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2022年07月03日12:15

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7/3(日)ロシア・ウクライナ危機2021−2022 第4回 3月下旬から6月中旬 マリウポリの陥落 ブチャの惨劇

6月27日、ロシアの外貨建て国債の利払いの猶予期限が過ぎたことにより、デフォルト状態に陥ったことがわかった。外貨建て国債のデフォルトは、ソヴィエトの産みの親レーニン時代の1918年以来、104年振りとなった。
 28日付けで、新たにスウェーデンとフィンランドが、NATOに加盟する見通しが立った。難色を示していたトルコが、スウェーデンのアンデション首相とフィンランドのニーニスト大統領と覚書を交わしたのである。両国共、トルコがテロ組織に指定したクルド人から成る「クルディスタン労働者党」の支援を取りやめることで、トルコと合意に達した。新たにロシア側は、非人道的な兵器クラスター爆弾を使用している事実も確認されている。
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=7019440

今回は、ロシアーウクライナ危機2021−2022の4回目である。前3回目から3ヶ月ぶりの更新となった。戦争の方は、両国話し合いの場さえ失い、ますます混迷を深めている。

 前回の関連日記 3月17日付け ベラルーシの政治体制
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981842802&owner_id=32437106


停戦協議は、オンラインを含め4度目となる3月29日に、トルコのイスタンブールを最後に、行われていない。両国の代表団の間で、妥協点を見出せた。ロシア側は、これまでウクライナ側に非武装を要求していたものの、今回の協議では求めなかった。軍事的中立化を求めることにより、ウクライナ側と折り合いをつけた。ゼレンスキー大統領も中立を受け入れる考えを示している。クリミアの主権問題と東部の親ロ派実行支配地域の帰属権は一端棚上げになった。4月以降、キーウ州近郊でロシア軍による民間人無差別殺害や略奪行為などが発覚し、状況が変わった。ウクライナ側は、国際裁判所に提訴し、ロシアとの和解に向けて遠のいた。4月から6月中旬までの動きを見ていく。

 目次
・第1章 4月14日付けウクライナ情勢
・第2章 戦争犯罪を追及
・第3章 ロシア軍の狙いは東部の要衝「マリウポリ」
・第4章 戦況は重大局面 マリウポリ陥落、ハルキウをウクライナ軍が奪還
・第5章 EUの対ロ政策 足並みを乱すハンガリー


第1章 4月14日付けウクライナ情勢

 2月24日(木)に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻は、激しさをましている
。アメリカのバイデン政権は4月13日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、ヘリコプター11機の供与など、計8億ドル(約1千億円)の新たな軍事支援を決めた。兵力で劣るウクライナ軍は、NATOから武器供与を受けて、首都近郊では善戦し、ロシア軍を撤退に追い込んだ。3月22日にマカリウから始まり、3月31日ブチャも奪還した。ブチャでは、3月12日に激しい攻防戦の中ロシア軍が支配したものの、16日以降ウクライナ軍の激しい反撃にあった。同月31日には、東部地域での戦力を集中的に投入するため、ロシア軍はブチャを含め、首都近郊から撤退したのである。

 写真=キーウ周辺地図 掲載元 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/photo/AS20220419002581.html
 フォト

3月下旬時点でロシア軍は、各部隊の指揮をとる指揮官20人のうち、5人を失っているとみられている。英国の国防省によると、ロシア軍は、古くから前線へ司令官が出て、兵隊たちに命じる方法をとっていた。3年前に、指揮官を危険にさらす行為から軍の間で見直しが始まった。今もなお、かつての伝統を受け継ぎ、将軍自ら前線に赴く場合があるという。ロシア軍の兵士は、侵攻当初から、士気の低さが指摘され、今回の軍事作戦の意義を見出せていない。西欧諸国が提供した対戦車部隊におびえ兵士が逃げだすと、指揮をとる将軍は危険にさらされる。軍の統率力の無さが、将軍を失う結果を招いた。米国と英国から成る共同通信傍受チームが、ウクライナ軍に情報を流した結果、狙撃されたのである。

