はい、僕は“通俗的娯楽”という言葉を貶す意味で使いました。具体的には“３か月経てば忘れている(＝それでもいい)”というドラマです。テレビという媒体は基本的にそういう存在だと僕は認識しています。そういう存在でも、時折心に響く作品はある。今回は、心に響くわけではないけれど時代背景というものを、高校で習う“歴史総合”という教科のように考えて勉強すればいいのだと思いました。
なんでも“歴史総合”という学科は最近設けられたそうで、僕はそれについてNHKのＥテレの同名番組で知りました。ＭＣが秋元才加なので、できるだけ毎回見ています。←毎週決まった放送時間かどうかも知らないので、ＥＰＧを“秋元才加”で検索して見つかったら録画するという程度の“熱心さ”ですが(笑)。
この「ベルグレービア 秘密だらけの邸宅街」は、イギリスで2020年３月にミニ・シリーズとして放送されたようです。僕はスター・チャンネルで一挙放送したので、全６話ならＨＤＤを圧迫するわけではないし、と判断して録画しました。そしたらナポレオン時代から始まり、その26年後へと話が飛ぶ内容でした。
つまり、ワーテルローの戦いの前夜にベルギーでイギリス貴族たちの舞踏会が開かれ、新興商人(ブルジョアジーです)も貴族たちの社交界に参加していくという展開です。ロンドンで集合住宅などを作っているトレンチャード家の娘ソフィア(エミリー・リード)が、舞踏会でブロッケンハースト伯爵(トム・ウィルキンソン)の一人息子エドムンドに会い、意気投合します。
かくてエドムンドはワーテルロー出陣の前に、神父を用意してソフィアと内密の結婚式を執り行う。ソフィアは出陣するエドムンドを見送るのですが、その隣にいる将校仲間が昨夜の神父だったことを知ります。“謀られた”と感じたソフィアですが、すでに彼女は身ごもっていた、という展開。
でもって、エドムンドはワーテルローで戦死し、出産のせいでソフィアも命を落とす。家名を守ろうとしたトレンチャード夫妻は、赤子を知人に預けて…という展開でした。それから、ひと悶着蓋悶着あって(５話だから５悶着？)第６話の「大団円」へとつながります。ええんじゃないですか？ ４時間半で一件(６件？)落着ですし。
先に残念だった部分を言いますと、若いソフィアがエドムンドと結ばれるのはいいけど、“そして26年後”と話が飛ぶわけです。26年前に娘が妙齢だった連中たちが話の中心ですから、僕が望むアイ・キャンデーが少ない。「ダウントン・アビー」みたいにエリザベス・マクガバンが懐妊するというわけには行きません(笑)。
何人か妙齢の美女も登場するのですが、なんか帯に短し襷にも用いたくなし、てな感じでした。そして僕が顔と名前がピンとくる女優が、召使いのブロナー・ギャラガーだけなんです。こんな使用人置いといたら何が起こるか、彼女の映画歴を見れば明瞭でしょ。絶対に秘密を教えたらアカンで。
ところがぎっちょん、若い娘の母親として登場したレディー・テンプルモアの顔に見覚えが。調べたらなんと、タラ・フィッツジェラルドではありませんか！ スカーレット・オハラが熱愛するのは故郷のタラ。そして僕が「ヒア・マイ・ソング」「泉のセイレーン」で夢中になったのがタラ・フィッツジェラルド様なのです(写真３)。「ウェールズの山」といえばおわかりでしょう。←知らん人は、ちょっとあっちへ行っててね。
こういうミニ・シリーズは、思い出深い俳優さんたちを“総ざらえ”するときがあるので油断は禁物ですね。とはいえ、初めから知っていてタラさん(タラちゃんじゃサザエさんでしょ)目当てに４時間半はキツいけどね。ま、今回の場合は、思わぬ収穫ということで。
そしてロンドンの町の近代化のために、集合住宅建築が行われたという展開も、僕にはタイミングのいい展開でした。ニューヨークの都市計画に関してジェイン・ジェイコブスのドキュメンタリーを見直したあとですし、「ハワーズ・エンド」も集合住宅に改築するからとロンドンの住まいを追われる話でしたから。
つまり、映画という題材は歴史総合にも似たトータルな視点で眺めると、また格別の味わいがあります。そこに懐かしいお姿との再会があれば、ますます味わいが深まるということ。だてに65年も映画を見続けてきたわけではないと、いささかふんぞり返りたくなる気持ちを、なんとか満足させてくれるミニ・シリーズでした。←とはいえ“そこそこ”ですけどね。
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