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2020年01月10日23:00

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新作歌舞伎 風の谷のナウシカ

昨年の春、尾上菊之助が『風の谷のナウシカ』を歌舞伎化して上演するというニュースが入った時には色めき立った。
菊之助のナウシカ、というのには実際あまりピンとこないが、もうしそうであるとすれば、皇女クシャナにふさわしいのは、「彼」しかいないのではないか?!
我々は、つまり私と相棒は、2年前に新作歌舞伎『マハーバーラタ戦記』を観に行って、主人公が運命的に組した悪の陣営のトップ、ドゥルヨーダナ姫に扮した中村七之助の美と気品に、完全にノックアウトされていたのだ。
 マハーバーラタ戦記
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七之助は、大河ドラマ『いだてん』の主人公を演じた中村勘九郎の実弟。
七之助本人も、満州で若き日の志ん生(森山未來)と行動を共にした噺家・三遊亭圓生の役で出演していたが、今や女形の大スターとなった彼に、「そうでげす」なんて台詞を喋らせる宮藤官九郎には恐れ入った。
しかし何といっても驚いたのは、若くして半白髪の美しかった七之助が、舞台化粧を落とすといつの間にか父親の勘三郎に、表情といわず、独特の鼻声といわず、まるでそっくりになっていたことだった。
数年前までは「あのカンクローの二人の息子」という程度にしか認識していなかった兄弟が、いつの間にやら歌舞伎ファンでも何でもない我々の間で、頻繁に話題に上るようになっていた。
『いだてん』はもとより、TVで七之助が出ていると知ると、思わずチャンネルを合わせてしまう。
昨年は、相棒と二人して新春邦楽生中継みたいな番組まで観てしまった。
芸の力のものすごさよ。


さて、肝心のナウシカ。
配役はやはり、菊之助と七之助の二枚看板だった。
原作で7巻に及ぶナウシカの全ストーリィを完全舞台化するという。
菊之助の長年の夢だったそうだ。
ジブリおよび宮崎駿からは、タイトル等は変えるべからず、記者会見なども協力しないと、初めて許可を出すんだから、やらせてもらえるだけ有難く思えと言わんばかりの態度をとられている。
菊之助は、それでもやりたかったのだな。


チケット入手は、困難を極めた。
通常の歌舞伎公演は、昼の部と夜の部で別の演目を披露するが、『風の谷のナウシカ』は長尺の新作ということで、昼夜通しで上演し、チケットは昼と夜がバラバラに販売される。
つまり、日曜日に後半部分の夜公演を先に観て、翌週の木曜に会社を休んで昼公演を観る、みたいに前後する事態もありうるということだ。
価格は、桟敷席が1万8千円、1等席1万7千円、それから1万円、6千5百円と下がってゆき、天井桟敷は3千円だった。
これを昼夜2枚買わなくてはならない。
土日の3千円が買えれば御の字だが、だめなら何とか6千円の席をゲットしたいよね、二人で4枚買うんだし。
ただ、夜を先に観て、後の日に昼ってのは、ちょっとな。
そういってチケットハウスの分担を分けて、PCを立ち上げて発売時刻前にはスタンバイ。
よし、アクセス開始!

予想していたことだが、わずか数分で、チケット争奪戦には完敗した。
ま、そうだよねー。
ははは、と笑いながら、大ハズレかもわからない歌舞伎版ナウシカを、大枚はたいて観に行かなくてすんだとホッとする部分もあった。

週が明け、月曜の朝。
相棒が、職場から連絡してきた。
「クレジットカードのご優待枠が1枠だけ空いてるの見つけちゃった!どうする?」
「優待ってことは、当然高い席だよね?」
「うむ、一等席1万7千円が、千円引きらしい。」
「いつよ?」
「12月24日、平日。どうする?」
「休める?なら買っちゃえ!Goだ!」

・・・数か月前、我々はラグビーW杯のチケットに2万円とか3万円だとかをジャンジャン支払っており、完全に金銭感覚がおかしくなっていたのだ。
酔っ払いのアイルランド対ニュージーランドを観ておいて、歌舞伎は諦めるのか!
相棒が、震える手で申込ボタンをポチッとやると、座席画面はすべてグレーになった。
本当に、最後の2席だったようだ。

さてさて、これで、どんな失敗作だったとしても、いい舞台だったと無理やり思い込むしかなくなったではないか。
頼むぞ、菊之助。

するとなんと、公演3日目の昼の部で、主役の菊之助が本番中に骨折、夜の部は急遽休演、払い戻しというニュースが入ってきた!

(つづく)


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