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2021年02月09日02:41

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“普通の”ドキュメンタリーが、僕にはとても見やすい。アニエス・ヴァルダ監督「ダゲール街の人々」(1975)と「落穂拾い」(2000)。

たまたま目黒シネマで2本立て上映していました。平日だったら混み合うこともないだろうと散歩がてら出かけたら、10人以上入っていました。2本立ての2本目から入場したのですから、そこそこ入っていて当然ですね。2本目が終わるとガラガラになったけど、コロナ禍ではそのほうが好都合。←ちゃんと席は1つおきにしていました。100席あるけど、定員は20ですね。←補助席(20席)も用意していたけど。

「落穂拾い」はDVDのレビュー記事を書いたときに見ています。続編の「落穂拾い・二年後」も。しかし「ダゲール街の人々」は初見でした。2019年の年末に公開していたようですが、僕の行きつけの映画館ではなかったので。

「ダゲール街の人々」は、ヴァルダが住むダゲール街の住人たちをスーパー16ミリでスケッチした作品でした。ダゲールさんというリュミエールに先んじて“連続写真”を開発した人にちなんだ通りだそうです。ダケレオタイプという写真システムも開発したそうで、それが原題でした。パリには偉人の名前の通りが多い。←これって、「5時から7時までのクレオ」の中で説明していましたね。

冒頭に“2Kでデジタルリマスターしました”とテロップが出るので、今更2Kかよと思いましたが、もともとがスーパー16ならそれでいいのかも。でもフィルムの質感が感じられ、「幸福」同様の見事な深い赤色が見られてうれしかったな。映像スケッチそのものには大して惹かれなかったけど。

一方、すでに見ている「落穂拾い」の方は痛烈ですね。前回見ときも思い浮かべましたが、ヴァルダの「冬の旅」(1985)のラストシーンとダブります。僕なんか同名のミレーの名画を泰西名画の一つぐらいにしか感じていませんでしたが、落穂拾いというものが法律で認められている権利なんですね。←1554年に制定されているというのにもびっくり。

つまり、収穫後の畑に残った落ち穂を、無関係な人間が拾ってよいという話です。麦はもちろん、ジャガイモもリンゴも、そしてブドウなどの落ち穂拾い(落ちてないけど)を描きます。さらに、スーパーなどから出る賞味期限切れの食品へと話は移る。ホームレスの人々だけではなく、一流のシェフまでが野菜の落ち穂拾いを実施しています。いわく、“イタリアから運ばれてくる野菜は、熟す前に収穫されているから”だそうです。

ジャガイモはトラクターなどで自動収穫し、工場で選別して規格外のジャガイモはトラックで畑に戻されるそうな。トラックから捨てられたジャガイモは、市販品より大きいものも多く、落ち穂拾いには喜ばれています。「大脱走」のマックイーンなら酒を作ったことでしょう。

この「落穂拾い」から20年が過ぎ、ようやく食品の無駄をなくそうとする動きが活発になってきました。しかし人口が爆発的に増加しているアフリカなどでは、食糧難が続いています。ゴミ箱をあさればパックされた食品が手に入るのなら、ホームレス生活も可能なのかも。って、実行する気はありませんけどね。

「落穂拾い」は、デジタル撮影した作品なのですが、当時はSDでしたから画質が気になる。「ダゲール街の人々」の2Kのほうがきれいでした。だからデジタル初期のころは、“フィルムの火を消すな”と騒いでいたわけです。そんな声が今になって正しいと分かっても、あんまり意味はないけど。

とはいえ、ヴァルダのオーソドックスなドキュメンタリー制作方法は、見ていて安心です。マイケル・ムーアを例に出さずとも、幾多の日本製ドキュメンタリーが密着取材の迫力映像としてガタツキ映像をつぎはぎするのですが、あれは見づらい。ヴァルダが描く対象には動きが少ないという言い方もできるけど、取材者が対象におたついて撮影しているようじゃダメでしょ。

そんな基本的な撮影姿勢というものを、よく分からせてくれる2作品でした。明日からはヴァルダの遺作と監督デビュー作の2本立てか。どちらも未見なので、これも行かなくちゃ。この2本を見れば、日本で公開したアニエス・ヴァルダ作品の9割以上を見ることになります。えっへん。
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