 詳細JlJl.com 3月22日付け https://www.jiji.com/jc/article?k=2022032200176&g=int

敵軍を一掃したことを受けて、新たに民間人の遺体から、虐殺された事態が明らかになったのである。4月4日にゼレンスキー大統領自身が、屈強な同国の軍人に守られながら、現地を視察し、ロシア軍による無差別殺害を訴えた。国際社会に対して、強力な支援を呼びかけた。

     第2章 戦争犯罪を追及

 4月3日にウクライナのベネディクトワ検事総長は、ロシア軍による犯罪行為を立証するため、遺体の身元を割り出し、検視をしたと発表した。キーフ州内で410の遺体のうち140人の死因が特定できたという。検視を妨害するかのようにロシア軍が、地中に埋めた遺体に地雷を仕掛けていた事実も明るみに出た。報告を受けて、クレバ外相は国際刑事裁判所に提訴する考えを表明する。

 詳細 4月4日 東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/169773

 早速4月13日に、国際刑事裁判所のカーン主任検察官が、大量虐殺の被害にあったとされるブチャの町を訪れた。首都キーウにも足を運び、ベネティクトワ検事総長と会談した。ロシア軍による特定民族の殺戮行為「ジェノサイト」を認定するため、捜査をすると、誓った。新たに法医学者を派遣する予定である。

 写真=ベネディクトワ検事総長とICCカーン主任検察官 掲載元 Nippon.com https://www.nippon.com/ja/news/fnn20220524364328/?cx_recs_click=true
 フォト

 戦争犯罪で検挙するには、いくつ物の障害がある。殺害された市民が、文民でなければならない。遺体から武装している証拠がでれば、被告側のロシア軍から正当防衛を主張され、裁判官も認めざるをえない。

 また、組織性が問われる。ロシアの政府、または軍部なりが、現地の戦闘員に命令していた事実を明らかにしなければならない。内部告発者がでれば、事態を早く解決することができる。

 虐殺の首謀者は、ロシア連邦のチェチェン共和国第3代首長ラムザン・カディロフ率いる第64自動車化狙撃旅団と指摘されている。2004年5月9日に、チェチェン独立派から暗殺された第2代首長アフマド・カディロフの次男である彼は、ロシア連邦のプーチン大統領に忠誠を誓う。
2014年のロシア連邦のクリミア自治共和国併合による東部紛争と共に、2015年のシリア内戦でも、プーチン大統領の命令によって投入された。民間人虐殺を含め、国際法違反と弾劾された。

 ウクライナ時間の4月30日、ブチャでの虐殺行為を認めたロシア兵10名の追跡捜査が開始された。以下 BBC NEWS 2022年5月1日付けの記事から引用する。
 
https://www.bbc.com/japanese/61288652

          <引用文>

 ウクライナ国防省は兵士らの写真を公開し、「卑劣な10人」と呼んだ。検察当局によると、この10人は「計画殺人」の容疑で捜査されている。また、罪のない一般市民を人質に取り、殴打し、自宅を略奪した疑いも出ている。

ウクライナのイリナ・ウェネディクトワ検事総長は4月28日、facebookにて、情報提供も呼びかけている。

ロシア政府は、戦争開始時に1カ月以上、第64自動車化狙撃旅団の占領下にあったブチャで、犯罪は起きていないと、ウクライナ側の主張を否定している。

ウラジーミル・プーチン大統領は4月18日、帰国した同旅団を「大勢が英雄的行為と武勇、忍耐力と勇気を示した」とたたえ、「親衛隊」の名誉称号を与えている。

しかし、同旅団がブチャを占領した間に、数百人が殺された。解放後には教会の敷地内の集団埋葬の跡が発見され、倒れたままの状態で通りに放置された複数の遺体もあった。捜査当局は数千件の戦争犯罪を記録している。

生き残った住民の1人、ウィタリ・ジウォロウスキーさんはAFP通信の取材に、占領下で聞いた悲鳴について語った。

「希望はありませんでした。私たちは寒さに震えるのではなく、ロシア人が捕らえた人たちに何をしているのか、叫び声から察して震えていました」

容疑者はいずれ裁判にかけられるのか? 

