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2020年02月07日22:11

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新旧ピンク

 シネロマン池袋で鈴木敬晴監督91年作品「全裸監督 アダルトビデオの作り方」(公開題『実写本番ONANIE』)を観る。主人公のAV監督は、映画に情熱を燃やす自分の意識についてこられないスタッフや、演技の出来ない主演女優に苛立つ。これは鈴木敬晴監督の心情を描いた作品ではないか。
 しかし監督はただ怒っているだけ、現場に来て離婚を切り出す妻や、過去の女のイメージも存在するだけで、監督の心情が伝わってこない。意欲作だが空振りに終わった。鈴木監督が本領を発揮するのは、この後の「官能団地 悶絶異常妻」や「本番裏稼業」だ。
 「谷ナオミ しびれる」は73年の「いろ包丁」の改題だが、なぜか78年作品となっている。この事情は謎だ。姿良三こと小川欽也監督作品。小川監督は小川和久時代から、ほとんど面白い作品を観た記憶がなく、私が大蔵映画を見放す原因を作った1人だが、この作品は予算があり、しっかり画面を作っている。
 ヒロインの女板前と、常連客が連れて来た男が互いに意識する場面の演出など、後の小川監督には考えられない。後半の旅行場面は今の小川組でもあるが、ただの旅の記録ではなく、しっかり映画になっている。
 さらに役者陣がいい。谷ナオミは私にとって日活ロマンポルノの団鬼六物だが、この作品では全く違った個性を見せる。山本昌平も悪役ではなく、高倉健のような演技。これは楽しめる作品。
 上野オークラで竹洞哲也監督の新作「ひとり妻 熟れた旅路の果てに」。結婚記念の旅行で青森にやって来た妻。夫は死んだ同僚女性の葬儀のためまだ来ていない。かつて社員旅行で青森を訪れたときを回想する。
 現在と過去を行き来し、妻の心情を描いた作品だと思った。ところが途中からナレーションが妻の同級生、亡き同僚女性、そして夫と変わり、同じ場面を視点を変えて見せる重層的な描き方が面白い。
 次第に妻の印象が変わってくる。妻が隣室の同僚女性に聞かせるためにセックスする場面より、友人が指名手配犯とのセックス場面、夫が幻視する同僚女性とのセックス場面の方が幸福感がある。「程よい大学、程よい仕事」を経て結婚した妻より、影のある女2人に気持ちが入るのだ。
 友人と同僚女性にさりげない悪意を見せ、ついには友人の恋人を通報してしまった妻の成長があるかと思えば、最後に亡き同僚女性のキーホルダーを投げ捨てる。ここは夫に返して、向かいあってほしかった。
 また、妻が浜辺で出会う作家の描き方もどうか。妻との会話から人間関係が見えてくる面白さがあるが、作家なら「レイプされればいい」なんて言葉は使ってほしくない。いきなりキスするのもがっかり。
 竹洞監督の力作だが、やや不満なところがあるのが残念だ。
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