18960208 NO4690 江原道春川府の暴民蜂起の件
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010_0030_0240 駐韓日本公使館記録 10巻 参. 機密各館往復 (24) 江原道春川府の暴民蜂起の件
文書題目 (24) 江原道春川府の暴民蜂起の件
文書番号 機密第一号
発信日 明治二十九年二月八日 ( 1896年 02月 08日 )
発信者 在元山 二等領事 上野専一
受信者 在京城 弁理公使 小村寿太��
(24) 江原道春川府の暴民蜂起の件
機密第一号
春川府（チュンチョンブ）に暴徒が蜂起し同府観察使その他の官吏を殺害した、との報告が本地（＊元山）に到着したのは六日前・本月二日であった。
これより先、京元（＊京城・元山）間電線は破損されて数日間通信が出来なかったため、この修理のため本地（＊元山）守備隊長は部下の兵六名＊を派遣し春川を経て京城付近まで進ませたが、途中狼川（ナンチョン ＊現・華川郡。大韓民国江原道にある郡。1895年から一時狼川郡に改称）地方において暴徒蜂起の報に接し、特に電線は数十里の間破壊され、電柱の如きは皆あちこちに焼き棄ててあったので、これは到底直ちに修繕することは覚束ないと考え、元山（ウオンサン）へ引返そうと、先ず淮陽（フェヤン ＊現在、共和国江原道に属する）地方まで来た時に、この地の近傍で数百の暴徒に囲まれこの兵士を引率した軍曹一名は暴徒の銃弾に当ってその場で即死した、との報告があった。
さらに本月三日、先頭六名＊を応援のためさらに曹長一名に兵士十五名を増派したのだが、鉄嶺（チョルリョン ＊現・共和国の江原道の高山郡と淮陽郡の郡界にある峠。標高686メートル。京元街道の主要な通路）以南の暴動がすこぶる激しいとの報告が続々あったので、本月七日午後さらに谷少尉に兵士三十余人を引率させて鉄嶺方面に前進させた。
また昨夜半、さきに前進した曹長よりの飛報によると、准陽より南方、昌道（チャンド ＊「共和国江原道に属する郡」）駅付近で一昨六日午前八時暴徒が四方より襲撃し中に包まれて数時間戦った。しかしながら地形が我に取って不利であったので准陽に引き揚げたのだが人家に人がいない。糧食は欠乏し、やむを得ず高山（コサン ＊南隣が淮陽、その南が昌道）まで引き揚げる見込みで、昨七日伝騎報告のため出発させた。
目下の形勢では暴徒は数百から千人に達し(元山より南、我が六里程である)、以南の人民は総て暴徒に与するため、日中は言うまでも無く、夜中は松明を掲げて続々と南下する勢いである、と言う。
またこの曹長の引率する上等兵一名が負傷し、その他荷物など朝鮮人夫に負わせていたものはすべて暴徒に奪われた、と言う。
このような状況であるので、今朝さらに兵十名を鉄嶺の麓に当る高山駅に分遣し、先頭部隊に対して後方勤務を行わせる事に決定した。
これら暴徒蜂起の原因は、すべて今般の断髮令発布の結果であり、春川府南山（ナムサン）居住の儒者・李昭応（イソウン）というものを義兵将帥とし、別紙の通り檄文を発しこれを八道各府郡に伝えた。
本地（＊元山）知事府に届いた報告によれば、狼川（ナンチョン）・金城（クムソン）・准陽などの各郡守は既に暴徒の檄文に同志となる意思を表し、また本地接近の安辺（アンピョン ＊元山の南。日本海に面する）郡庁でも賊の伝令を受領した、と言う。
このような有様であるので、この檄文はいうまでもなく咸鏡道（ハムギョンド）各府郡へも伝達する事と思われるので、本地知事は努めて檄文が北咸（＊咸鏡道北部）各地に伝播することを防止する事に力を注いでいる。
しかしながら現在咸興（ハムフン ＊元山の北部）以北、吉州（キルジュ ＊現・咸鏡北道の南端）付近の情報によると、民心はすこぶる激�兇靴討�り、ややもすると機会を見て暴動を起そうとしているのが現状だ、と言う。今後の事はなお細情の探偵を尽し稟報致すつもりでありますが、取り敢えず前件申し進み置きます。 敬具
