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2020年03月10日15:30

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ギャオスは何を選ぶのか、その2

「どうした。心配ごとでもあるのか」
「食欲ないんだよ。小さくなったろう。俺、言ったよなあ。星に帰ると王子なんだって。あれ、嘘じゃなかったんだよ。俺たちの言うこと、たいてい嘘だけどよ。あれは嘘じゃなかったんだよ」
 あいつらの言うことは、たいてい嘘だということに驚いたが、そこに驚いていい雰囲気ではなかった。何しろ小さなギャオスはその不器用な羽根を必死にたたんでココアを飲もうとしているのだ。しかも、運ぶ先は三角の嘴のような場所なのだ。幸い、舌が長いらしく、飲めるようではあるが、熱いのが苦手らしくて、飲んでいるのか、熱いコーヒーを冷まそうとして、フーフーと吹いているのか分からない。口から超音波を吐くらしいのに、熱いものは苦手なのだろうか。
 そういえば、ガメラは口から火を吹くくせに、お茶はぬるめがいいと言っていた。
「女だって言うのも嘘なんだろう」
「ああ、まあな。生物学的には男な。でもよ。ギャオスっていうのは、出産は女がするけど、育児は男がするのよ。基本、ほら、俺たちは卵だからさ。卵を温めて孵して、体内の食物を雛用に消化して与えるのは男なのよ。最近はそれを人工孵化装置でやるんだけどよ。基本は孵化は男の役目なのよ。でもよ。それって、地球じゃあ女みたいなものだろう。だからいいかなってね。だってよお。腹立つんだよ。あのコモドとかガメラの尊大な態度がよ。男は闘い女は家庭を守るみたいなこと言うだろう。俺たちの星じゃあ、家庭を守るのは男だからよ」
 そうか。だからガメラは任務として子供を守るが、ギャオスは根っから子供好きだったのだ。幼い生き物を守ろうとするのは、彼の本能だったのだ。
「まあ、それはいいとして、どうしたんだよ。そんなに小さくなるほど食欲のない理由があるんだろう」
「ああ、王位継承で、俺に帰って来いって言うんだよ」
「帰ったら王様なのか。すごいじゃないか」
「王様になんかなりたくないって。このまま地球で暮らしたいんだよ。地球の子供たちが可愛いくなってしまったし、ガメラとケンカするのも楽しいしな。こんな美味しいココアが飲めるのも地球にいればこそなんだよ」
「でも、王様なら贅沢出来るじゃないか」
「贅沢な鳥の餌なんだぜ。お前、十円の駄菓子のチョコレートと一万円の鳥の餌、どっちが好きだよ」
「いや、でも、そういうものなんだろう。お前の身体っていうものが」
「それは地球を知らない者の話だぜ。いや、本当は違うな。食べ物なんかどうでもいい。俺、とにかく好きなんだよ。地球がよ。なあ、どうすればいい」
 そんなこと筆者に分かるはずもない。この場所がどうした空間になっているかは知らないが、筆者はただのどうしよもない元エロ本屋なだけなのだ。ここにいるのは偶然であって、他に何の取り柄もないのだ。明日の生活でさえ、おぼつかないのに、宇宙規模の相談になどのれるはずもないのだ。
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