「椿の庭」
4月23日(金)からテアトル梅田、なんばパークスシネマ、
京都シネマ、4月30日(金)からシネ・リーブル神戸 ほか
「もし私がこの家から離れてしまったら、ここでの家族の記憶や、
そういうもの全て、思い出せなくなってしまうのかしら」
数多くの広告写真を手掛け国内外で高い評価を得ている写真家の上田義彦
の初監督作品。
人々の記憶は場所や物に宿っている。家は住んでいた人々の記憶を宿す装置なのだ。
というコンセプトの元に、限りある「生」を描いた芸術作品。
主演は富司純子と「新聞記者」のシム・ウンギョン(沈恩敬)。
鈴木京香、チャン・チェン、田辺誠一、清水 紘治らが脇を固める。
庭に椿が咲き誇る一軒家。そこは絹子が長年住み続け
夫や子どもたちとの思い出が詰まった場所。
絹子は夫の四十九日を終え孫娘の渚とともに
庭の自然や金魚を大切にしながら静かに暮らしていた。
そんなある日、絹子に一本の電話がかかってくる。
上田監督が構想から15年をかけ、自ら脚本、監督、撮影を手掛けた。
「記憶」を大切に「家」を必死で守ろうとする絹子の凛とした
生き様が素晴らしい。富司純子の近作の代表と言えると思う。
さすがに画面の美しさは一際で、写真家の目線で
暮らしの中で育んできた日本人が美意識がきっちりと描かれている。
動植物の生命観に感動し、陰影をつけた独特のライティングは
富司純子のしわも隠さず表現し、時代を生きた女として証しを
年輪として刻んでいる。前景にボケ味を加えた画面構成も
美しく、全体で品のある格調高い作品に仕上がっている。
第42回モスクワ国際映画祭 正式出品
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