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2022年05月29日14:52

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食にかけるイタリア人の執念

2021年10月に書いた記事です。

 イタリア人と日本人の共通点の一つは、「美味しいもの」への執念だ。

すでにイタリアに30回以上行ったが、いつも感心させられるのは、名もない村に驚くほど洗練されたレストランがあることだ。

 私が住むミュンヘンから南へ約600キロメートル。アルプス山脈を超えて走ること約8時間。古都パルマの西に広がる田園地帯に、サルソマッジョーレという村がある。

この村の一角の丘の上に、11世紀に建てられたタビアーノ城がそびえている。城は大幅に改装されて現在ホテルになっている。

敷地の中には、以前チーズ工場として使われていた煉瓦造りの建物がおり、現在は旅人の疲れをいやすためのレストランになっている。旧チーズ工場の建物を通って、広々としたテラスに出る。

パルマ地方の丘陵地帯や、森林を眺めながら、テーブルにつく。9月末のイタリアはまだ暖かいので、夜でも屋外で食事ができる。

 サルソマッジョーレという村の名前は、イタリア人でも知らない。しかしこのレストランでの食事は、ミラノやローマなど大都市にも劣らない、高水準だった。

ハムを口に含んで、びっくり。8年間醸成したパルマ地方名産の生ハムだ。生ハムにありがちな臭みがなく、まろやかな味である。

トリュフ(松露)風味のソースをかけた、腰のある自家製パスタ。ソースにはちょっぴりレモン風味を加えて、清々しさを演出している。

 朝には、イタリアの柔らかい日差しを浴びながら、テラスの上で朝食を摂る。あちこちにレモンの木が植えられた植木鉢が置かれており、「南欧に来た」という気分を満喫させる。

 朝食に出てきた肉厚のトマトは、芳醇な香りと味を持っており、北国ドイツで食べるトマトとは全く違う野菜のようだった。

アルプス山脈の南側に降り注ぐ太陽の光と温和な気候は、これほど野菜の味を変えるものなのか。これが本当のトマトの味だとすれば、私が普段ドイツで食べているのは、トマトとは呼び難い。

 実は、大都会を遠く離れた村で高水準のレストランに出会ったのは、今回が初めてではない。

シチリア島の漁村でも、雲丹や唐墨を使った生パスタが美味しいレストランがあり、満員の盛況だった。

トスカナ地方の名もない村で入ったレストランでは、とろけるように柔らかくなるまで煮込み、香料で臭みを取ったロバの肉の料理を食べた。

 イタリアへ行かれたら、大都市ではなく村で食事をしてみて下さい。イタリアの食は、田園地帯にあり。

(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)







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