先日、マンションの管理人さんと理事長さんの立ち話で、こんな気になるフレーズが耳に入った。

「ハトはあきらめるまで3年かかりますからねぇ」
「3年はガマンですよねえ」

当たり前のように語られている「ハトはあきらめるまで3年かかる」という言葉。
でも、自分はそんな話、聞いたことがない。

実はマンションでは、長期にわたって「鳩駆除」対策を行っているのだが、このたび大規模改築にあたって、新たな鳩対策を講じたところだった。
とはいえ、一朝一夕で立ち去るわけではないのだろうが、それにしても「3年かかる」とは。

そもそも出自はよくわからないものの、「鶏は三歩歩けば忘れる」とか言われることから「忘れっぽい人=トリ頭」なんて言葉もあるほど。
仮に、そんなに一瞬で忘れてしまうはずのトリでありながら、3年もあきらめないハトって、なんだか恐ろしい執着心ではないか。
実際、そういうものなの? ドバト害防除の研究などを行っている財団法人山階鳥類研究所に聞いた。


「『あきらめるまで3年かかる』といった言葉は、聞いたことないですねぇ……。一般的に言われていることというよりも、経験的に得られたことでは?」
としながらも、こんな話をしてくれた。
「ただ、これまでの研究の中で、ドバトには特に嫌いな音や色はないということがわかっています」

特定の嫌いなものがないため、ドバト対策としては、今のところ、「網で防いでしまう」「とまれないよう、剣山のようなものをたてる」「エサを置いておかない」などしかないのだそうだ。
「たとえば、いくら脅かしても、どこかハトおじさんのような人がハトにエサをあげたりしていると、何十羽も集まってしまうことになります。おいしいものがあって、安全なところであれば、いつまでたってもよそにいかないわけです」

爆竹を鳴らす、音や光、色で脅かすなどしても、その一方でエサが絶たれないのなら、意味はないということ。
「たとえば、ゴキブリホイホイをいっぱい置いておいても、生ゴミが家にたくさんあったら、ゴキブリはいつまでもいなくなりません。
ハトも、ゴキブリと同じで、辛抱強くエサを絶たないと根本的な解決にならない。かなり辛抱強さが必要です。それが防除の難しさではあります」

新たな防除策をしたはずの我がマンションでも、さっそくハトフンが窓に……。
また、向かいのマンションでは、なんとなく落ち着かない様子で、ご丁寧に1階ずつベランダをおりて、居心地の良い場所を探しているハトの様子が見られた。
「あきらめるまで3年かかる」のは、おそらく鳩特有の執念深さとか頭の良さとかではなく、多少の脅しでは全くこたえないということ。

ある意味、瞬間的な恐怖などはすぐ忘れてしまう「トリ頭」ゆえの手ごわさかもしれません。

(田幸和歌子)