多重人格(乖離性同一性障害)のあの人については、こう考えている。
=
人格分離の多くは、抑圧などに対する自己防衛の一形態と考えることが出来ます。要するに、自己の一部を記憶とともに一時的に封じてしまうことで、自己の崩壊を防ぐわけです。多重人格が、厳格な家庭で育ち保護者から存在を否定され続けた子供によく見られるのは、そういうわけだと思います。
ただ、この防衛方法に慣れてしまうと、さまざまな不満を抱くたびに分離してしまうようになります。これが何十もの人格が発生するメカニズムなわけです。
人格統合するには、それぞれの人格が少しずつコミュニケーション耐性を身につけていかねばなりません。しかし、それはとても難しいことです。なぜならば、その耐性をつけていく為の試練から他の人格を守ろうとする人格が表に出できてしまうからです。
抑圧から開放された環境(入院を含む)においては、数十に分離した人格は基本的な形のいくつかまで統合することができるでしょう。それでも、みんなで守られた人格は残ります。いわゆる「姫」です。
それぞれの人格が記憶を完全に共用できるだけコミュニケーション耐性を身につけてくれれば、記憶の完全共有をすることができます。このレベル(非乖離状態)になれば社会適応も十分に可能となります。なぜならば、共用の名前を名乗ることで「多重性格(性格の交代が制御できない状態。いわゆる「いきなりキレる」もこの一種)の振りをすることができるようになるからです。
厳格な環境にいる子供にとっては、この状態が最善の状態であることもあります。できれば、性格の交代を制御できるレベルまで強くなって欲しいのですが、それはなかなかに難しいみたいです。
=
ところで、全ての人格がコミュニケーション耐性をしっかりと身につけておかないと、つまり不満から逃避して防衛し続けていると、社会で自活するためのスキルを身につける機会がなくなります。特に「姫」は何もできない無能な人形になりやすいです。
極端な話をすれば、厳格な環境から逃げ出したときに、他の人格を封じ新しい人格を作ってでも望まぬ職業に身を落とさねばならなくなるのですよ。
他の人格(例えば「姫」)がそれを知った瞬間に人格崩壊し「姫」を守ろうとしていた人格たちがそれに連鎖することは十分に予想できるでしょう。自殺することもありえます。
私が「無理に統合する必要はないけど、自活するための技能だけはしっかりと学んでおいて欲しい」と全ての人格に語りかけているのは、こういうわけなのです。
ログインしてコメントを確認・投稿する