明治二十九年二月八日
在元山 二等領事 上野専一印
在京城 弁理公使 小村寿太�� 殿
＊李昭応（イソウン）「李昭応は1852年陰暦8月7日春川府南山외이작面で誕生した。1895年乙未事変が起こり、断髪令が下され全国で義兵抗争が起きると、1896年1月春川府に集結した地方儒生、柳重洛（ユジュンナク)•李晩応（イマヌン)などと農民1,000余名によって義兵隊長に推戴された。」
[付属書 一]
文書題目 曉告八道列邑
曉告八道列邑
今者倭虜猖獗国内賊臣諂付而左右厥酋其効至於逆殺 国母勒剃 君父驅迫万
姓俾陷於犬羊使堯舜孔朱之道掃地而尽無処可保是以皇天上帝赫然震怒於上志士仁人隆軍万姓忠義奮発莫不痛哭流涕感恩不共載天嗚呼凡我処々蜂起忠義之將万不獲已行此応天順人之挙而必以尊中華攘夷狄為国家復讐雪恥為第一大義也此皆堂々義旌義旅所到処各営各邑長官若有占便宜観望不即応者及有付賊党謀教等情者則是皆夷狄禽獸之前矛亂臣賊子之党與断以軍律施行先斬後報可也
乙未十二月十七日
春川義兵將 李昭応
〈＊私訳〉
今日本人たちが荒れ狂っているが、国内の賊臣たちが彼らの左右でへつらって付和し挙句の果てには日本人たちは彼らを利用して国母を殺害し、君父を抑圧し剃髪させ、百姓たちを虐待し蛮人の風俗に陥らせ、堯・舜・孔子・朱夫子の道をこの世から捨て去り将来保全する場所が無くしてしまい、これは皇天上帝におかれても天でお怒りになることが赫然たることだ。志士・仁人・義軍・万百姓は忠と義で憤発せよ。 君恩に涙を流し痛哭しないではおれず不共載天であれ。
ああ、我が地方の多くの土地で蜂起する忠義の商人たちがまだ手に入れてはいないが、これは天の意志に従い百姓たちの所願に報答する大事だ。だから中華を尊び、蛮人たちを追い払い、国家の仇敵を打ち払い、この恥ずべきことを雪辱することがもっとも大きいこの義挙の目的だ。ここに全ての人々が至る所で義挙しなければならないのだ。
そして各道の監営、各邑の長官たちが自己の便益だけを考えて観望し我々に呼応しないならば、賊党にくっつき義兵の軍情を謀�海垢觴圓燭舛呂垢戮独攷佑閥拿辰亮蠕茲任△蝓⇒霓誕瓜劼琉貲匹鵬鍛瓦垢觴圓燭舛任△襪�ら軍律に従い処断し、先ずは斬り倒しその後報告するようにすることだ。
乙未（1895年） 12月 17日
春川 義兵將 李昭応
[付属書 二]
文書題目 [春川義兵所の軍需用経費徴収に対する宣言文]
義兵所為去考事軍需経用万々時急故所以発関為去乎各邑所納秋等戸布銭及乙未条総税罔夜来納是矣如或有遅滞之弊責豈有帰矣火速挙行為詐各其邑所納数爻憑唯次文縛持是遣該邑吏眼同来待宜堂向事
乙未十二月十二日
在春川義兵所
此亦中到付形山罔夜馳報次
〈＊私訳〉
義兵所でしなければならない事を考えるに、軍需用品が今のところ急を要する。したがって各邑に関文を送り秋に収める戸布銭（＊春と秋の二期に各戸が収めた租税）および乙未条の全ての税金を、夜を明かしても義兵所へ来て治めなければならない。もし万一遅滞する弊害があるならその責任は納税義務者に帰ってゆくことになる。だから火のように 早く挙行せよ。
そして各邑で納付する納税額に虚偽があるかないかを確認するために、納税帳簿を持ってゆくから該当邑吏は当然一緒に立ち会え。
乙未（1895年） 12月 12日
在春川 義兵所
これが形山（＊？）に到達するように夜を明かしても馳報せよ。
[付属書 参]
文書題目 檄告八道列邑
檄告八道列邑
嗟惟我八域蒼生 忍任他一局黒死
自乃祖乃父莫非五百年遺民 為吾国吾家胡無一二人義士
慘矣憾矣 運耶命耶
猗我本朝 自国初悉遵先王
而天下皆称小華 民俗與唐虞参代可比
儒術以洛閩諸賢為師 雖夫婦之愚皆尙礼儀之教
於君父之急必有赴救之心 肆昔壬辰不限挙義之士
逮夫丙子亦多殉節之臣 蓋自神州之陸沈
幸有我国之乾淨 不過為海隅片土
足以当剝上得輿 嗚呼痛矣
誰知海外通商之謀 実為天下亡国之本
