オーバーシュート

前回の専門家会議の会見では「クラスター」（感染集団）という専門用語を知ったが、今回の会見でまた「オーバーシュート」(感染爆発)という専門用語が耳に残った。
(今年の流行語大賞は間違いなく「コロナ」だろう。）

専門家会議副座長の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長は「この感染症は不明なところが多いが、最も重要なのは気がつかないうちに感染が広がり、爆発的に患者が急増するオーバーシュートが起き、医療供給体制に過剰な負担が起こること。そうした事態を回避するための提言をまとめた」と述べた。

昨日の深夜の会見に先立ち、大阪府は独自で「この３連休、大阪と兵庫の不要不急の往来をなるべく自粛するように」との公式通達を出した。「厚生労働省の専門家から、大阪府・兵庫県における感染の急激な増加の可能性について報告を受けた」云々がその理由らしい。兵庫県も同じ通達を出している。

専門家会議では、感染の広がりについて「持ちこたえているが、一部の地域で拡大が見られる」との発表だった。
なるほど、大阪も兵庫も感染者が100名に達しており、大阪と兵庫がその拡大傾向にある「一部の地域」（＝ホットスポット）に匹敵するのであろう。
しかし、この1週間大阪に通勤している庶民には拡大傾向というのはぴんと来ない。

通勤電車は相変わらずまぁまぁ混んでいるし、休み中子供は元気に遊び歩いているし、コロナ報道も慢性化してて、関係者以外は危機意識が薄い感じがする。マスクだけはポーズでみな付けているが。
毎日ポカポカ陽気な上、公立高校の合格発表も終わったようで府民はたいがい自粛にうんざりしてきている。明日あたり出かけようと思ってた人多いはず。
検査を受けていないだけで水面下で感染はどんどん広がっているかもしれないが、はっきりいって今市中はどういう段階なのか専門家でも予測できないのではないだろうか。

昨夜(3/19)大阪の飲食店はなかなかにぎわっていた。３月は決算や人事異動の季節で通常なら歓送迎会まっさかりのはずなのだがコロナ流行により団体の宴会はほぼ禁止となっている。しかし個人的な飲み会や有志による打ち上げや送別会は水面下で行われている。
家族単位でも、臨時休校から２週間たち、親も子も自宅待機にうんざりしてきており、経済活動の停滞をなんとかしてほしいという気持ちもあり、このお彼岸３連休は出かけようかと思っている人が多かったと思う。今回の緊急通達はその出鼻をくじかれた形だ。
強制ではないので予定や用事があって出かける人は出かけるだろうが、ただぶらぶらしたいだけの人は外出を控えるかもしれない。特に高齢者は感染したら危ないといわれているから、息子や娘から外出を禁じられていると聞くし、多少は抑止力になるのかもしれない（高齢者は真面目だから）。

さて私は一昨日(3/18)仕事終わりに友人に、４月中旬に予定している旅行の最終打ち合わせをしようと誘われた。コロナが猛威をふるっている今のご時世に旅行に行くかどうか（国内旅行だが）悩むところなのだが、私以外の二人は行く気満々である。実は私はどっちでもよく（東京オリンピックが延期になっても全くどうでもいいのと同じで）この旅行が延期になったとしても中止になっても全然問題ないと思っている。もちろん友人らとのこの旅行を計画したのはコロナ騒ぎが起こるずっと前（去年の秋ころに旅行の話が持ち上がった）なので、手配に奔走してくれた友人には感謝を禁じ得ないのだが。
航空券は全額FIXされてしまったが、ホテルやオプションはまだキャンセル可能らしい。一か月前に話したときは４月にはもうコロナは収束してるかもと楽観的に思っていたがこの調子だと終息までまだまだかかりそう。さてどうする？それでも決行するのか。
家族はどうせ「わざわざこんなときに行かなくても。やめといたら？」っていうに決まってるしな。

とあるサラリーマンの言葉
「職場で同僚とコロナに関して話す話題は、社内での感染者第一号にはなりたくないという事です。外出自粛要請が出されて会社から感染者が出た場合ビルの閉鎖、営業活動の停止、家族に対する差別など多大な影響が発生しますが、自分の感染が発端になることにはとても耐えられないという考えを皆持っています。」
コロナ感染症の罹患そのものが怖いのではなくて、もし自分が感染したり感染させた後の周りへの影響が大き過ぎて恐怖なのだ。

社会的立場のある人だけでなく、ただのオバハンでも、子供でも、コロナ感染者となれば個人情報を全部あばかれて、行動調査される。いつ誰と会って何をしたか。濃厚接触者を特定するためにプライバシーを侵害される。それが恐ろしい。
たとえば大阪のライブハウスで感染した高知県の50代主婦。（どうせ夫に言っても理解されない）好きなアーティストのライブに行っていただけ。誰にも迷惑かけない主婦のささやかな楽しみで完全なプライベート。でもそこで感染し地元で感染を広げた、となると、家族に迷惑をかけ、風評で家庭崩壊にもなりかねない。

兵庫県と大阪府近隣ではいま急速に医療機関や老人保健施設で感染が広がっている。介護の現場の職員は、休みの日でも自宅待機、友人などと接触しないように言われているらしい。感染源にならないために行動規制されている。介護の現場はなにもなくてもストレスがたまる職場なので、プライベートでライブに行ったり遊んだりしてストレス発散しバランスをとっていたのに、それもできなくなって職員の人たちは気の毒だ。医療関係者、教育保育関係者もそうだろう。彼らの不自由や拘束を自分ごとと考えらない人たちを好きにさせている状態が今なのだろう。自粛は要請ではあって強制ではないのだから。
いまの状況下我々が無神経に行動することで、体力的にも心理的にも疲弊している最前線の彼らを一層追い詰めることになる。オーバーシュートが起こる可能性は十分あるってことだ。
その推測が当たるか当たらないか１〜２週間後に結果が出るだろう。




■大規模イベント実施に「感染拡大のリスク」　専門家会議
(朝日新聞デジタル - 03月20日 00:24)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6015636