18971117 NO4890 露韓密約一件
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011_0040_0130 駐韓日本公使館記録 11巻 四. 加藤公使時代極秘書類 (13) 露韓密約一件
文書題目 (13) 露韓密約一件
文書番号 機密号外
発信日 明治三十年十一月十七日 ( 1897年 11月 17日 )
発信者
受信者
(13) 露韓密約一件
機密号外
1)露韓密約書送付の件
「露韓秘密条款」の事は本年四月中、本官が露国士官聘用問題に関し当国皇帝に内謁見の時に思いがけなく陛下の口よりその語気を洩らされたので、なおその性質を確かめるためその後直ちに兪箕煥（ユギファン）に内奏させたことがあったのだが、皇帝は巧みに前言を変え、別に何等成文条約が存在していないもののように装われ、反って深くこれを秘せられる様子を見受けた。
その後益々注意を加え種々手段を尽しておりましたところ、適々当時閔泳煥（ミンヨンファン）の書記官であった尹致昊（ユンチホ）が帰韓することがあって、同氏は露都において閔泳煥のため五ヶ条の委任条件を英文に反訳して露政府に差し出したまでの事情を承知していると徐載弼（ソジェピル）へ内話した趙右徐（チョウソ）氏より密告があって種々端�劼鯑世燭里世�、それ以上の事は頓と判然致しませんでしたが、今回「アレキセイエフ聘用事件」が発生して以来、上下一般に露国政府の態度に疑惑を起し、国家の安危存亡を説くものが次第に多くなり、ここで皇帝の軫念（しんねん ＊心を痛めること）が一通りでなく何とかして露国との関係を割断しようとされることになり、閔泳綺（ミンヨンギ）、兪箕煥などが「日韓提携論」を勧奏した。
皇帝の意もまたついにこれに動き、しきりに日韓密約の必要を説くようになり、ちょうどその頃「百一号御訓電」に接したので、本官は「日韓提携の事は所謂露韓密約なるものの真相を知った上でなければ適当の考案を立て難いので先ずこれを見たい」と求めたところ、皇帝は「日韓密約が事実上実行された後ならばこれを示してもよいが、その前においては事態はどうであろうか」とやや躊躇されていた。しかし「これを口伝することは決して難しくはない」との事だとして一旦は単にその条件を口伝させられたのだが、「何分これでは実際を尽し難いので、是非その現物を一覧したい」と強く求めまた「絶対に他に漏洩しない」と申し込んでおきましたところ、本月十二日閔泳綺が皇帝に請うてごく秘かにこれを受け取り兪箕煥がこれを携えて来て本官に示し、その上漏洩を予防するため相当の担保を与え、並に密約の便宜上之を一覧する旨の確約を求めましたので、本官はその希望を入れ、別紙の通り両人宛の一札を与え、露韓覚書並びに照会文など一覧の上いちいちこれを写し取りました次第でありますので、極めて秘密裡に御取り扱い頂くよう致したく存じます。
もっとも右原文はロシア文で、英・韓文はその飜訳文でありますとのこと。ところが閔泳綺は本官が露語に通じる事を承知していなかったのが、ことさらにロシア語原文を差し置いて飜訳文だけを携せたと申し出ましたので、追って原文も一覧する事を約束しておきました。そこで取り敢えず本便には英韓訳文覚書、照会書ならびに付属書類をここに進達に及びます。以上申し進みます。 敬具
明治三十年十一月十七日
[別紙 甲号]
文書題目 [遣露公使が閔泳煥に委任した事項]
[遣露公使が閔泳煥に委任した事項]
一. 電線の事
一. 軍務の事、軍物の事、治道の事
一. 顧問官の事
一. 軍制整頓・問護兵の事
一. 財政の事
以上の各件を持って行きロシア政府と協商すること
建陽 元年(1896) 二月 日
(欄外記録 : 閔泳煥に渡す委任状を下に添付する)
[別紙 乙号]
文書題目 [韓露密約]
[韓露密約]
第一条
