僕は香港に行った事がありません。
かつて、東洋の魔窟と呼ばれた九龍城塞があった頃には、
行ってみたいと思った事がありましたが、
今は公園になっているとの事ですので、特に行きたいとは思いません。
香港のイメージは、1955年の映画「慕情」で形作られたようにも感じています。
主演したジェニファー・ジョーンズと相俟って、
東洋の真珠と呼ばれるようになったような気がしています。
香港は、1842年のアヘン戦争後の南京条約で香港島が清国からイギリスに割譲され、
1860年のアロー戦争後の北京条約で九龍半島が割譲され、
更に、1898年の展拓香港界址専条によって、
九龍以北、深圳河以南の新界地域が、99年間イギリスに租借されていました。
この99年間と言うのが、どのような理由から設定されたのかは分かりません。
条約締結の当事者は存命していると考えられない年数ですから、
ある意味無責任な感じがしないでもありません。
そして、99年が経過した、
1997年7月1日に、
香港は正式にイギリスから中華人民共和国に主権移譲されました。
イギリスが割譲を受けていた香港島なども同時に返還されています。
イギリスから返還された際、香港特別行政区が設立され、
いわゆる「一国二制度」が始まり、2047年までの50年間続くものとされて来ました。
なお、この間の1941年から1945年まで、日本が統治していた時代があり、
日本軍政庁が置かれ、公用語を日本語とするなどの植民地支配を行っています。
こうした経過の中で、一昨日、中国の全人代常務委員会は
香港国家安全維持法を香港立法会を通さずに全会一致で可決し、
昨日から発効しています。
同法は香港に高度な自治を保障する一国二制度の
事実上の崩壊だと指摘されています。
昨日、デモ隊と香港警察の衝突が起こり、
同法に基づいて初めて10人を逮捕したと発表されたほか、
これを含め約370人が身柄を拘束されたと報じられています。
こうした中国に対して、日本やイギリス、フランス、ドイツなど27カ国は
6月30日、スイス・ジュネーブの国連人権理事会に、
「香港国家安全維持法」を施行した中国に対して
懸念を示す共同声明を発表しています。
一方、中国国営新華社通信によると、
同理事会で6月30日、キューバ政府の担当者は
同法を支持する50カ国以上による共同声明を発表しています。
中国から巨額のインフラ支援を受ける途上国と、
同法を強く非難する欧米諸国との温度差が表面化していて、
新たな対立の芽になるかも知れません。
どうして、中国が今回の法制定に至ったのかはよく分かりませんが、
昨年末、香港民主化デモによって、
逃亡犯条例改正案が撤回された事が大きく影響しているように感じています。
現在の中国にとっては、民主化問題はアキレス腱のようになっているのでしょう。
かなり神経質になっているような気がします。
香港は、面積も狭く、工業もそれほど優位にある訳ではありません。
香港の強みは、
ニューヨーク、ロンドンなどと並ぶ金融サービスの拠点とされてきた事でしょう。
この地位が変わる可能性も高いかも知れません。
ともかく、今回の法制定によって、米中対立も激化しそうですし、
世界的に大きな影響を与えそうな気がします。
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