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2020年06月09日12:04

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(読書)『100分de名著・純粋理性批判』(その2)

昨日、『100分de名著・純粋理性批判』の第2回放送があったので見ていた。今回は、「科学の知はなぜ共有できるのか」ということがテーマなので、非常に興味があった。しかし実際にテレビを見てみると、内容の難しさ、複雑さにたいして1回の放送時間が25分と短いために、明らかに「時間切れ」という感じで終わってしまった。

番組では、まずカントが言う感性と悟性の違いについて簡単に復習したあと、経験概念と純粋概念について解説が行われる。カントが目標としている哲学の構築は、ヒュームの「イギリス経験論」の哲学を乗り越えることである。「イギリス経験論」とはどんな哲学か。これを説明するために、番組では、ロウソクの炎の上にアルミホイルをかざし、その上にチョコレートを乗せる実験を使って説明していた。

ロウソクの炎の上にかざされたアルミホイルは、当然のことながら熱せられて温度が上昇する。その温度上昇の熱はさらにチョコレートに伝わり、チョコレートは溶ける。科学的には、チョコレートが溶けることは必然の成り行きと考えられ、「本当にいつも溶けるかどうか」は何度も実験しなくとも分かることと了解されよう。だが、ヒュームが唱える「イギリス経験論」によれば、「チョコレートが溶けることは、人間が経験からそのように勝手に推察しているだけであって、いつもいつも溶けるとは限らない」とするのである。

このようなヒュームの哲学に立脚すると、自然科学が息づく余地がなくなってしまう。カントの狙いは、ニュートン、ガリレオ、コペルニクスといった自然科学の創始者たちの自然科学と融合しうる哲学を打ち立てることにある。このあたりを説明するために、経験概念、純粋概念、分析判断、総合判断、そして「ア・プリオリな総合判断」といったカント独自の「ターム」が次々と紹介される。そして「純粋統覚」という言葉が飛び出した時点で番組は時間切れとなった。

今回の番組の教材である「純粋理性批判」は、この「100分de名著」の番組史上、最難関であるとされる。たしかにそうだろう。大学の文学部哲学科の授業でも、多分通年の4単位相当の講義時間がわりあてられても不思議ではないだけの質量がありそうだ。それを100分で概説しようというのだから、時間切れになるのはやむをえまい。

【関連項目】

(読書)『100分de名著・純粋理性批判』(その1)

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1975889897&owner_id=3879221

NHK番組HP

https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/98_kant/index.html#box01

第2回 科学の知はなぜ共有できるのか

【放送時間】2020年6月8日(月)午後10時25分〜10時50分/Eテレ

【再放送】2020年6月10日(水)午前5時30分〜5時55分/Eテレ2020年6月10日(水)午後0時00分〜0時25分/Eテレ※放送時間は変更される場合があります

【指南役】西研(東京医科大学教授)…著書『哲学は対話する』『読書の学校・ソクラテスの弁明』等で知られる哲学者。

【語り】小坂由里子
多様な感覚的素材を「時間」と「空間」という形式を通して受容する「感性」。「時間」と「空間」は客観世界にあるのではなく、私たちの認識主観にあらかじめ組み込まれている「形式」だとカントは考える。いわば、私たちは「時間」「空間」という眼鏡をかけて世界を認識しており、その規格が共通だからこそ科学や数学が客観性をもつというのだ。しかし、それだけでは認識は成立しない。もう一つの共通規格である「悟性」が、そうした感覚的素材を量、質、関係、様態といった「カテゴリー」に当てはめて統一することで、初めて万人が共有できる「知」が成り立つという。第二回は、認識能力の限界を見極めるカントの洞察を通して、「人間が何を知りえて、何を知りえないか」を明らかにし、科学的知識がなぜ共有できるのかを掘り下げて考える。
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