「中古車の状態」を見極めるには、まずは「それを売っているお店の状態」を確認するのが重要だと異色の中古車ジャーナリスト・伊達軍曹は言います。そのうえで、実際に中古車の状態を確認する際には「内装のコンディションを重視せよ」と提言しているのですが、なぜ内装なのでしょうか? その理由を深堀りしてみましょう。

  • マツダのロードスター

    内装は中古車の履歴書?

「内装はひどいけど機関部分は良好」という中古車ってある?

前回の当欄で「中古車のコンディションの見極め方」について述べた。軽くおさらいすると、その内容はおおむね下記のとおりであった。

その1:気になる中古車があったら、まずはクルマ自体ではなく、それを売っている「店」と「人」のクオリティを、公式サイトなどを通じて可能な限り把握する。

その2:次に、販売店に電子メールではなく「電話」で問い合わせ、相手方の肉声のトーンや対応ぶりなどから、そのお店全体のおおむねの力量を推し量る。

その3:上記2つのチェックで「まあ悪くないかも?」と思えたら、予約のうえ販売店に行き、現車と対面してみる。

その4:その際、まずは細部でなく「全体」を見るよう心がけ、全体を見た際の第一印象を脳内に保存する。

その5:そのうえで、巷でよく言われている「中古車を買うときはココをチェック!」みたいな各種の点検を粛々と行い、最終判断をする。

まさに上記の5行程こそが、筆者が10年前に創始した「伊達心眼流中古車選術」のアウトラインであり、基本的には、これに付け加えるものは特にない。

とはいえ上記の「その5」については、もう少し具体的な内容を補足したほうが良いようにも思える。

一連のこまごまとした中古車チェック法については、「中古車 チェック法」というワードで検索すれば0.57秒で1億2,100万件もヒットするので、さまざまなサイトの内容を参照されたい。どれも、それなりに役立つはずだ。

そのうえで「伊達心眼流的に重視している部分」をご説明したいわけだが、それはまず第一に「内装のコンディション」である。

  • クルマの内装

    伊達心眼流の中古車選びでは、内装のコンディションを重視する

内装の状態がよろしくない中古車は、たとえ外装がビカビカだったとしても、99.9%の確率で「全体としてはロクなもんじゃない」と推定するのが当流派の考え方だ。

なぜ、内装の状態がよろしくない中古車はロクなもんじゃないのか? という問いに対しては、「そもそもなぜ、その中古車の内装はボロくなったのでしょうか?」と問い返すことで、問題の筋道が見えてくる。

内装をキレイに戻すのはけっこう大変

中古車の、というかクルマの内装がボロくなる理由は、細かく数えれば星の数ほどになるわけだが、結局のところは以下の一言に集約される。

「愛がない」

そうなのだ。クルマに対しての愛、あるいは美しい状態を維持している己に対する自己愛など、とにかく何らかの「愛」がないと、クルマの内装というのは時間を追うごとにボロくなる。場合によってはゴミ屋敷にもなる。

だが逆に愛があれば、いくら年式的に古くなろうとも、まるで常に掃除が行き届いている古民家の室内のごとき風合いになるものなのだ。

ひとつ具体例を申し上げよう。

筆者は愛ゆえに、ドアポケット内やシフトレバー前方にある虚無的スペースなどに、アイフォーンやクルマのキーを裸で置くことは絶対にない。なぜならば、樹脂パーツの上に硬い物体を裸で置くと、走行中の振動で樹脂パーツに無残な小キズが生じてしまうからだ。

それを防止するため筆者は、車内の樹脂パネル上にアイフォーンを置く必要がある場合は必ず、ハンケチにくるむようにしている。普段使っているハンケチではなく「アイフォーン専用ハンケチ」を車内に常備しているのだ。

これに関しては、クルマというモノに対する愛と「キレイなクルマに乗ってるオレが好き」という自己愛の混交かもしれないが、いずれにせよ「愛のハンカチーフ」である。

そして一方、クルマというモノに対する愛や自己愛がない、あるいは欠ける者は、スマホやクルマのキーなどを、何の考えもなくドアポケットやAT前の虚無空間、あるいは純正ドリンクホルダー内などに平気で置く。

その行為によって小キズだらけとなった「樹脂パネルちゃん」たちを、わたしは中古車専門誌の記者時代、それこそ星の数ほど見てきた。で、そういった中古車は99.9%ぐらいの確率で、撮影などのため走らせてみても「なんだかなぁ……」みたいなコンディションだったのだ。要するに「一事が万事」ということである。

  • クルマの内装

    シフトレバーの周辺に「モノを置け」と言わんばかりの虚無的スペースをよくみかけるが、硬いモノを裸で置いてしまうのは考えものだ

ここで当然ながら発生する疑問は、「でもそれって、内装だけじゃなくて外装にも言える話なんじゃないの?」ということだろう。

それはもうそのとおりで、愛がなければ(そして運転技量も低ければ)外装も、歳月とともにボロくなる。

しかし、クルマの外装というのはけっこう「直せる」ものなのだ。決して爆安ではないが、中古車販売店であればまあまあリーズナブルな業販価格で、そこそこキレイに直すことができる。

そして内装も同様に「直す」ことは可能なのだが、それには一般的に、外装を直すとき以上のコストがかかる。さらに販売店からすると、「内装の修復はコストを読みにくい」という問題もある。そのため、内装のボロさは中古車においては放置されるか、あるいは「ある程度の補修」だけでお茶を濁されるケースが多いのだ。

以上の理由により、中古車の内装コンディションは外装と比べればごまかしが利きにくく、そうであるがゆえに、内装は「その中古車の履歴書」になり得る。

これが、当流派が中古車の状態チェックにおいて「内装」を重視している理由である。