スウェーデンの「ディアコニア国際人道法センター」のマネージャー、スティーヴン・ウィルキンソン氏は、容疑者らがロシアにいる場合は起訴に成功する可能性はかなり低いと指摘する。

しかし第64自動車化狙撃旅団は現在、ウクライナに戻り、ドンバス地方の戦闘の最前線になっているイジュームへ東進している。報道によると、同旅団は大きな損失を被ったという。

もしこの10人がまだ旅団に所属しており、生きていれば、発見されて裁判にかけられる可能性はゼロではない。

ウクライナ当局は実際、2014年に東部で捕らえたロシア兵2人を「テロ行為」の罪で起訴することに成功している。捕虜交換でロシアに引き渡されたとはいえ、起訴には大きな意義があった。

戦争犯罪の疑いのある容疑者を拘束すれば、ウクライナ国内で起訴するのが最善だと、ウィルキンソン氏は付け加える。

また、容疑者らが指揮官ではなく「歩兵」であることも、起訴を容易にする可能性がある。ただしこれは、「指揮官の刑事責任を追及する必要性を排除するものではない」という。

一方でウィルキンソン氏は、正義を求めるウクライナの戦いには懸念要素もあると話す。特に、写真がインターネットで拡散される様子だ。

「たとえ強力な証拠があるとわかっていても、有罪が確定するまでは推定無実だと法律で定められている。自由で公正な裁判はどうなるだろうか?  ブチャの事件は大勢の感情を大きく動かした。そのため、(裁判の自由や公正さが)根本的に損なわれているわけではないが、危険にさらされていると言えるだろう」

また、ウクライナ当局が以前公開した同旅団の名簿には、すでに除隊していたタジキスタン出身者の名前が多数含まれていた可能性があることが明らかにされた。

ラジオ・リバティー(ラジオ自由ヨーロッパ)のタジキスタン語サービス「オゾディ」は、「旅団に所属するタジキスタン人が何人、ウクライナにいたかは不明だが、名簿に名前があった8人のタジキスタン人とその親族は、自分はそこにいなかったと主張している」と伝えた。

このタジキスタン人たちの名前はいずれも、木曜日に発表された容疑者リストと一致しない。
                                <終>
       第3章 ロシア軍の狙いは東部の要衝「マリウポリ」

ロシア軍は3月末時点で、一端占領下に置いた首都近郊にて、激しい反撃にあい、一端撤退した。

 4月11日時点で、東部攻略に向けた指揮官に新たに1961年産まれのドボロニコフ将軍が就任したとみられている。チェチェン共和国から派遣されたカディロフ部隊と共に、シリアでの虐殺疑惑がつきまという。

 空から無差別に爆弾を投下すると共に、ミサイルを撃ち込み、民間人の避難場である病院や劇場も被害にあった。安心して病院での治療を受けられず、傷病人は地下シェルターで応急処置を受けている。マリウポリには、地元軍と有志から成るアゾフ連隊の要衝地である。侵攻前人口40万人の湾岸都市は、両軍の合意に基づき、一般市民が避難できる人道回廊が設置された。安全性に疑問が付きまとい、町から離れようとしない市民も後をたたない。4月20日時点で10万人が残されているという。振り返ると、3月16日に、幼い子供や高齢者を含め1000人が避難する劇場が爆破された。敷地内には、大きく「子供」と書いた文字が書かれていたにも関わらず、無視されたのである。被害を受けた翌日130人が救出されたものの、瓦礫の中に閉じ込められた避難民も後をたたない。3月25日の時点で、劇場の避難民300人が死亡したことが明らかにされた。同月9日には、産婦人科も爆撃を受けて、子供一人を含め、3名の命が失われている。

 2014年に一方的に併合したクリミア半島から、ウクライナ本土南部のヘルソンを経て、東部ドネツク州とルガンスク州まで地続きのルートを確保する狙いがある。ウクライナ政府を揺さぶるため、ロシア軍はあらゆる手段を講じる。一つは、本土南部地域の体制転換をもくろみ、メリトポリ州のイワン・フェドロフ市長を誘拐したのである。はじめは失踪事件と報じられていた。市長代理の座に、親ロシア派の議員が着いていたという。フェドロフ市長の身元が、ロシア軍側にあることがわかると、ウクライナ側は交渉を呼びかけた。