大君主陛下가俄館에駐輦실동안은俄兵이侍衛것이오不得已시거나或取便사俄館에駐輦심이聖意에合면何時지라도俄館에駐輦실것이요或還宮시�魘�遇에�魏箙饑�府가安寧심을保것이요現在俄館에留�鮓酳�은俄国公使의指揮를従야該館에常留며有事�鯀�額이라도事
第二条
陸軍教師一件을妥定기為야俄国政府가(軍務에)熟達高官을漢城에派送야朝鮮政府와商弁것이오該官의第一職務�鯊膩�主陛下의侍衛를朝鮮兵으로編製을講定事
此外에俄国이(財政에)諳熟一人을派遣야朝鮮財務의情形을詳察며銭政에妥当道理를考出事
第三条
顧問官一事�鯊萋鷯鮹�에言及바를照야軍務와財政에熟達心腹官人이俄国公使의指導를従야顧問官의職을充事
第四条
借款一事�鯆�鮮政府의情形과政府의要務를詳察後論弁事
第五条
俄国政府가朝鮮陸電과俄国陸電을連絡을肯諾며此事를成功기에極力輔助事
[別紙 乙号][付属書]
文書題目 [韓露密約の日本語訳]
第一条
大君主陛下がロシア館に駐輦中はロシア兵がこれを侍衛せよ。やむを得ない事情があるか、あるいは便宜のためロシア館に駐輦されることが聖意に適う時は、何時までもロシア館に駐輦されても妨げはない。もち還宮の場合においてはロシア国政府はその安寧を保たねばならない。現在ロシア館に駐留する護衛兵はロシア国公使の指揮に従いロシア館に常留し、有事の日に当たっては増員することがある。
第二条
「陸軍教師一件」を妥定するためロシア国政府は軍務に熟達した高官を漢城に派遣し朝鮮政府と商弁せよ。この官がとる第一の職務は、大君主陛下の侍衛兵を朝鮮兵から編製することを講定することである。このほかロシア国は財政に諳熟している一人を派遣して朝鮮財務の現状を詳察し銭政に妥当な方法を考え出す事。
第三条
「顧問官一事」は第二条中に掲げる所に照らし、軍務と財政に熟達した信用ある官員がロシア国公使の指導に従い顧問官の職に充てる事。
第四条
「借款一事」(外債のこと)は朝鮮財政の現状と政府の要務を詳察した後講弁する事。
第五条
ロシア国政府は朝鮮陸電とロシア国陸電を連絡することを承諾しこの事を成功させるため極力輔助する事。
ロシア曆一八九六年八月 日
[別紙]
文書題目 [韓露密約 漏泄防止 警告]
[韓露密約 漏泄防止 警告]
此에確約事�魏羈杏�大臣에電飭을拠야韓俄密約을観나그러나該約文을보�鮓�에반�시他에漏泄아니기를擔保是�鯡�約妥商에便게為��일이라
明治三十年十一月十二日
[別紙][付属書]
文書題目 [韓露密約漏泄防止警告日訳文]
このため確約した事は我が外務大臣の電飭によって韓ロ密約を見たいと求めた。もしこの約文を見たために後日他にこれを漏泄しないことを担保する。これは密約妥商に都合がよいようにするためである。
明治三十年十一月十二日
弁理公使 加藤増雄
外部協弁 兪箕煥 閣下
中枢院一等議官 閔泳綺 閣下
[別紙 丁号]
文書題目 [国境隣接国家間の密接な交隣共守別約]
[国境隣接国家間の密接な交隣共守別約]
大韓国
大英国
大日本国
接壌最近交隣益密共守別約如左
一. 曰必防東洋大勢之窺覘事
一. 大韓是東洋之最枢也西洋各国中如或有挽引権利耽々漸奪之意則大韓国愼其微源而防遏事
一. 隣国或有窺覘東洋之権利恃強行威大韓雖察其機而強弱不同未能専行排却則日英両国必替弁卞正事
一. 兵権財政係是国家最緊重也具今賃傭之顧問教師外必不許更請他国人而現在人待其雇限次第解任而如或有倚強圧制之境遇則両国幫助替弁事
一. 各港口必須自本国派定税務司管検而若無卒業之人難以弁事則自本国随意分請各国人定一年雇限而各港口只存補佐一人待限解任事
二. 曰扶植大韓自主之権利事
一. 大韓見方自主而基礎姑未鞏堅則本国兵強財足前日英両国必随事幫助俾不得他国之倚強施臆事
一. 各国公使只主交際則内政得失官員黜陟本無所管如或有此等事則必会弁禁止事
一. 凡於各国如或欲行格外之事則参国合心防遏俾不得恣意行計事
一. 惟我参国遇有内乱与外禍之境遇則互相保護皇躬察微杜漸預先通知誠心設法而若有差誤則両国共擔受其責事
参. 曰愛憎相従永遠不渝事
