地球が滅びかけている未来。
ドクター・アヴラーナ・カーンと彼女の仲間たちは、生物の居住可能な惑星を探し出し、テラフォーミングして、知能強化ナノウイルスを施した猿をそこに住まわせて、ゆくゆくは人が移り住む時の補佐役、兼、従者として育てる計画を立て、実行寸前だった。
しかし何事にも反対勢力はいて、彼女らの宇宙船を破壊し、降下させる予定だった猿たちも全滅させる事で計画を頓挫させてしまった。
だが時の経過と共に、地表では予定されていなかった蜘蛛が知能を持ち始め、蟻も知性を持つわけではないが系統だった行動を集団でする事で生き延びる習性を発揮し、あたかも知能を持つように感じられる状況を見せた。
一方宇宙にいる人類は、カーンの計画の失敗から二千年は経った頃、衰退しかけた地球から新たな宇宙船が開拓星を求めてカーンの星にやって来た。
とても壮大な人類の宇宙史であり、同時に人類の身勝手さも感じつつ、昆虫が高度な知性を持つとどうなるかという思考実験で、人はともかく理論上とはいえ昆虫の知性の発達が、読んでいて合理的に感じられ、とても楽しめます。
人については・・・ねえ?地上のゴタゴタを宇宙に持ち出して大騒ぎしているようで、みっともないとも思えますが、対比させるためにも大事かな?と感じていました。
この物語を読みつつ、生物はどうしても種族の壁を乗り越えられないのか?1つの星に1つの知的生命しか住めないのか?と、絶望的に思いながらも、自分自身でさえ生理的嫌悪感から逃れられないのに、このギルガメッシュの人々を軽々しく非難できるのか?と、葛藤していました。
また、肌の色の違いだけで対立する人類よりも、蜘蛛たちが生き続けた方がいいのではないか、とも感じました。
実際、物語もその悲観的思考を後押しするように、下巻の結末近くまで、絶望的な判断をしていってしまう人々を描いています。
それが・・・!
まさか、そういう風に結末を持っていくとは思いませんでした(驚)
多種多様な意味で、大好きな物語となりました。
どうやら映像化も計画されてはいるようで、こういう感想を書いていて言うのも何ですが、私自身は種族の壁を超えられるのか、いまいち自信がありません。
そういう訳で、観られなかったらごめんなさい。
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