mixiユーザー(id:1107882)

2020年02月06日08:59

46 view

「強健術」案内154

今回は、『独特なる胃腸の強健法』に初登場する「上体操練法」について見ていきます。この方法は、道具をほとんど用いない「強健術」の中でも珍しく、「鉄の棒」を用いる運動法です。後にこの型は「中心道 腰腹練修法」と名付けられ、重要視されることになります。

上体操練法
イ、鯨尺で、長さ二尺(約76cm)、重さ三百匁乃至五百匁(1035g〜1725g)位の、鉄棒を、掌を前方にして握る。両手の間隔は、肩幅。
ロ、両足を、直角に踏み開いて立ち、爪先と爪先との間隔、各人の仲指と拇指とで計って三つ。即ち約一尺六七寸(60cm〜64cm)位。

ここの、「仲指と拇指とで計って三つ」という部分は分かりづらいので、解説します。まず親指と人差し指、仲指でピストルの形をつくります。次にその状態で、人差し指を折り曲げると親指と、中指が広がった状態になります。この指の状態で、3つ分の広さに両脚を開くという意味です。この独特の指の測り方は、後の強健術の脚の広さを定義づける単位となります。これは、各人の体格に合わせた脚幅を定義できる非常に優れた方法だと思います。

ハ、姿勢を真直ぐにする。
ニ、上体の力を抜き、腰を充分に反る。上体は真直。
ホ、そうすれば、体の重さが、爪先へも多く落ちない。踵へも多く落ちない。即ち体重が両足の中央へ落ちて、最も正しい姿勢となる。

これまで、「腰を反る」状態では重心は、「爪先」に落ちましたが、ここでは爪先へも踵
へも落ちずに、両足の中心に落ちるという点にご注意下さい。そして、その状態の姿勢を「最も正しい姿勢」としていることも重要です。

ヘ、両眼をパッと見開き、視線を定め、精神を落ち附ける。
ト、上腕を、体側に着けたまま、両肘を曲げて、鉄棒を、胸部の上へ、両肩の前方に持ち上げる。
チ、余り急劇にしない。
リ、上げきった時、キュッと、両手を握りしめ。鉄棒を固く掴む。
ヌ、其の鉄棒を上げると共に、穏やかに力強く、息を吐く。
ル、呼吸停止、三秒間。
ヲ、同時に、腰と腹とへは、等分の力が這入る。
ワ、姿勢は少しも、変わらぬよう、注意することが肝要。
カ、伸びもしない。縮みもしない。(ややもすると、鳩尾の処で屈み度がるものであるから、気を附けなければならぬ。腰は反ったままである。)

この操練法の形は、バーベルを用いたいわゆる「バーベル・カール」というものに近いと思われた方もいらっしゃるかと思いますが、目的は腕の筋肉の鍛錬ではありません。「腰と腹とへは、等分の力が這入る」という解説があるように、「腹」と「腰」に同じ程度の力を入れることが目的です。ですから、これまで「腹」に力を入れる際には、みぞおちをくぼませ、腰を丸くしていましたが、今回は「腰は反った」まま、「姿勢は少しも変わらない」と解説されているのです。
この部分は、大変重要です。これまでは、息を吸う際は「腰を反って」伸び上がって力を入れ、息を吐く際には「腰を丸め」て身体を縮めて「腹力」を造るというように、腰を動かし、また重心も爪先から踵へと移動していました。それに対して今回は、「姿勢は少しも、変わら」ず、「伸びもしない。縮みも」せず、「腰と腹とへは、等分の力が」入る点が最大の違いです。この姿勢は後に「腰腹同量」と呼ばれる、強健術の最も重要な姿勢となります。そしてこの姿勢によって、「腰力」でもなく、「腹力」でもない「腰腹同量」の「中心力」が形成されることになります。

ヨ、静かに、両腕を下ろしながら、穏やかに、息を吸い込む。
タ、両手を下ろす時、下した時、何れも、全身に力を入れない。
レ、息を吸いきった処で、呼吸停止三秒間。
ソ、そして第二回の練修に移る。
ツ、回数は十回。
ネ、此の練修は、上体を鍛えて、腸胃の機能を正しくする。
(独特なる 胃腸の強健法 P.350〜352)

以上、非常にシンプルな型です。やや重量のある鉄棒を使用し、その形もバーベルなどを使用した「カール」という運動法に良く似ているので腕を鍛える運動法と間違われるのですが、その目的は途中の解説でも述べましたが、「腰腹同量の中心力」を造り上げる点にあります。後に、春充はこの姿勢によって「正中心落節」という境地に至り、晩年はほとんどこの型と次回以降に見ていく「下体操練法」のみで強力な体力と清明な頭脳を維持したと言う意味で、この型は強健術の中でも非常に重要なものと言えます。

(写真は、「上体操練法」を行う春充)
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する