開門納賊所謂世臣家甘作虎前之倀 殺身成仁只此疏儒輩得免牛後之恥
景米之金謀莫測 在魯之周礼難全
所以草野匹夫之微 徒切漆室釐婦之歎
卒至于甲午六月二十日之夜 竟失我朝鮮一国三千里之方
宗社妃髮危孰為李若水之抱主 州県皆肉食不見顔眞��之募兵
以昔区々勝国之作下句麗尙云羞恥 矧今堂々正邦之為小日本寧不痛傷
噫爾島夷之酋約信如法理初不可説 痛冤奈何
惟彼国賊之輩頂踵毛髮頼誰而生 慘酷尤甚
国母之讐已是切齒 君父之尊又見毁形
破冠裂裳之余又遭此罔極之凶禍 禽獸我父母之身此何事也
飜天倒地之後莫保我各受之秉奨 草薙我父母之髮此何変歟
堯舜禹湯帝王之伝至今日而墜施 孔孟程朱聖賢之脈更無人而扶持
長安父老争思瀆官之儀 新亭豪確空作楚囚之泣
君臣父子宜有背城之心 天地鬼神豈無面陽之理
微管伸吾其左衽矣 誅淖齒誰果右袒乎
凡我諸路忠義之人 均是聖朝培養之物
避患有其於死者 待亡其孰如伐之
地雖当万分之頭 人可増百倍之気
天下共戴尤切薪膽之思 時何等危難免魚肉之禍
吾未聞変於夷者 其何以立於世乎
以公以私万無生全之望 於禍於福一守死者之符
歃馬血而同盟成敗利鈍非吾所覩 擇熊掌而斯取軽重大小於此焉分
衆心皆趨詎無百靈之休祐 国運復啓將見四海之永清
仁者之無敵勿疑 士師之用誅何待
玆敢為先挙之地 遂以此布告于人
上自公卿 下至士庶
孰無哀痛切迫之志 此誠危急存亡之秋
各自寢苫枕干 亦皆赴湯踏火
期区宇之再造 見天日之復明
爰但為切於一邦 実是有辞於万世
如是馳書曉諭之後 有或違令逋慢之人
即是逆党之同帰 断当移兵而先討
各宜銘肺 用尽微誠
無至噬臍 共伸大義
乙未（1895年）十二月初三日
忠清左道提川郡義兵將 李弼熙 謹檄
〈＊私訳 全く訳にはなっていない部分が多いが、今はそのまま掲載しておく。〉
八道の列邑に告げる檄文（訳文）
ああ!考えるに、八道の百姓たちをどうしても死の底に投げ捨てておけようか！
君たちの祖父と父から500年、宗社の遺民でない者はいないので、どうして我が国家のための一二名の義士もいないのか。残酷で悲しいことだ。これが運なのか、命なのか。
ああ!我が朝鮮は国礎から全ての先王の法を守ってきて、この世が小中華として称えられてきた。民俗は堯・舜の三代に比べられるに十分で、儒術は程子・朱子・諸賢子を師と見なしてきた。そうしてどんなに愚かな男女でもみな礼儀の教えを崇め尊び、君父が差し迫っているときは必ず助けようとする心があった。昔壬申倭乱（秀吉が1592年に開始した朝鮮侵略戦争）の時は義挙した烈士が限りなく立ち上がり、丙子胡乱（1636年に清軍が朝鮮に侵入した事件）の時にも殉節した臣下が多かった。
総じて神州が滅び（＊？）、幸運にも我が国は平穏であったが、わずかに海岸の小さな土地ではあるが混乱中でも復興の始まりをみることは出来たのだ。
ああ! 嘆かわしい事に海外通商の計策が実は天下亡国の根本になることを誰が知っていたか？城門を開き盗賊を引き入れたように、いわゆる代々の権勢家が大方倀鬼（チョウキ ＊「トラに食われた人の霊魂はトラの配下となって使役される」）となった。殺身成仁した（＊命を捨てて忠義を守った）者は上訴を上げるソンビたちだけで彼らは牛尾の羞恥を免れることができた。
しかし愚かな我々はよい計策を察することができず、これは即ち魯国が周禮を完全に為すことが困難だったということだ。したがって草野に生きる匹夫の考えは、ただ暗い部屋にいる婦女子のため息のように切実なだけであった。急に甲午（1894）年6月20日夜に到着してついにわが朝鮮全国の三千里の土地を失ってしまった。宗社が一本一本の髪の毛のように危険になり、誰が李若水（北宋末の忠臣1093〜1127）のように王を抱きかかえたのか? 郡が全ての魚肉のようになったのだが、顔真卿のように軍士を募集する者は見られなかった。かつてさまざまの出来事のあった高麗も高句麗より出来ない事を羞恥と思うのだが、いわんや堂々としたこの国が日本より出来なければこれは嘆かわしくはないだろうか?
