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2020年01月13日16:15

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「つつんで、ひらいて」〜紙のぬくもり、心の豊かさ

装幀者・菊地信義を追ったドキュメンタリー。彼は過去40年以上にわたり、1万5千冊以上の書物を手がけてきたブックデザインの第一人者。ことし77歳、実年齢よりずっとお若く見える彼が創作に勤しむ日々を3年にわたってカメラが記録。監督は“是枝裕和チルドレン”のひとり、昨年のいまごろ柳楽優弥主演の「夜明け」で長編映画デビューした広瀬奈々子。

たとえ読書好きでなくても、彼の装幀による美しい書物を一度は手にとったことがあるはず。本の表紙における文字の配置そして紙質へのこだわりが特長。もっとも知られているのは講談社文芸文庫の共通フォーマットか。私にとっては島田雅彦初期作品いくつかの文字遣いが印象的かな。俵万智「サラダ記念日」が彼の装幀だとはいまのいままで知らなかった。

作家古井由吉をはじめ、周辺人脈へのインタビューもいくつか。まな弟子にあたるという若き装幀家・水戸部功は「(菊地氏が装幀に関する)すべてのことを既にしてしまって、もうやることがない」と。いやいや、彼自身も優れた作品をいくつも残しているんだけど(関係ないけど彼はとても感じのいい知的イケメン、世間とりわけテレビとかが放っておかないと思う)。

出版社の編集者や印刷所の技術者、本に関わるひとたちの言葉も興味深く、ふだん何気なく書店で手にしている一冊の本の制作に、どれだけの多くのひとの愛情と知恵と工夫と努力がこめられているかがよくわかる94分。"デザインする”の訳語が“こしらえる”だという主人公の言葉が印象的、ちなみにこの作品のパンフレットの装幀ももちろん菊地氏の手になるものです。
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