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2008年10月15日15:07

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切ないもの好きの僕たち

先日、日本語補習校のバザーで日本のテレビドラマのビデオを入手した。

今までテレビドラマとは全く縁のなかった私であるが、結構はまってしまって家族と一緒に最後まで見てしまった。

「あいのうた」というドラマで、毎回ぐいぐいと涙腺を刺激してくるお話である。

涙もこれだけ流すと安っぽい感じもするけど、出てくるものは仕方がない。

お涙頂戴の仕掛けに簡単にのせられる私がいけないのであるが、ドラマ自体にちょっと涙無しには語れない重いテーマが隠されてもいる。

誰にも愛されずに育った女の子が人生に失望して入水自殺を図るのだけど、死にきれずに生き残ってしまう。

過去を捨てたいがために記憶喪失を装うが、ひょんなことで男やもめで子持ちの刑事片岡さんのうちに「愛ちゃん」として居候することになる。

最初は人生にシニカルだった彼女が次第に片岡家に溶け込んで、愛されることを知り、愛することを学び、笑顔が素敵な女の子になっていくという心温まるお話なのであるが、実は片岡さんは余命幾ばくもない身という悲劇のプロットが隠されている。

あまり暗くならないようにコメディタッチで描かれているのであるが、逃れられない死と向き合っての生きる幸せみたいな重いテーマがのしかかっていて、全編通じてちょっと切ない。

喜劇あり悲劇ありロマンスありなのだけど、全体としてはそのどれでもないちょっと複雑なドラマではある。カタルシスもなくて、見た後も切なさだけが残る。

残された時間を明るく生きようとする片岡さんがヒーローといえばヒーローなのだが、彼にも越えられない壁があって最後は悲劇の主人公になってしまう。

他方で愛ちゃんは過去を克服して成長し、最後は片岡さんを支えるヒロインになるのであるが、生きる幸せを教えてくれた人を死から救うことができないというとても切ない状況にある。

辛い現実にへこみそうなときでも笑っていれば力が湧くよ、というポジティブなメッセージが込められていて、エンディングも希望を持たせるような形になっているのだけど、全編見た後の感想は正直言って人生のはかなさが余計に身にしみるという感じだ。

作り手としては、生きる望みを失っている人が多いように見える日本人に、「生きる幸せというのは人に愛され人を愛するという日常の中にあるのだから」というメッセージを送りたいようであるけども、何やら逆効果なような気もしなくもない。

究極的には悲劇である我々の存在を喜劇とロマンスで救おうとしていると言えなくもないけど、救いきれていないような気がする。

逃れられない死を真っ向から見つめずに最後まで笑って暮らすくらいしかできない人間の弱さみたいなものをひしひしと感じてしまった。

日本のドラマに詳しい訳ではないのだけど、映画やマンガ、果ては民話なんかにも悲劇でも喜劇でもロマンスでも風刺でもない妙に切ない話があって、どういう風に受け取っていいのかわからなかったりすることがある。

このドラマも、ちょっと仏教的な悟りみたいなものがないと、ただただやるせない気持ちになってしまうような気がする。

こんな切ないお話を美しいと思う僕たちも相当複雑。
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