ああ! あの島住みの蛮人の酋長が約束の信頼を法のままするだろうと初めにかたることができないだろうに鬱感をどうするか？
思うにあの国賊たちの体は誰から力を得て生きていたのか？残酷さがさらに激しい。国母の仇もすでにこれが腹が立つのに、君父の尊厳がまた毀損された。王の衣冠を取り換えた後またこのような亡国の火に遭遇したのに、わが父母の体を錦繍で作る事はどのようなことなのか？天地がさかさまになった後でおのおの天から与えられた堂々とした我らの 天性を保存できなかったのだが、我々の父母の毛髪を剃るふるまいがこのどのような奇怪な行為なのか?
堯舜と禹湯の諸王が伝えた法が今日になって遮断され、孔孟、程朱など先賢たちの血脈を持ち堪える人間がもういなくなった。
これは長安の父老たちが漢官の依法を争って思慕し、新亭の豪傑たちは無為に楚囚涙を流したのだ。君臣と富者が怒りを捨てて争う心があるのに天地と鬼神がどうして助けてくれる筈がないだろうか?
管仲でなかったならばわれらは蛮人になったわけであり、淖齒 （요치 ＊「淖齒、齊國 を乱し閔王を殺せり。我と與に誅せんと欲する者は、右を袒（はだぬぐ）げ。」） 死なせたのに誰がはたして右側の肩をあらわにしてうらぎるであろうか？すべての国の忠誠で義理堅い我々すべてはみな同じ国家で育てられた人物たちだ。
hoanranを避けることは死ぬことよりつらいことであるのに、滅びることを待つことは征伐することよりできないことだ。
この土地はたとえ非常にあやうい地境になるまで、人は百倍の気迫を加えることができるであろう。天を同じくする天下の人であれば臥薪嘗膽の考えがさらに切実になるであろうし、この時がどんなに危急を要する瞬間であっても魚肉の火をまぬかれることができるであろうか？
我々は蛮人に変化したということばは聞くことはできないのだが、どうしてこうして世間に立つことができるだろうか?
公私をひっくるめまともに生きる希望があるはずがなく、禍福を問わず均しく死の符節を守るだけだ。馬の血を飲み同盟するだけその成否と利害は我々が知れるところではなく、熊の粗暴な足の裏を選ぶだけその軽重と大小をどう分けようか？
大衆の心がすべて一つになるならどうして神霊の助けがないだろうか、国運がまた回復すれば眼前に澄んできた四海（＊世界）を見ることができるであろう。
仁者には敵がいないという言葉を疑わないだろうが、人士としてどう死を待っているのだろうか？これを恐れることなくまずは義挙するよりどころとして見なしついに人々に 布告せよ。
上は公卿から下はソンビ（＊在野の学者）と庶民に至るまで哀悼切迫した心がないのだろうか？これはまことに存亡の危急の時であるが、各々偉大な業績の跡で眠り、盾を枕にしてすべて沸騰する水と水底へ 出ていくべし。
こうして必ずこの国を再建しまた明るい太陽を見よう。このどうして一つの国の切迫していることよ。実に萬世に伝えるべき言葉があるようだ。
このように檄文を送り曉諭（ヒョユ ＊知らせる）した後にもしも令を破り威張り散らすものがいるなら、これは逆党と同じ連中であるから断固として軍士を動かして先ず討伐せよ。各自の心に刻み小さい誠意を極めることであり、へそを噛む後悔が無いよう共に大義を広めよう。
乙未（1895年） 12月 3日
忠�翔� 堤川郡 義兵將 李弼熙 謹檄
＊1895年10月8日 – 乙未事変により閔妃が暗殺される。
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