写真=フェドロフ市長 掲載元同市のサイトから
フォト

3月14日に1回目の交渉ではすぐに決裂する。16日に2回目の交渉により、ウクライナ側がロシア軍6人の捕虜との交換を求めた。ロシア側が応じたことにより、市長は解放された。市長本人に怪我はなかったといえ、隔離された部屋の隣で、拷問によるウクライナ人の叫び声を聞いたと訴えた。市長が連れ去られたのは3月11日、公務中に突如背後から袋をかぶせられ、力ずくで体を捕まれ、視界を塞がれたまま、連れて行かれたという。ウクライナ軍側は、市長代理の親ロシア派の議員について、深く追求する姿勢を示している。3月30日時点で原発のあるザポリージャ州内で、行政関係者58名が拘束され、うち20名が解放された事実が明るみに出た。拉致されたのは市長も含まれている。

 詳細 UKRINFORM 2022年3月30日付け https://www.ukrinform.jp/rubric-ato/3443758-nan-buzaporijja-zhouzhou-jianderoshia-junni-ju-shusareta-ren-wuming-neimingga-jie-fang-jimi.html

 ロシア軍の猛攻にさらされながら、果敢に立ち向かうアゾフ連隊の任務は、黒海沿岸の警備である。ロシア側はクリミア半島奪還を掲げていると、一方的に決め付けている。

 ロシア国防省は4月19日に、マリウポリの地下製鉄所に立てこもるウクライナ兵にたいして、降伏を呼びかけた。命の保障はもちろん、傷の手当もするという。期限は4月20日の午後2時である。4月17日にも一度目の通告があった。400人程の兵士が、徹底抗戦したことにより、空からロシア軍が再度攻撃した。

 2度目の降伏にも応じず、さらなる戦闘激化が危惧された。ロシア軍は態度を軟化させ、さらに降伏期限を伸ばすことになった。新たに両軍合意の下で、人道回廊が設置された。向う先は、ドネツク州内の親ロシア派が実効支配する地域だった。地下シェルターで太陽も浴びずに暮らしている市民が、1000人に達しているとみられている。

 Yahoo 4月20日付 https://news.yahoo.co.jp/articles/84c86ce761d2cfa65271184d8f002d5769079f00

 ウクライナの停戦協議の主要メンバーポドリャク大統領府顧問は、ロシア軍が「地下貫通弾」を使っていると非難していた。

 ロシアのプーチン大統領は4月20日に、ショイグ国防省と会談し、無意味な攻撃を控えるように呼びかけると共に、封鎖を命じた。ハエ一匹抜け出さぬように、警備の手を緩めるな、と念を押し、リスクをかけずに、制圧する方針を示したのである。
 ロシア時間の5月9日、対独戦勝記念日を迎え、これまで以上に国際的にプーチン大統領の発言が注目された。首都モスクワの赤の広場でコロナ前と同じく、大々的にパレードを開催し、自身は戦争に従軍した父親の遺影を手に、通りを歩いた。式典の演説では、戦争の言葉を使わず、今回の特別軍事作戦の正当性を訴える。ウクライナ自体には一言も触れなかった。彼は戦争記念日に、軍事作戦を終了させる目標を掲げていたとみられている。さすがに、首都キーウや第2の都市ハルキウ攻略に失敗した段階では、軍事作戦の成功とはいいがたい。世論を気にして、大統領の特権である戒厳令の発令も避けた。

 第4章 戦況は重大局面 マリウポリ陥落、ハルキウをウクライナ軍が奪還

 戦勝記念日を境に、マリウポリでは新たな局面を迎える。製鉄所内の地下シェルター内に立てこもるアゾフ連隊と、ロシア軍との間で、民間人を避難する時間を作りながら、攻防が繰り広げられた。5月16日付けニュースによると、膠着状態を打開するべく、ロシア軍は、焼夷弾、または白リンを使用したと報じた。マリウポリのアンドリュシェンコ市長顧問が5月15日、「熱傷温度が2000度から2500度に達した。消し止めるのは不可能だ」と訴えたのである。

