「ハウスワイフ2.0」現象って?

バリバリ働いていた妻が「仕事を辞める」と宣言

「私仕事を辞めて子育てに専念するわ。今までは忙しくて買ってきたご飯も全部手作りにする。子どもには安全なものを食べさせたいから野菜も一から育てたいの。いっそ田舎に引っ越さない?

あなたが通える範囲でも郊外にいけば小さな畑つきの家があるわよ。ジャムやピクルスの瓶詰をたくさん作って、ネットで売ればお金にもなるし、自給自足の生活なら生活費もかからないじゃない?」

と突然、同じ大学卒で、会社員で、今までバリバリ働いていた妻から宣言されたら、あなたはどうしますか?

えーっ、だって今までお前、女だって経済的な自立があって、男と同等だって言ってたよね? 結婚するときも仕事は辞めないって言ってたよね? 専業主婦なんて、軽蔑していなかった? でもって、都心のマンションだってやっと共働きで買えたのに、田舎に引っ越したい? 突然、どうしちゃったの? だいたい収入二分の一になったら、困るよー。

夫の心の声をちょっと代弁してみました。多分男性から見たら、今話題のハウスワイフ2.0現象はこんな感じなのだと思います。

でも今時の男性は優しいから、きっと受け入れてくれるでしょう。年収が半分になっても、キリキリ仕事をしていた頃は見られなかった妻の笑顔と子どもの寝顔に癒やされて、通勤2時間でも頑張る。手作りの食事は決して悪いことじゃない。自分は吉野家が恋しくなったら、内緒で外で食べればいいのだから。

さあ、あなたは、受け入れられますか?

米の「ハウスワイフ2.0」現象とは

ハウスワイフ2.0現象とはアメリカの20代30代女性の家庭回帰現象のこと。その新しい主婦像についてまとめたエミリー・マッチャー「ハウスワイフ2.0」が翻訳され話題となっています。

大学を出て知的な職業につき、男と同等に稼いでいた女性たちが、子育てを機に専業主婦になりたがる。それもただの専業主婦ではなく、キーワードは「おばあちゃんの家事」「エコ」「手作り」「自給自足」そしてブログとネットショップ。

強いられた専業主婦ではなく、会社からの選択的離脱。これを新しいフェミニズムと呼んでいます。

彼女たちは手作りの瓶詰がずらりと並ぶキッチンや、手編みレースのおくるみに包まれた赤ちゃんの寝顔、そんなステキな写真が満載のブログで発信し、多くのファンを得ています。まるで「大きな森の小さな家」のローラのよう。時にはブログから手作りのマフィンの店で大成功したり、本を出して、スターになったりする 女性たちもいます。

都会のキャリアウーマンですら、仕事の合間にこっそりのぞいては癒しをえるブログ。ITの進化で、家にこもっていても「承認欲求」も満たされ、「仲間」も得られる。手作りのものを売るネットショップのおかげで、主婦起業してプチお小遣いも稼げる。

夫に虐げられ、孤独な子育てを強いられていた昔の専業主婦とは違うというのが彼女たちの主張です。一見いいことばかりのようですが、なぜこんな現象が起きるのでしょうか?

誇りある「ホームメイカー」、その裏には……

アメリカでは女性の社会進出がはるかに日本より進んでいる。「リーン・イン」を読んでそう思っていた日本人にとっては意外だと思います。確かにFRBの議長は女性になったし、ジェンダーギャップ指数105位の日本より、はるかに男女平等は進んでいる米国。しかし、女性たちは決して満足してはいなかったんです。

アメリカの中産階級の20代30代は、「インスタントの食材で家事を放棄し、出世競争にあけくれて、あげくにストレスでいっぱいの母親世代」を反面教師として、今「おばあちゃんの時代のような丁寧な家事をする暮らし」にあこがれている。自分たちを誇りをもって「ホームメイカー」と呼んでいます。

しかし、その裏には「不況」と「アメリカの有給も育休もない職場環境」「女性が直面するガラスの天井」があります。リーマンショックの後、仕事を失った女性たち(プライドと教育に見合う職場にとどまれなかった)、「仕事や会社への絶望」を味わった女性たちが、第二の自己実現の場として家庭を選ぶことに不思議はありません。

それでは日本はどうなのか? 次回は日本の若い女性たちやVERY主婦の動きを見ていきます。

<著者プロフィール>
白河桃子(しらかわとうこ)
少子化ジャーナリスト、作家。相模女子大客員教授。経産省「女性が輝く社会のあり方委員会」委員。山田昌弘中央大学教授とともに、2008年度流行語大賞にノミネートされた「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著『婚活時代』(ディスカバー21)がある。婚活ブームのきっかけを作った。近著は、『「産む」と「働く」の教科書』(講談社)『格付けしあう女たち 女子カーストの実態』(ポプラ新書)、国立成育医療研究センター母性医療診療部不妊診療科医長の齊藤英和医師との共著で『妊活バイブル』(講談社)、『女子と就活――20代からの就・妊・婚講座』(中公新書ラクレ)。

公式ブログ : http://ameblo.jp/touko-shirakawa

ツイッター : http://twitter.com/shirakawatouko

Facebook : http://www.facebook.com/profile.php?id=100002282391578

仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座 : http://www.facebook.com/#!/goninkatsu

話題の授業が一冊になりました。女の子の親は必見です。
『「産む」と「働く」の教科書』白河桃子・齊藤英和

※写真と本文は関係ありません