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2022年04月22日11:31

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ひろしま美術館のナイトミュージアム,是非行ってみたいと感じます

 これ,面白い。美術館の集客策としても,また美術に興味の無い人に関心を持ってもらう上でも,更には地域振興や芸術全体の振興策としても,積極的に採用すべきアイデアではないでしょうか。

 僕は頻繁に美術鑑賞に行っております。美術館にも参りますし,画廊(ギャラリー)などにも参ります。どちらも僕にとっては得難い体験ですが,個人的には後者のほうが「今日は勉強になった」と満足して家路につくことが多いように感じられます。というのはギャラリーの展覧会には作者さんが在廊していることが多く作者ご自身による解説が聞けたり,或いはこちらから質問をすることが出来たりするからです。作者が在廊していない場合でもスタッフの方が作品を解説してくれたり,或いは質問に答えてくれたりします。美術館ではそれはありません。
 もっともこのように申し上げると,展覧会に足を運ぶ方たちの中からは異論も出ることでしょう。「美術館でも,音声ガイドを貸し出して作品についての解説を聴かせてくれることがあるよ」と。大規模な展覧会などにおいては,たしかにそうした試みが行わる例も少なくありません。中には「作者本人による解説」という体裁を整えて聴く者の興味を掻き立てるようなものもあり,そうしたものに耳を傾けながら作品を鑑賞するのはなかなか楽しいものです。しかし僕の拙い経験ではありますが,鑑賞の補助になるそうした取組が必ず行われているかと言えばそうでもありません。またせっかく音声ガイドが用意されていても,利用する人ばかりではありません。無論「有料だから」「そんな解説など無くても自分は充分に自力で鑑賞出来るから」といった理由で利用しない人も居るでしょうが,そもそも昔の携帯電話のように手に持ち,或いはウォークマンのような機械を首に掛けてヘッドフォンで解説を聴くのが集中の妨げになって鬱陶しいという人も居るようです。実は音声ガイドが用意されていれば必ず利用する僕も,そうした思いを感じることが無いでもありません。僕は素敵な展覧会には2度3度と足を運ぶこともあり,原則として2度目以降は音声ガイドを利用しません。そうした時,たしかに「清々と鑑賞出来る」と感じることも一面の事実です。

 そんな「作品についての説明は欲しいのだが,音声ガイドはどうも鬱陶しくて好きになれない・・・」という面倒な悩みを一気に解決してくれそうなのが,こちらの記事で紹介されている「ナイトミュージアム」という,ひろしま美術館で行われている取組です。僕は最初「ナイトミュージアム」と聞いて単なる夜間開館だと思い「それは確かに忙しい人たちの美術鑑賞に資する良い取組だが,そんなに珍しいものかな」と感じたのですが,ひろしま美術館のナイトミュージアムはそんな簡単なものではありませんでした。複数の俳優が美術家(など)に扮し,作品そのものについてや当時の日本画業界の諸事情・生き様などを演技の形で観る者に伝えるという取組です。
 最初にそれを聞き,僕は「美の巨人たち」という,かつてテレビ東京で放送されていた教養番組を思い出しました。やはり俳優が美術家たちや関係者を演じながら作品について解説するという番組です。実は僕がこの番組に夢中になったのはまだ美術に関心を持つ前でしたが,そんな美術に無関心な者であっても,時代背景の紹介なども交えながら作者が自作について解説するという番組は歴史の復習にもなり,とても興味深く感じられたものです。そんな番組を好んで視聴していたことは,今の僕が美術好きになったことに間違い無く影響を及ぼしていることでしょう。

 ひろしま美術館の「ナイトミュージアム」ではどうでしょうか。この記事を執筆した江川資具氏は以下のように仰っています。最初の「予備知識も予習もゼロ」という段階で既に「語り口調に引き込まれるものがある」「見ている分には面白い」と感じられ,しかも「まったく誰が誰だか知らなくとも、違和感なく説明込みでストーリーが進んでいくので問題ない」「時代背景や、当時の日本画業界の諸事情、そして彼らの生き様などが、まるで本人による語りのような感じで説明されていく」「それぞれの作風についても、どういう主義や思想に基づくものなのか、わかるようになっている」ために,最後には「仕事なのに完全に没頭させられ」てしまったと。また演劇上演の場が美術館であることから「演者たちの背後には、登場人物たちが遺した本物の日本画が飾られている」ことによる高い臨場性の賜物として「全国の美術館で一般的なレンタルできる解説音声などよりも、はるかにエンタメ性があって引き込まれる」が故に「入館時には興味や知識が全くなくとも、演劇が終われば関心と理解を持って絵画を鑑賞できるようになっている」「絵画を鑑賞する方法として、最も革新的かつ魅力に満ちたもののうちの1つだと思う」と,極めて高い評価を与えています。そしてその演劇内容の教育的効果についても「何に注目しながら絵画を見るべきかの指標も得られる」というのですから,江川氏はこの企画を絶賛していると言えるでしょう。

