先日、法事があって郷里の山形へ行ってきた。天童市に住む親戚の家に挨拶に行ったついでに、近所に有名なお蕎麦屋さんがあるから行こうと案内してもらったのが「水車生そば」というお店だった。


メニューを親戚が指差して言うには、「蕎麦はもちろん美味しいけど、この“鳥中華”がすごく美味しいんだよー」とのこと。ちなみに、現実にはすべて山形弁である。せっかくここまで来たし、と、蕎麦と鳥中華を両方頼んでしばし待つ。先に運ばれてきた鳥中華、丼には天かすと海苔、ネギにセリが浮かび、見た目は間違って温かい蕎麦を注文したかのよう。しかし、箸がスープの中から掬いだすのはれっきとした中華麺である。ぷりっとした弾力のある食感がたまらない! スープは深いコクを感じる和風だし。
あっさりしているが、あとをひく。それにしても美味しいのが鶏肉。柔らかな歯ごたえのあとにじっくりと旨みが染み出してくる。なんなんだ……このうまさ!

よく、お蕎麦屋さんのカレーは、和風だしがきいていて旨いと言われるが、あれのラーメン版と言えば最も分かりやすいかもしれない。代々受け継がれてきた蕎麦処自慢のだしとラーメンの奇跡的な融合。最近のインパクト重視のラーメン業界に食傷気味で、シンプルで味わい深いラーメンに行き着いた方々にはぜひオススメしたい一杯である。


感動が忘れられず、日を改めて「水車生そば」の六代目店主・矢萩茂徳にお話を伺った。

――鳥中華、ありそうでなかった旨さに驚いてしまったのですが、そもそもなぜこのような珍しいメニューが生まれたのでしょうか

「もともとは当店従業員が賄いとして食べていたものだったんです。それを近所の温泉街で働く給仕さんが聞きつけまして、その方はお蕎麦が苦手だったもので、裏メニューとして出していたものだったんです。それが徐々に広まっていって人気メニューになったんです」

――鳥中華を召し上がったお客さんからはどんな感想がありますか?

「かつおベースの和風ラーメンですので、毎日食べても飽きがこなくて、それでいてクセになる味だとおっしゃっていただくことが多いです。また食べに来ます! と言ってくださるお客さんが多いのでとても嬉しいです」

――なんでも「鳥中華」は山形県のご当地グルメとして、テレビ番組にも取り上げられているとか

「はい。昨年放送された番組なんですが、全国のご当地グルメを料理専門家100人が採点するというもので、6位に入賞することができ大変驚いた次第です」

――山形県内では「水車生そば」以外にもご当地グルメとして「鳥中華」を出すお店があるんですね

「そうです。
最近では山形県内だけでなく、県外にも鳥中華を出すお店があったり、先日はエースコックのカップ麺としても“B級グルメ探訪 山形鳥中華”という商品が全国発売されていました。当店としては痛し痒しなところもございますが(笑)それでも、日本の食文化に一石を投じることができたことに喜びを感じております」

――鳥中華はサイトからのお取り寄せも可能なのですね。お店で食べる鳥中華に少しでも近づける調理のコツを教えてください!

「お取り寄せの鳥中華には鶏肉やネギが入っておりませんので、ぜひ新鮮な食材を用意してトッピングしてみてください」

――「鳥中華をぜひ食べてみたい!」という読者の方に一言メッセージをください!

「当店の元祖鳥中華は三十数年の年月をかけて開発した蕎麦屋ならではの一品です。ぜひお店で、お取り寄せで召し上がってみてください!」

ああ……こうして原稿を書いてる今もあの味を思い出し、身悶えている。山形が生んだ次世代ご当地グルメ「鳥中華」、ブームになる前にぜひご賞味あれ! お取り寄せは下記のリンクからどうぞ。ちなみに、「水車生そば」の肝心のお蕎麦の方も、コシがあって香りがよくて、感動するほど美味しかったので、そちらもぜひ!
(スズキナオ)

*「水車生そば」
山形県天童市鎌田本町1丁目3-26(天童温泉)
URL:http://www3.ocn.ne.jp/~suisya/index.html