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2020年06月10日16:20

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太陽の王子 ホルスの大冒険(at 渋谷東映)

 コロナウイルスの影響で、映画館も長らく閉館。そのため、私もほとんど
外出していなかった。緊急事態宣言が解除され、みな全てが手探り状態だが
映画館もようやく上映再開されるところが出て来た。その一つの渋谷東映で
「太陽の王子 ホルスの大冒険」が再開後のラインナップにある、とマイミ
クさんのつぶやきで知り、私自身もおっかなビックリだが、映画館へのサポ
ートの意味も込めて出かけることにした。

 私にとって、「名画」とは端的にまとめると「誰も見たことのない景色、
起伏に富んだストーリー、魅力的な登場人物、観客の身体を揮わせる雄大な
音楽」という結論になる。

 そういう意味で「ホルスの大冒険」もまさに映画館で観るべき「名画」
 映画館で観るのは2度目で、1度目は、ノヴェチェントで大方斐紗子さん
の生ホルスが聴ける、というちょっと信じられないようなイベントだった。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1948884842&owner_id=6645522

 今回の渋谷東映の上映、特に告知されていないので私の眼では、判断が
つかないのだが、昨年制作された4Kリストア版だろうか。プリントはと
ても美しかったし、目立つ傷もなかった。

 「全てが名シーン」と言える「ホルス」だが、私が特に好きなのは、
ホルスとヒルダが初めて出会う廃村である。そのくすんだ物寂しい景色は、
まさにアニメ映画でしか観られない、ヒルダの心そのもののような美しさ
と寂しさ。そこにヒルダの美しく物悲しい歌が初めて流れてくる。まさに、
東映動画のアニメーション映画の一つの頂点だと思う。
 もちろん、人間の躍動感と幸福感あふれる結婚式シーンや、平和な村を
蹂躙する、狼や鼠の大群の動きも素晴らしい。

 ホルスの登場人物たちは、ごく大雑把に分ければ、グルンワルドが悪を
体現する悪魔、ホルスは善を体現する人間(太陽の王子)で、善が悪に
打ち勝つ、というのが大きな物語である。しかし、そういう勧善懲悪にお
さまらないところにホルスの魅力は多くを負っている

 当然、数あるアニメのヒロインの中でも最高のヒロインの1人、ヒルダ。
悪魔の妹でもあり、寂しい人間でもある。このヒロインの心の揺れが、
物語を動かしていく。悪と善の二面性を持つヒロイン。
 ホルスとの印象的な出会い。誰もを虜にする美しい歌。しかもその歌詞
は、腕を切り落とされる熊、火にくべられるカワウソ、そのメロディから
は想像もできない残酷なものだ。そしてその歌は確実に村人たちを分断し
ていく。ホルスから奪ったオノを手に、村はずれで1人佇み、祈ると、
その足元から鼠の大集団が動く絨毯のように湧き出て村を襲う。これも
屈指の名シーンだろう。

 そして物語冒頭からはっきりと打ち出されているのが、人間は人間同士の
みにくい心から滅びていくということ。悪魔は、人間のそのみにくい心
につけ込んで、人と人とのつながりを絶ってバラバラにし、人間を滅ぼす。

 ホルスを助けて迎え入れてくれた東の村。悪魔に狙われるこの村の村人
たちも例外ではない。最初は、お化けカマスを倒し、村を救ってくれた
英雄としてもてはやしていたホルスに、ヒルダを利用したドラゴの策略に
ハマると、簡単にみなが石を投げ追い出そうとする。

 そして間宮芳生の素晴らしい音楽。この音楽も「結局共産主義映画音楽
じゃね」という言い方がされるのを耳にしたことはあるが、確かに、そう
いう影はあるかもしれない。しかしそれ以上に明確なメッセージは、
人間の絆の力強さだろう。収穫の音楽、結婚式の音楽、クライマックスの
悪魔を太陽の光によって追い詰めていく音楽。

 コロナウイルスによって、いや、その以前から、私たちは大小を問わず、
「分断」の危機に直面している。弱いものは虐げられ、強いものは奢り、
誰もが自分のことしか考えられない、想像力の欠如してしまった社会。
 このままではいけない。みながバラバラになる前に、できることを
少しでも…

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