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2020年10月24日23:40

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戦艦大和の収支決算報告。お薦めです

青山誠さんの『戦艦大和の収支決算報告』彩図社に私の知識を多少加えて書いてみたいと思います。

戦艦大和は、建造費だけで当時の国の歳入の5%弱もかかりました。
東京の郊外に庭付き戸建が三千円の頃、一億二千万円が建造費だったそうです。
私の子供の頃、千円で家を建てるのを止めて、戦時公債を買って大きな家が建つと思っていたら、負けて紙屑になったと言っていた方がいましたから、この数字は正しいと考えられます。

戦艦大和の砲弾は千九百円だそうですから、九門を斉射(同時に発砲する事)すると一万三千五百円。
これで戸建庭付き四軒分以上ですが、では命中率は?

大砲は距離が遠くなれば命中率は低下します。
日露戦争の日本海海戦では距離は六千米で10%。大和は二万米以上を砲戦距離として想定していますから、多分数%以下になるでしょう。
低下の原因は、斉射をすると、砲弾が空気中で相互干渉するからで、それを考慮し、一定の範囲に集める仕組みが作られていました。これを散布界と言います。
日本海軍はこれを直径二百米にしていました。この中に九発の砲弾が落ちるわけです。
ちなみにアメリカは六百米だと言われていますから、命中率は日本が三倍。という計算になります。が、それでも当たるか当たらないかは、運の要素が強くなるわけです。
アメリカの戦艦は、レーダー射撃を行うようになって命中率は向上しましたが、それでも多少は日本が上だと思われます。
第三次ソロモン海戦では、戦艦霧島が36センチ砲を、アメリカはワシントンとサウスダコタが40センチ砲を夜間の距離一万米で撃ち合いました。
約二百発で命中率は10%程度とされています。
霧島は格上の砲弾を10発以上受けた。と、アメリカ側は記録していますが、私は誇張があると思っています。

基本的に戦艦は、自分の主砲で撃たれた時に耐えられる装甲を持っています。
大和の砲弾の重さは約1トン半ですが、アメリカ戦艦の主砲は、46センチの大和より一回り小さな40センチですが、重量は1トン3百。日本の同じサイズの主砲よりも3百キロも重いのです。ですから、サイズが同じなら破壊力はアメリカ戦艦が上という事です。
もう1つ、大砲の威力は口径が重要になります。口径は砲弾の直径の倍数で大砲の長さになります。アメリカ戦艦は口径50ですから砲身は20米。大和は45口径ですから20米です。
砲身が長いと、発射した時の初速が早くなり、貫徹力と射程距離が上がります。日本の長門級は45口径ですから、砲弾が軽いのに射程距離は1キロ程度短い事で、その威力の違いが良く判ります。

大和がアメリカ戦艦を撃沈するには、8発の命中が必要との事ですから、2%なら四百発の砲弾が必要という計算になります。
九門の主砲から40回の発砲が最低限必要だという事になりますが、ここで問題は、大砲の精度を保てる発砲回数で、発砲する度に砲身は磨耗しますから交換する事になりますが、大和の主砲は二百回で交換する事になっていました。
相手が五隻以上いますと、大和の主砲は、最後には役に立たない事になるわけです。

大和は、敵の戦艦の主砲が、有効射程距離に入る前に、敵より大きな大砲で、相手を沈める事が目標だ。というコンセプトで建造されました。
が、それだと命中率はもっと下がりますから、三隻いたら大和は勝てないという事になります。
それともう1つ重要な問題も存在しています。
それは発射速度で、大和はこれが40秒。英米の戦艦は30秒ですし、ドイツのビスマルク級は20秒だと言われていますから、この発射速度の差は致命的です。
大和が10発発射する間に、アメリカ戦艦は13発、ビスマルクなら20発撃てます。
この発射速度の差は技術力の差かも知れません。
ドイツは有名なクルップが大砲を製造していますから、大和の倍の速さになったのかも知れません。但し、ビスマルク級は38センチですから、大和並みなら30秒くらいかも知れません。

私は日本人ですから、大和がアメリカ戦艦をバッタバッタと沈められると考えていましたが、残念ながらアメリカ最強のミズーリ級ですと、敗けはしませんがこちらもかなり苦戦すると判断します。

このように考えますと、海軍はかなり膨らませて予算を獲得していたと思えます。
この大和の建造費の他に、海軍は沢山の艦艇を建造していますし、それを維持し運用もしていますから、歳入の三割は海軍予算でした。
海軍に膨大な予算を取られていますから、陸軍はお金が掛からない方法に走り、それが精神主義だと言われる所以なのでしょう。
しかし陸軍は、日清戦争以来ロシア(ソ連)が仮想敵国で変わりません。しかし日露戦争後に何故海軍は、アメリカを仮想敵国にしたのでしょう?

私は日露戦争の結果、ロシア戦艦を拿捕し、日本海軍に編入しました。これは日清戦争の時も同じで、清の定遠を編入しました。
イギリスやドイツには敵いませんが、アメリカ並みの戦力になったからだと考えます。

海軍が本当に国家の事を考える組織なら、日露戦争の戦費で窮乏する国家財政を考え、仮想敵国をアメリカに変更したのは間違いです。

日清戦争は歳入が1億円で戦費は2億3千万円。日露戦争では3億3千万円で戦費は約18億円超。外国で募集した国債は8億円超です。外国での発行ですから確実に返さないと信用を失い、貿易も難しくなります。
この本でこの数字を見た時には、南満州鉄道のアメリカとの共同経営に、何故小村寿太郎が反対したのか、海軍がアメリカを仮想敵国にして、戦艦を建造し続けたのか、理解に苦しみます。
また、李氏朝鮮の併合問題でも、併合派と併合反対派が対立したのかも、判る気がします。

台湾の統治でも日本は莫大な予算を投入し、インフラの整備や学校に病院などを建てていましたから、それより人口が多い朝鮮半島では、倍以上の資金が必要になるから、海外での借金返済と併せたら、国内で使える金は本当に少なくなるからです。
韓国は、台湾や朝鮮半島を植民地だと言いますが、日本は植民地だと考えてはいなかったから、インフラを整備し、学校制度を整え、病院を開いたのです。
欧米の植民地では、必要な場所以外には鉄道も道路も建設されていませんし、勿論学校制度などはありません。公立の病院も軍の病院くらいで、法律も無く、極端な言い方をするなら、植民地の人達は奴隷と余り変わりません。
朝鮮半島を併合した後は、日本の歳入の15%が朝鮮半島に使われています。
軍事費は25%くらいと言われていますから、海外債権の返済と併せたなら、半分近くはこれで消えるわけですから、日本人の生活が豊かになるわけも無いのです。

海軍が建艦競争をもう少し控えていたら、日本はもう少し豊かになっていたと私は考えてしまいます。

この戦艦大和の収支決算報告は、様々な事を教えてくれました。
皆様にもお薦め致します。
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