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2020年10月12日08:14

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日曜は……

 日曜は、東京で映画3本。
 まず、1本目は、ヒューマントラストシネマ有楽町で、
 「わたしは金正男を殺していない」。

 これは、2017年にマレーシアで北朝鮮の最高指導者・金正恩の兄、金正男が暗殺された事件で、殺人犯とされた2人の女性を通して事件の真相に迫るドキュメンタリー。
 監督は、「おしえて!ドクター・ルース」のライアン・ホワイト。

 2017年2月、マレーシアのクアラルンプール国際空港で一人の男が顔に神経毒のVXで殺された。その男は、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男だった。
 実行犯は、ベトナム人とインドネシア人の若い二人の女性で、大勢の人が行き交うで、金正男の顔面に液体を塗りつける様子を捉えた防犯カメラの映像は、世界に衝撃を与えた。
 二人の女性は、SNSに投稿するためのいたずら動画を撮るために雇われただけと主張するが、国際空港で要人暗殺をされたマレーシア政府は、面子の為にも二人を殺人罪で起訴し、スケープゴートとして死刑にする事を目論むが……

 この事件、黒幕と思しきが北朝鮮と言う国家で、関係悪化を懸念するマレーシア政府の弱腰から事件は、その真相を明らかにする事なく収束した感がある。その一方で実行犯とされた女性の存在は何時しか忘れていた、と言う人も多いのではないだろうか。
 映画は、事件の全体像と共に、その2人の女性の“その前”と“その後”を描いている――まぁ、この事件、今や大凡の所は、ウィキペディアにも載っているほどで、実行犯の女性が2年ほどの拘留の後に帰国している、と言う所まで判るのだが、それでも尚、こうして当時の映像と関係者の談話を手際よく組み合わせて見せられると大違いだ。

 2人の女性の生い立ちから、それまでを描き、彼女らが決して「暗殺者」などではなかった事はよく判るし、マレーシア政府が当初から北朝鮮との関係悪化を恐れて、北朝鮮関係者にはおざなりな捜査しかせず、国家として体面を保つために2人を犠牲にしようとした事、そこに正義を求めた弁護団が立ち向うのは、劇的な展開だ。その裏で、インドネシアとベトナムの両政府が自国民救出の為に動いていた……と言う逆転劇は、痛快なほど。この辺り、ドキュメンタリーと言うよりも、エンターテイメント作品となっている感さえもある。

 そして、社会性もしっかり。
 ベトナム出身のドアンは、大学を出ても就職先はなかったし、インドネシア出身のアイシャは、貧困故に小学校しか出ていない……そうした、アジアにおける女性の地位や社会的立場の弱さが、北朝鮮に利用された現実には考えさせられる(女性の社会的格差については日本も褒められたものではないのだが)し、ふたりの行動記録がしっかり残っている現代社会のあり方には、ちょっとぞっとするような部分もある。
 黒幕となった北朝鮮については、状況説明だけに終わるのが物足りない人もいるだろうが、こちらは状況証拠だけで黒確定だし、そもそもそれを描く映画ではない。
 ドキュメンタリーとして、知的好奇心を満足させながら、きちんとエンターテイメントとなっている本作の完成度は高い。傑作ドキュメンタリーと思う。


 映画の後、山手線で新宿へ。昼食の後、シネマート新宿で、
 「フライト・キャプテン 高度1万mの奇跡」。
  これは、2018年に起きた飛行機事故を、「インファナル・アフェア」シリーズのアンドリュー・ラウ監督が映画化した航空サスペンス。
 主演は、「マンハント」のチャン・ハンユー。

 2018年5月14日、重慶からチベット自治区のラサに向かう四川航空3U8633便は、リュー機長をはじめとする9名の乗員と、乗客119名を乗せて飛び立った。
 だが、チベット上空、高度1万メートルで、突如操縦室の窓ガラスにひびが入り、砕け散ってしまった。副操縦士のチェンは機外に吸い出され出されかけるが、辛うじてリュー機長が引き戻した。しかし、機は与圧を失い、酸素マスクを使用するも、酸素は55分しか持たない。高度を3000mまで下げたいが、ここはチベット、標高は平均で4500m。6000m級の山々がそびえ、7000m以下に高度は下げられない。
 リュー機長は、氷点下30℃の外気に晒される操縦席で凍えながらも、成都に向かい、緊急着陸を要請するが、その行く手を巨大な積乱雲が阻んで……

