文京区の森鴎外記念館の映像コーナーで、「谷中・根津・千駄木」の編集を長くやった森まゆみさんが、「安井夫人」を絶賛していたので、読んでみたくなった。
「安井夫人」は、「アレッ、これ鴎外?」と思うほど、読みやすく、しかも通俗時代小説的な展開。前半は、鴎外好みの女性が、後半は愚直に生きる武士の姿が描かれる。
一葉や、与謝野晶子を高く評価し、当時としては進歩的な鴎外だったが、ここでは「醜男だが学問に打ち込む男を支える、理知的な女性」「しかも美人」を描き、いささか男視線なのは、明治の人だからしかたないかも。
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文づかい」は、さる女性(イイダ姫)から手紙を届けて欲しいと頼まれる男の話。こっちはドイツ3部作のひとつで、漢語調。意味がとりにくいので、あらすじと原文をちゃんぽんで読んだ。親の決めた結婚をのがれたい女性の悩み、現代でもあるだろうな。
「雁」(がん)も、ストーリーは映画チック。実際に、高峯秀子、若尾文子で、それぞれ映画化されている。鴎外は「サバ味噌煮」が嫌いで、それがキッカケとなって、女性が告白できなくなるという、ちょっと面白い話も。
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うたかたの記」もドイツ三部作のひとつ。これも愛の物語。ルードリッヒ2世が出てきたり、主人公の絵描き(巨勢イセ)がミュンヘンでつきあいがあった、画家の原田直次郎、である、というのも面白い。
な〜んだ、鴎外も面白いんだな〜というのが、ジッカン。あとは、舞姫も読んでみよう。
舞姫・うたかたの記 (角川文庫)
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