 こうした取組が全国で行われれば,かつて「美の巨人たち」を毎週視聴していた僕と同じように,美術に興味の無い人々が美術の知識と面白さとを知る上で極めて有益なことは言うまでもありません。エンターテインメントとしても質の高いものだと評判になれば多くの人々が足を運ぶようにもなるでしょう。それが美術館の集客策としても,また美術の振興という意味でも非常に有望であるのは言うまでもないことです。
 また江川氏は広島市における既存の観光資源について「昼間がメインな感じがする」と指摘した上で,こちらの「ナイトミュージアム」について「時間的にも、あとは宿に帰って飯食って寝るだけだ。必然的に広島で1泊する流れとなる」と観光客の宿泊を促す新しい夜の観光資源として評価しています。これも全くその通りでしょう。関東に住む僕にとっては広島への日帰り観光はもともと困難ですが,夕方に広島を発てば日帰りが不可能ではない地域のお客さんも,こうした面白い観光資源があれば宿泊を考えるでしょう。無論,そもそも広島に観光に行こうと考えていなかった人を「こんな面白い美術鑑賞が出来るのなら,広島に行ってみよう」と広島に誘う効果もあるに違いありません。観光を通じた地域振興という点からも有望だと考えます。江川氏の仰る「いっそホテルとのセットでツアーとして売ったらどうか」というプランも真剣な検討に値するのではないか。
 更に僕がこちらの取組に期待しているのは「演劇という別ジャンルの芸術の振興になる」という点です。演劇が芸術であることは言うまでも無く,それはたとえば多摩美術大学や日本大学芸術学部などにおいては舞台演技を専攻する学科が存在することからも明らかです。しかしそういう大学で学んだり或いは劇団などで修業を積んだりして高い技量を身に着けた俳優たちが多くの仕事に恵まれているかというと必ずしもそうではないようで,なかなか専業では俳優で食べていけないなどという話を耳にします。まして近年のコロナ禍で舞台の多くがキャンセルになってしまい,前途有望な俳優たちがますます生活難に陥ってしまっているという状況もあるようです。そんな中,こうした「ナイトミュージアム」の取組はそれ自体が俳優さんたちにとってお仕事になるのは勿論のこと,観客の目の前での熱演を観せることで新たにファンが生まれる効果も大いに期待出来ます。ましてこの「ナイトミュージアム」の観客の多くは美術好きです。現状では美術を愛好する者と演劇を愛好する者とは必ずしも一致しませんが,どちらも芸術である以上,こうした取組を通じで美術愛好者が演劇にも関心を持ち芸術全般の振興に繋がるというのは決して無理な期待とは言えないでしょう。

 この取組,僕も興味津々です。ひろしま美術館に是非足を運んでみたいし,江川氏と全く同様に「いっそ全国の美術館のスタンダードになってほしい」とも願っております。
 1点だけ,或いは実施されているのかもしれませんが江川氏が触れていない事柄について僕なりの希望を申し添えると「演劇終了後に,学芸員に対する質問タイムを設けてほしい」ということです。本物の作品を背景にした迫真の演技で「演劇が終われば関心と理解を持って絵画を鑑賞できるようになっている」のですから,観客の中には色々と質問をしてみたいと考える人も居ることでしょう。そうしたニーズにも対応してくれるのであれば,こちらの「ナイトミュージアム」はもはや完璧な取組と言えるのではないかと僕は思います。

 コロナ禍が明け次第行ってみたい場所は少なくありません。僕は今「その中でも真っ先に行きたいのは広島だ」と心の底から感じているところです。



「ひろしま美術館」のナイトミュージアムが頭良すぎた / 知識も興味もゼロの超絶初心者を、1時間で熱心に絵画鑑賞させる出来
https://rocketnews24.com/2022/04/17/1620612/
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