欧州で新天地を求めた選手たちのプレーには注目したいと語るセルジオ越後氏

欧州のサッカーシーズンが始まった。今オフは例年以上に日本代表の主力クラスの移籍が相次いだ。各選手とも当然、11月のカタールW杯を意識していると思うけど、移籍がプラスになるのか、ならないのか。

また、先日のE-1東アジア選手権、国内組で構成された日本代表は韓国を破って優勝したけど、相手が物足りなかったし、欧州組との序列を覆すようなアピールをできた選手は見当たらなかった。その意味でもやはり欧州で新天地を求めた選手たちのプレーには注目したい。

いつも言っていることだけど、日本代表の守備は安定していると思う。6月のブラジル戦も1失点でしのいだし、どこが相手でも、誰が出ても、ある程度の計算は立つ。

移籍組の吉田(サンプドリア→シャルケ)、板倉(シャルケ→ボルシアMG)、守田(サンタ・クララ→スポルティング・リスボン)に関しても、そんなに心配はしていない。

問題は攻撃陣だ。W杯アジア最終予選や今年6月の強化試合4連戦ではチームとしての攻撃の形が見えず、伊東や三笘の個人技頼みだった。それだけに個々の選手のレベルアップは必須。

個人的に期待しているのは南野(リヴァプール→モナコ)と三笘(ユニオン・サン=ジロワーズ→ブライトン)だね。カタールW杯のスタメン候補のふたりが新天地で結果を出して、好調なまま大会を迎えてくれれば心強い。

南野はリヴァプールで出場機会が少ないなりに頑張っていたけど、結局、カップ戦要員。リーグ戦での出番は増えなかった。W杯を前にコンスタントに試合に出て、調子を上げたい気持ちがあったのだろう。

移籍は前向きな選択だし、モナコはリヴァプールに比べれば格は落ちるけど、個々の選手のレベルは高いし、欧州チャンピオンズリーグ(予選)にも出られる。プレーしがいのあるチームだね。パリ・サンジェルマンとの対戦も楽しみだ。

一方の三笘はベルギーからイングランドへ行くわけだからステップアップだ。プロ入り以降の彼の成長スピードには目を見張るものがあるし、彼のドリブルがレベルの高いイングランドでどこまで通用するか。

いや、正確に言えば、彼のドリブル自体は通用すると思っている。問題は相手を抜いてからゴール、アシストをどれだけ生み出せるかだね。

同じことは久保(マジョルカ→レアル・ソシエダ)にも言える。完全移籍でレアル・マドリードの看板がなくなったわけで、今季は相手をドリブルで抜くだけでなく、数字をどれだけ残せるか。ソシエダはマジョルカよりレベルが高い。

一昨季に所属したビジャレアルではまったくインパクトを残せなかったけど、今季は同じシチュエーション。カタールW杯を占う意味ではもちろん、彼のキャリアにとっても勝負のシーズンになる。

先頃来日したパリ・サンジェルマンのイタリア代表MFヴェッラッティが、インタビューで「知っている日本人選手は?」と聞かれて「ナカタ(中田英寿)」と答えていた。本当はほかの選手も知っているのかもしれないけど、この場面で現役選手の名前が最初に出てこないのは悔しいこと。

欧州で、特に攻撃的なポジションで成功を収めるのはそれだけ難しいんだけど、ぜひ頑張っていいニュースをたくさん届けてほしい。

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