コートは前開き、続き

　日本のファッション記事なんかを見ていると、こんな場合はコートは前を開けて着る、とか、こういうときはバッグを斜めがけにして背中に回す、とか、こういう体形なら腕まくりをする、とかいう「着こなし」というのが紹介される。日本にいるとそれに違和感を感じないけど、こっちにいるとなんだかそれってすごく不思議なことに思える。
　防寒のためのコートの前を開けて着る、というのは、やっぱり気温がマイナス10度とかのときには考えられないし、スリに気をつけないというのは非常識だから、おしゃれのためにバッグを背中に回すなんてこともない。必要もないのに腕まくりもしない。（と思う。）
　マフラーなんかも、寒ければ容赦なくぐるぐる巻きにするし（頭を小さく見せるためではなく）、午後暑くなればただ肩にかけているし（縦ラインを強調するためではなく）、マフラー持ってないけど首元が寒いときは、（セーターを巻くのが粋だからではなくて、それしか手元にないから）セーターをぐるぐる巻きにする。それだけのことだ。

　そういう背景があって、藤吾さんが、コートのボタンを閉めない、というのが、冬の暖かい日本の若者がコートのボタンを閉めないのよりも、よっぽど新鮮というか、えらくかっこつけたもんだ、と、思うんだな。