一. 惟我参国合心同力既将維持東洋大勢則一国之所愛両国亦愛之一国之所憎両国亦憎之永遠相守勿生異論而如或参国中愛憎各有別焉則外与公使会弁愛憎之事由一国之所愛者重則両国必従其重而愛之所憎者重則必従其重而憎之永勿圭角相違事
一. 惟我参国中勿論国事民事如有犯罪人逃越之弊則愼勿掩置居接而必押付本国使之依法懲弁而本国亦只従其所犯罪而裁処必不加犯越之罪相示同一国之誼事
一. 惟我参国既同一室則或有難便之端両国若已当之尽心設力互相扶護事
〈＊私訳〉
[国境隣接国家間の密接な交隣共守別約]
大韓国
大英国
大日本国
もっとも近くに国境が隣接し交隣が密接になっていることに伴い共守別約を次の通り定める。
一. 東洋の大勢が脅威を受けることを防止することための事
1. 大韓は東洋で最も重要な要枢である。西洋各国のなかであるいはある権利を口実にして 次第に侵奪しようとする意図があれば大韓は慎重にその根源を塞ぐ。
2. 隣接する国々が、あるいは東洋の自主圏を見下げたり、あるいは自国が強大国であると信じて威嚇的な態度をとったりすることがある時、大韓がその機会を見極めて強弱が同じでなく自主的にこれを排斥できない時は、日・英両国が必ず大韓に代わって正しく処理する事。
3. 兵権と財政は一国の最も重要な問題だ。今任命した顧問と教師を除外してその代わりにまた他国人を招くことは絶対に許諾することは出来ない。そして現在雇傭されている人物はその期限を待って順番に解任される予定で、（＊この解任に対し）万一ある強圧と圧制を加える場合があるならば両国は援助をして正しく処理するだろう。
4. 各港口には韓国から派遣した税務者が管検することが必須である。万一韓国政府に適任者がおらず弁事することが困難な時には、韓国政府から任意に各国人を請聘し、その雇聘年限は一年と定め、各港口には単にその補佐官として一名だけを置き期限が過ぎれば解任する。
二. 大韓の自主権利を扶植する（＊植え付ける）こと
1. 大韓国が自主国となるに当たって、まだその基礎が強固でなく、国防が強固で財政が 十分となる前までは、日英両国が事によって助けることを、ほかの国々が二国の力を信じて抑止することが出来なくすること。
2. 各国公使はただ外交についてのことだけを主とし、韓国の内政についての得失、そして官員の進退に関することは関与しないことが本務であり、もし このようなことがあれば会弁し禁止すること。
3. 各国から韓国に対してもし各外交に関することを進めようとする時は三国がこころを合わせ、勝手に出来ないようにすること。
4. ただ我々三国は韓国に内乱やその他の外禍がある場合、相互に補完し慌ただしいなかでも密接に互いに通知しあって防止するよう真心を尽くして説得し、万一錯誤があった時は 両国がともにその責任を負担すること。
三. 愛憎を共にし、永遠に変わる事無く努めること
1.ただ我ら三国は合心同力し今後東洋の大勢を維持し、ある一国が愛すれば残りの両国がやはり愛し、ある一国が憎めばやはり他の二国が憎むということを永遠に互いに守り、異論が起こらないようにすることが重要で、もし三国の中で愛憎がそれぞれ異なるなら公使がその事由を会弁するようにすること。一国が愛することが度重なれば他の両国は必ずその度重なることに従って行き、憎むことが度重なれば必ずそれに従い、隙間が生まれ相違が生まれたことが永遠に無いようにすること。
2.ただ我ら三国は、国事や民事を問わず、犯罪を犯した犯罪人が国境を越える弊害がある時は、隠したりせず仮住まいさせず本国へ押送し違法処罰するようにし、本国では単に犯罪に対する事だけを裁判し、越境した犯行に対しては罪を追加しないようにし各国が同一の国の友誼を見せるようにすること。
3. ただ我ら三国はすでに同じ身内としてあるいは安らかでない端緒があるならば、両国は自国が当面していることと同様にこころから力を尽くして相互扶護すること。
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