mixiユーザー(id:2230131)

2021年04月20日12:47

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Solid State Survivor/Yellow Magic Orchestra

 基本的なYMOのコンセプトはそのままに、当時イギリスで隆盛していたニュー・ウェイヴに接近したことで、よりわかりやすく(当時としては)コンテンポラリーなテクノポップを標榜した大ヒット作。

 なにはともあれ、テクノ云々といった文脈を知らない初心者でも楽しめる“テクノポリス”や“ライディーン”といったヒット・シングルがアルバム全体の印象を親しみやすいものにしている。とりわけ後者はリリースした後もずっとお茶の間で流れまくっていたことで、この手の電子音楽に対する耐性を日本人の耳に植え付けることに成功し、もっと言えば電気グルーヴのようなフォロワーを生み出す下地を作ったのだから、その功績は計り知れない。
 しかもこの曲は、細野晴臣でもなく、坂本龍一でもなく、当時作曲を始めたばかりだった高橋幸宏のペンだったことは興味深い。「ドーレーミーで始まる曲などありえない」と坂本が語っていたように、アカデミックな教養に裏付けられた作曲ではなく、ある種の素人のDIY的な発想だったことが、この曲の異常なほどのキャッチーさに繋がってるのではないかと思う。アレンジだけ見ると、間奏のSEとかかなりマニアックなことをやっているし、アルバム全体で見ても“キャスタリア”のようなダークなアンビエント曲も収録されているが、この辺はいわゆる箸休め的なSEとしてスルーされている模様。

 そして当然の結果として、とっつきづらい要素―――すなわち前作『Yellow Magic Orchestra』には顕著だったファンクやディスコの要素は自然と大きく後退している。
 グルーヴ的に言うと、横ノリから縦ノリに。“ビハインド・マスク”なんかはわかりやすいロック的なコード進行だし、カバーの良し悪しは置いといて“デイ・トリッパー”は脱臼したまま踊り続けているような奇天烈なアレンジが話題をふりまいており、当時の音楽ファンの大半の位置を占めていたロック・リスナーに対する目配せもちゃんとできている。要するに、最初からYMOの音楽は日本人の耳に最適化した音楽だったのだ。

 というわけで個人的な好みで言うと、エキゾチカの模倣から始まったYMOのアングラ的思考、国籍不詳なトンデモ感が減退してしまったことで、オリジナリティーとしては若干薄まった気がしないでもない。あとこの内容で32分はさすがに短すぎて消化不良。
 ただそれらもすべて計算通りというか、歌謡曲のようにわかりやすいキャッチーなメロを最先端の音楽のアレンジでやって、それを聴きやすいアルバムの尺に落とし込む。すべてテクノポップという音楽を国内に広めるための戦略だったと考えると、やはりYMO(というか細野晴臣)恐るべし…。
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