 写真=5月15日マリウポリ製鉄所、白リンで攻撃された様子 掲載元 アンドリュシェンコ市長顧問のテレグラムから
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 劣勢にたたされながら、降伏をせずに、抵抗を続けてきたアゾフ連隊だが、ロシア軍の化学兵器による攻撃で、残っていた力を奪われた。ロシア国防省によると、5月17日付けで260名の兵隊が、降伏したと発表した。投降兵は合計900名になる。傷病人は手当てを受け、収容所に移送される。

 今回のロシアの軍事作戦の目的の一つは、「ウクライナに在住するロシア人に対し、ネオナチ(アゾフ連隊)からの開放」である。

 ロシアの下院議会では18日に、アゾフ連隊を訴追する法案を審議した。既に議員の大半は、アゾフ連隊を捕虜交換の対象から外す考えで一致している。

 一方ウクライナのゼレンスキー大統領は、「英雄は生きて変えるべきだ」と同連隊を湛え、捕虜交換に向けて、交渉する意向を示した。

 アゾフ連隊の処遇については、報じられていない。アゾフ連隊が命をかけて守り抜いたことにより、ロシア軍の戦力は、一箇所に集中する結果になった。その反面、ウクライナ東部の他の都市で兵力を割くことができなくなっている。

 5月17日付けで、マリウポリが事実上陥落した中、国内の第2の都市ハルキウ近郊では、ウクライナ軍の猛攻により、郊外の町からロシア軍が追放されていた。既に5月10日時点でハルキウ州内の4つの町をロシア軍から奪還している。同月14日付で1015の村から、ロシア軍は撤退していた。

 5月29日に、戦争の傷跡が残るハルキウへ、ゼレンスキー大統領が、軍事侵攻後に初訪問した。破壊された建物は2229棟にのぼる。4月から5月にかけて、ロシア軍は後退していた。マリウポリ制圧後、散発的な攻撃を受けているものの、住民達は徐々に戻り始めている。

 詳細 BBC NEWS 5月30日付け https://www.bbc.com/japanese/61629150

 ゼレンスキー大統領は、兵士達を前に「一人一人の働きに感謝したい」と述べて、前線部隊に勲章を与えた。

 写真=5月29日にハルキウ近郊にて、兵士に勲章を与えるゼレンスキー大統領 版元ウクライナ大統領府
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 首都キーウ近郊、第2の都市ハルキウ州での戦いではウクライナ軍が優勢だった。兵力で圧倒するロシア軍は、攻撃対象都市を絞り、東部地域の制圧に全力を傾けている。ターゲットは、セベロドネツクである。6月1日付けで、セベロドネツクの8割をロシア軍が占拠した。同ルハンスク州のガイタイ知事が、ロシア軍の力に屈し、2割ほどしか残されていないことを明かしている。

 同州の一部は、2014年に親ロシア派が「ルガンスク人民共和国」の建国を宣言していた。ロシア側が2月21日に、ドネツク人民共和国と共に建国を承認し、同月24日に自国民の保護を理由に、軍事作戦を始めた経緯がある。ルガンスク州全域の制覇は、国民に向けてのアピールにもなる。
 

 劣勢のウクライナに対して、欧米諸国は武器の支援に動く。ドイツのショルツ首相は6月1日付けで、ウクライナの大都市を防衛する防空システム「IRIS-T」を供与したと発表した。続いて、アメリカのバイデン大統領は、6月2日付けで、新たにウクライナに武器を供与する意向を示した。射程距離80キロのM142高機動ロケット砲システムや弾薬が含まれる。高機動ロケット砲を使いこなすため、ウクライナ軍は3週間の軍事演習が必要になる。実践の場で活用するのは6月中旬以降になる見通しだ。

 写真=射程距離80キロのM142高機動ロケット砲 掲載元 BBC NEWS 2022年6月2日付 https://www.bbc.com/japanese/61658360
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掲載元

 ウクライナ側は、より遠方に届くHIMARSおよびM270多連装ロケットシステム(MLRS)の提供を求めていた。同武器をセベロドネツク州内で使用すると、100キロ以上先のロシア領内に届いてしまう。過度にロシアを刺激しないように、軍事支援を最小限にとどめた形だった。提供するのは4機、国土防衛に役立つとはいえ、戦況を劇的に変えるには不十分と分析されている。