 この映画、中華人民共和国建国70周年を迎えた2019年に、国威高揚の為の「愛国3部作」の1作として公開され、450億円を超える大ヒットを記録している。
 もっとも、国威高揚映画に分類されたとは言え、本作は、リュー機長ら、危機を乗り越えた旅客機クルーの活躍を描くものであり、ナショナリズムを強く押し出すものではないので、それほど抵抗なく観られる。

 映画は“お仕事紹介”映画風に航空機運用のプロセスを詳細に描いて始まり、これはなかなか格好よく、見応えもある。
 個性的な乗客を登場させ、グランドホテル形式にする辺りは、アンドリュー・ラウ監督ならではの香港映画的センスだろうか。

 映画の中心となる事故の描写は、さすがに脚色してあるだろう、と思ったが、意外にも、事故のプロセスとその後の展開は実際にあった事の羅列だと言う――正に、事実は小説より奇なり、と言うことか。

 ただ、描写の中心はパニック描写よりも、そうした危機に臨んだプロの矜持であり、実際、一番心打つシーンは、チーフCAが、パニックに陥りかけた客室内を、「お客様の安全が第一」と言う思いを一途に伝える、その気迫だけで抑え込んでしまうシーンだったりするのだ。
 勿論、精密なセットと、実機を使って描写する機内外の描写はリアルで迫力もあり、飛行機の描写の完成度は非常に高い。この辺り、四川航空どころか、中国の民間航空会社の支援のおかげだろう……勿論、その反面、悪くも描けない訳だが。

 基本的に娯楽作であるとは言え、CAが美女揃い(エンドロールまで観ると判るが実際そうだったのだから仕方ない)なのはともかく、管制室からコントロールタワー、果ては飛行機オタクたちにも美女がいる、と言うサービスは行き過ぎのようにも思えるし、個性的な観客たちも充分に物語に活かせていない……その一方で、着陸後の描写がだらだら続くなど、映画としての構成は今ひとつだ。
 
 だが、アメリカ映画が得意として来た、こうしたディザスタームービーについても、今後、中国が進出するのは間違いのない所ではないだろうか。
 この内容の映画を量産出来る、となると、それはかなり現実味が高いことのように思える。

  
 この映画、16:07終了の筈だったが、上映が10分ほど押していた。結局、16:15、エンドロールの途中で席を立ち、次の映画館へ急ぐ……ほんとは、エンドロールの途中で席を立つのは主義に反するのだが、何せもう時間がない。
 次は、新宿武蔵野館で、16:20からなのだ。
 シネマート新宿から、新宿の雑踏の中を小走りに新宿武蔵野館に向かい、16:23、予告編上映中の館内に滑り込む……何とか間に合った。

 映画は、
 「オン・ザ・ロック」。
 これは、ソフィア・コッポラが監督・脚本を務めたコメディ。
 出演は、ビル・マーレイ、その娘役を「カムバック!」のラシダ・ジョーンズが演じている。

 ニューヨーク。アラフォーの母親、ローラは、夫のディーンが新しく立ち上げた事業所の同僚と残業と出張を繰り返すようになり、良からぬことが起こっているのでと疑いを抱く。
 つい、プレイボーイの自分の父親、フェリックスに懸念を漏らしてしまったローラは、得意分野だけに、妙に乗り気になったフェリックスと2人で夜の街へと繰り出す事になって……

 これはちょっとのれなかったなぁ……まぁ、「ロスト・イン・トランスレーション」のようにカッコつけ過ぎる事なく、巣の自分を晒すと共に、ビル・マーレイが芸達者な部分を見せて支えるのだが、それでも、最後まで心動かされる事がなかったのが正直な所だ。
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