileMakerは「初のオープンプラットフォーム」

-- 新しいFileMakerプラットフォームは、どのような製品でしょうか。

フライターグ このリリースに私たちはとてもわくわくしています。目玉と言えるようなことがいくつもあるからです。私たちは今回のリリースを「初のオープンプラットフォーム」と位置づけています。JavaScriptをWebビューアで利用できるようになり、開発者はJavaScriptの豊富なライブラリをFileMakerプラットフォーム上で活用できます。Core MLのモデルを活用してAI機能を持つアプリも開発できます。また、日本のクラウドのデータセンターが開設し、日本のお客様にもClaris FileMaker Cloudをお使いいただけるようになりました。クラウドのエクスペリエンスを簡単に利用できるようにする一方で、オンプレミスではLinuxで動作するFieMaker Serverを今年の夏の終わり頃に提供する予定です。このように「ビッグリリース」であると考えています。

-- 1年ごとに規模の大きいアップデートをするのは、今回が最後と聞いています。

フライターグ はい、そうです。12のスクラムチームが開発に取り組んでいて、これまでより短いサイクルで新しい製品を提供していきます。

-- では、バージョン番号の「19」という表記は、いずれなくなるのでしょうか?

フライターグ いい質問ですね(笑)。そうですね、おそらく、なくなるのではないでしょうか。

-- これまでにパッケージで購入したり、永続ライセンスで契約した顧客の移行はどうなりますか?

フライターグ これまでに新しい環境へのお客様の移行をサポートしてきたように、今後もサポートします。

グラプ すべてのお客様に、シームレスに新しいアップデートを提供していく方針です。

-- オンプレミスもクラウドの両方が今後も引き続きサポートされると考えていいでしょうか。

フライターグ 私たちは「クラウドスマート」を提唱していますが、その一方でとても多くのお客様がLinux版のFileMaker Serverを求めていたことも理解しています。オンプレミスとクラウドは補完し、調和しながら、これからも両方が使われていくと思います。

グラプ 私たちは、オンプレミスでもクラウドでも、同じシンプルさ、パフォーマンス、セキュリティで使えることを目指しています。その表れのひとつが、FileMaker Server for Linuxです。