最新記事

テスラ

米中貿易摩擦が激化するなか、テスラが初の海外工場を上海に建設すると発表

2018年7月11日(水)18時22分
ジェイソン・レモン

SUVモデルXを紹介するテスラ創業者イーロン・マスク。目下の課題は生産能力の拡大だ Stephen Lam -REUTERS

<米中の関税引き上げ合戦を受けて、どこよりも早く中国での販売価格を引き上げたテスラ。このたび建設を発表した上海工場の稼働はまだ先。強気の価格戦略はペイするか>

米中間の貿易戦争が激化するなか、電気自動車大手テスラは7月10日、中国の上海に製造工場を建設することを発表した。完成した暁には、テスラにとって初のアメリカ国外の生産拠点となる。

「昨年発表したように、当社は中国市場向け製品の工場を設立するために、上海市当局と協議を重ねてきた。そして今日、電気自動車の生産拠点である『ギガファクトリー3』の建設開始に向けて協定を締結した」と、テスラの広報担当者は本誌に語った。

テスラの創業者イーロン・マスク(47歳)は、アジア有数の商業都市に第2の製造工場を立ち上げることで、生産能力の大幅拡大を見込んでいる。完成後は、中国市場向けに年50万台の生産をめざす。

現在のところ、テスラの唯一の生産拠点はカリフォルニア州にあり、年間50万台の生産を目標として掲げている。だが、2018年の年間生産台数は20万台未満に終わりそうだ。

上海の新工場建設の発表直前、テスラは米中貿易摩擦による関税の上昇に伴って、中国での自動車の販売価格を大幅に引き上げた。

トランプ政権は7月6日、知的財産権の侵害を理由に、中国からの輸入品に対する関税を引き上げた。その報復措置として、中国もただちにアメリカ製自動車の輸入関税を40%に引き上げた。

 中国の外資規制緩和も追い風に

米中貿易摩擦の影響を受けて中国国内でいち早く値上げに踏み切ったのが、テスラだった。「モデルX」と「モデルS」の販売価格は約20%上がった。

アメリカ国内なら7万4500ドルで買えるテスラの最も安い車種が、中国ではなんと12万8779ドル。約70%も高くなった。

新工場での現地生産が始まれば、中国の消費者にも手頃な価格で販売できるようになるという声もある。だが上海工場での生産が軌道に乗るのは、かなり先の話だ。

「近い将来、当局の認可や許可をすべて取得した後に着工を開始する。そこから、車の生産を開始するまでにおよそ2年、生産能力を完全に発揮できるまでには、さらに2〜3年かかるだろう」と、テスラの広報担当は今後の見通しを明らかにした。

ブルームバーグによれば、中国での生産開始までに数年かかるものの、工場建設の発表直後、テスラの株価は3%近く急上昇した。

今年4月、中国政府が外国企業の所有権に対する規制を緩和した。これまで外国企業が中国で起業するには、中国企業との合弁会社を設立するしか方法はなく、出資比率は50%までに制限されていた。だが今回の規制緩和のおかげで、テスラは上海の新たな製造拠点を100%所有することができる。

テスラはまた、年末までに欧州でも新工場を建設する計画を明らかにすると発表した。中国と同様に、ヨーロッパはトランプの貿易政策の標的になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中韓首脳会合、中国首相「新たな始まり」 貿易など

ビジネス

景気「足踏みも緩やかに回復」で据え置き、生産など上

ビジネス

フランス、EU資本市場の統合推進 新興企業の資金調

ビジネス

3月改定景気動向指数、一致指数は前月比+2.1ポイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 9

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 10

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中