 米シンクタンクの戦争研究所は6月10日、ロシア軍の攻略方法の分析結果を発表した。ウクライナ軍が後方から前線への出撃・補給ルートに使用しているとされる東部ドネツク州の幹線道路沿いを、ロシア軍が陸と空から集中的に攻撃していると分析した。隣のリシチャンスク町とを繋ぐ橋を爆破しているという。セベロドネツクへの増援を断ち切る狙いである。
怒涛の勢いで、ドネツク州の事実上の州都クラマトルスクに隣接するスラビャンスクの攻略も計画に入れているとみられている。2014年に親ロシア派武装勢力が蜂起後、ウクライナ軍が奪還した経緯がある。

 一方、ロシアのメディアは6月11日、ウクライナ侵攻で占領された南部ヘルソン州とザポロジエ州の一部で、ロシア国籍の付与が始まったと伝えた。プーチン大統領は5月下旬、南部2州の住民を対象に国籍取得を簡素化するよう命令していた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、現地時間6月13日付けで、ヘルソン州の一部の町を開放したと訴えている。

 ロシア側は、当初モルドバ領内のロシア人が一方的に建国した「沿ドニエストル共和国」と、黒海の要衝オデーサ、ヘルソン州を経由して、クリミア半島への回廊の建設を目指していた。4月13日に黒海のミサイル巡洋艦「モスクワ」が、ウクライナ軍によって撃墜され、西部への侵攻は難しくなった。

 写真 掲載元 読売オンライン 2022年5月2日付 https://www.yomiuri.co.jp/world/20220501-OYT1T50163/
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第5章 EUの対ロ政策 足並みを乱すハンガリー

 ロシア軍が東部地域に兵力を投入することにより、民間人の犠牲と共に、国土も荒廃している。欧米諸国が、ウクライナへ追加の武器支援をすることにより、ロシアとの軋轢は深まるばかりである。今回のロシア・ウクライナ危機2021−2022は、世界的に食料と燃料の高騰を招き、市民の生活苦を引き起こした。EU側は、経済制裁を強化し、5月30日に首脳会合にて、ロシア産石油の輸入を全面禁止する
措置が議題にのぼった。対してEUと共にNATO加盟国のハンガリーのオルバン首相は、プーチン大統領との関係が深いことから、ウクライナ問題に距離を置く考えをしめす。2010年から同職に就き、2022年4月の総選挙で4選を果たしている。先月ハンガリー内で1リットル辺りのガソリン代は、国内車は166円、対して国外車は255円で販売されていた。ロシアからの輸入量は58%、国内向けの電気代金を抑えることが可能になった。価格抑制策をとることにより、国民からの信任を得ている。現にEU諸国は6月2日、ロシア正教会のキリル総主教を制裁リストに加えることを検討すると、オルバン首相は反対した。制裁対象の決定には、加盟27カ国の全会一致が原則である。
 ロシアからは見返りとして、ハンガリーの首都にあるブタペスト教区のトップの座に、正教会ナンバー2のイラリオン主教を異動させた。教会合唱団や交響楽団の演奏曲なども手がけている。EU諸国へキリル総主教の個人的な特使なのか、それともウクライナ侵攻に反対したことにより、モスクワから追放をされたのか、真相はわかっていない。ハンガリーが、EU諸国の足並みを乱すことが懸念されている。

 ロシア軍から奪還した地域では、戦争責任裁判が始まっている。5月23日にウクライナの裁判所は、非武装の民間人を殺害した罪で、21歳の戦車指揮官に対して、終身刑の判決を下した。21歳の被告は、2月28日に東部のチュパキフカ村で、自転車で走行していた62歳の民間人を、背後から射殺した罪で起訴されていた。本人も罪状を認め、被害者の妻に、謝罪している。裁判では、量刑が争点となっていた。被告側の弁護士は控訴の手続きに入った。ウクライナ側は、ロシア軍による戦争犯罪を1万件以上把握し、容疑が固まり次第、身柄を確保した捕虜を起訴していく意向である。ロシア軍側は、コメントを発表していない。

 泥沼化する戦況は、長期戦の様相を呈している。
 
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